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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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寝かせない酒

父から小麦酒の話が出てきた時、正直少し意外だった。

報告書には確かに書いた。だが、そこまで目を通しているとは思っていなかった。


……どうなったか、聞きに行くか。


考えているだけでは分からない。

結果は現場にある。


エドワルドは、その足で発酵場へ向かった。


「こんにちは!」


声をかけると、奥から慌ただしい足音が返ってくる。


「おおっ、坊ちゃん!」


顔を出した職人が、すぐに察したように言った。


「小麦酒の件ですか?」


「そうそう。どうなった?」


職人は一瞬、言葉を選ぶように視線を泳がせた。


「完成は……しておりますが……」


「が?」


その一言に、職人は苦笑した。


「この酒、新しい方が美味いんです」


「……新しい?」


「はい。ワインや、じゃじゃ芋酒とは違いまして」


樽を軽く叩きながら続ける。


「寝かせるより、完成してすぐ飲んだ方が味が良い。時間が経つと、どうにも香りが落ちる」


エドワルドは腕を組んだ。


「となると……保存には向かない、か」


「そうなりますな……」


悪い報告ではない。

だが、期待していた方向とも違う。


「完成まで、どれくらい?」


「二週間ほどです。発酵を始めてから、そこまで長くはかかりません」


二週間……


頭の中で、用途を素早く組み立てる。


長期保存は不可。

王都への大量出荷も難しい。

だが――


「領内消費向け、って感じだな」


「ええ。宴会や、作業終わりの一杯には向いてます」


職人は少し胸を張った。


「新しい酒が完成したのは、間違いありませんから!」


その言葉に、エドワルドは小さく笑った。


「……成功か、失敗か」


自分に問いかけるように呟く。


保存できないのは弱点。

だが、完成が早いのは強みだ。


「作りすぎなければ、問題はないな」


「はい。量を調整すれば」


エドワルドは頷いた。


「よし。これは“領内用”でいこう。無理に広げる必要はない」


酒にも、役割がある。

全てが備蓄向きである必要はない。


発酵場を出る頃には、気持ちはすでに切り替わっていた。


小麦酒は、柱にはならない。

だが、無駄でもない。


また一つ、この領地に「選択肢」が増えただけだ。


それで十分だった。

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