静かに増える命
囲いの中から、軽やかな鳴き声が聞こえてくる。
「……思ったより、早いな」
セキシャク鳥は、予想以上のペースで増えていた。
卵が孵り、小雛が育ち、また次の卵を抱く。
その循環が、すでに安定し始めている。
「ピヨピヨ!」
足元をちょろちょろと動き回る小雛たちは、もう弱々しさがない。
羽の色もはっきりし、動きも機敏だ。
(完全に“飼われている鳥”になり始めてるな)
エドワルドが少し現場を離れていた間に、囲いはさらに増設されていた。
柵は高くなり、区画も整理され、餌と水の配置も見直されている。
……俺が言わなくても、ちゃんと回してくれてる。
最初に孵った雛たちの性別も、すでに判明していた。
雄と雌は、おおよそ半々。
「ピヨピヨ!」
雌は群れに残し、雄は一羽ずつ、小さめの囲いへ。
「……お前たちは、肉用だな」
そう呟きながらも、声に迷いはない。
役割を分けなければ、全体が崩れる。
雄同士を一緒にすれば争う。
無駄な怪我も増える。
だから最初から分ける。
合理的で、感情を挟まない判断だ。
卵は……まだ取らない。
エドワルドは囲いを一巡し、頷いた。
「今は、親を増やす時期だ」
卵を取れば食料にはなる。
だが、今ここで数を減らす必要はない。
増やす。
回す。
安定させる。
その先に、初めて“使える資源”になる。
「ピヨピヨ!」
鳴き声は変わらず賑やかで、しかし以前よりも落ち着いている。
恐怖も、警戒も少ない。
……ちゃんと、居場所になってる
エドワルドは、囲いから一歩下がった。
派手な成果はない。
数字にすれば、まだ微々たるものだ。
だが――
命が、増えている。
人の手の中で、穏やかに。
それだけで、この領地は少しずつ、強くなっていた。




