方向は別でも同じ出口
小麦酒……
エドワルドは歩きながら、考えを巡らせていた。もし上手くいけば、多少は消費されるだろう。だが――それだけで、吸収しきれるか?
不安は、正直拭えない。だったら……
乾燥パスタの加工場を増築して、人を入れて。
確実に形になる方へ寄せた方が、安心なのではないか。
……確認しに行くか。
自然と足は、加工場の方へ向かっていた。
――そこで、立ち止まる。
「……ん?」
景色が、違う。建物が、広い。壁が新しい。
屋根の形も、記憶より伸びている。
……増築、されてるよな?
中を覗こうとしたところで、声を掛けられた。
「坊ちゃん? どうしました?」
振り向くと、乾燥パスタを取り仕切っている職人だった。
「ここの加工場……広くなってない?」
「あー、そうですよ」
職人は、当然のように頷く。
「領主様が、加工に力を入れるって。聞いておられないんですか?」
……父が?
「まあ……そうだね」
曖昧に返すと、職人は続けた。
「それだけじゃないですよ。どうやら、乾燥パスタを王都へ納品する話も決まったらしくて」
「王都へ?」
「ええ。とは言っても、まだ人手がそこまで回ってませんから。量は限定的ですが」
……そういうことか。胸の奥で、点と点が繋がった。
父が売り込んだ?
いや――商人か?
どちらにせよ、話は自分の知らないところで、もう動いている。
……いや、違うな。エドワルドは、静かに理解した。
自分が考えていた「不安」は、すでに領主側でも共有されていたのだ。
だからこその、増築。
だからこその、加工強化。
だからこその、王都納品。
俺が見ているのは、畑と加工場。父は……流通と出口を見ている。
同じ数字を見て、別の場所から、同じ結論に辿り着いている。
「……そっか」
思わず、息が抜けた。心配しすぎてた、か
だが同時に、背筋が少し伸びる。
これはもう、試行錯誤の段階ではない。
領地全体が、次の段階へ進み始めている。
小麦酒が成功すれば、さらに幅が広がる。
失敗しても、受け止める器はある。
エドワルドは、増築された加工場を見上げながら思った。
――一人で抱え込む時代は、もう終わったのかもしれない。
だが、考えることをやめるつもりはない。
次に何が起きてもいいように。
次の「出口」を、探し続けるために。




