一人ではないという選択肢
……まだ、一人で考えすぎてるか
エドワルドは、歩きながら小さく息を吐いた。
今は、もう自分だけじゃない。
畑も、加工場も、流通も――父が見ている。
自分が全部抱え込む必要は、ない。
そうだよな。ふと、肩の力が抜ける。
せっかく外まで出たのだ。
このまま戻るのも、何だかもったいない。
商人の所にも、寄っていくか。
こんな余裕が生まれたのも、あの二人が来てくれたおかげだ。
時間は、使い方次第で価値が変わる。
――無駄には、したくない。
商人の倉の前で声を掛けると、すぐに気づかれた。
「おっ? 坊ちゃん、どうしましたか?」
「いや、忙しいところ申し訳ない」
手を軽く振る。
「特に用ってほどのことじゃないんだ。顔出し、って感じかな」
「そうっすか!」
商人は笑ってから、何かを思い出したように手を叩いた。
「あー、そうだ。ちょうど良かった」
「?」
「不断草って野菜の種を手に入れたんで、渡そうと思ってたんですよ」
「不断草?」
聞き慣れない名前に、エドワルドは首を傾げる。
「はい。種を撒いて二、三ヶ月で葉が収穫できます。暑さにも寒さにも強い。葉物野菜ってやつですね」
……二、三ヶ月。
「ほぅ」
思わず、声が出た。
「種を蒔く時期をずらせば、一年中栽培できるってことか」
「その通りです」
商人は、誇らしげに頷く。
「どうぞ。差し上げますよ」
「……ありがとう」
素直に受け取りながら、エドワルドは種袋を見つめた。
葉物は、安定供給が難しい。それが出来るなら……
だが、すぐに結論を出すことはしない。
まずは、育てて、見て、確かめる。
「栽培してみるよ」
「はい! 感想も聞かせてください」
倉を後にしながら、エドワルドは思った。
大きな手を打つことだけが、前進じゃない。
こうした小さな選択が、後で効いてくる。
そして――俺は、もう一人じゃない。
父がいる。
手伝ってくれる人がいる。
話を持ってきてくれる商人もいる。
考える役目は、続ける。
だが、背負う重さは、分けてもいい。
エドワルドは、種袋を懐に入れ、屋敷への道を歩き出した。
次に育つものが、何をもたらすか。
それを確かめるのも、また楽しみだった。




