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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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他の用途へ

乾燥パスタという受け皿は、ひとまず出来た。

備蓄としても、加工品としても申し分ない。


だが――それだけじゃ、足りない。

エドワルドは歩きながら考えていた。


豊作が続けば、乾燥パスタだけでは吸収しきれない量になる。

加工できる人手にも限界があるし、保存倉にも容量がある。

領地で、金をかけずに……何か手はないか。

頭に浮かんだのは、あの酒だった。


じゃじゃ芋で出来たんだ。なら……


小麦。


「……小麦でも、酒は出来ないか?」


思いついた瞬間、足取りが自然と早くなる。

向かったのは、ワイン用の発酵場だ。


「……ん?」


建物が、記憶より大きい。壁際には新しい木材。明らかに、増築されている。


「……増えてる?」


近づくにつれ、甘く、そしてどこか荒々しい発酵の匂いが鼻を突く。


「おーい? 誰かいる?」


扉を開けた瞬間、思わず言葉を失った。


「……何だ、これ」


樽。

樽。

樽。


視界いっぱいに並ぶ、木樽の列。


こんな量……


「あー! エドワルド坊ちゃま!」


奥から顔を出したのは、見覚えのあるワイン農家だった。


「この樽の量は……?」


問いかけると、農家は少し照れたように頭を掻いた。


「えー……あれから大増産になりまして」


「大増産?」


「はい。今は寝かす段階に入ってまして。なので、蔵も兼ねて増築したんです」


……なるほど


ようやく、状況が飲み込めた。

酒が、かなり売れてるな。

じゃじゃ芋の報告が来なかった理由も、理解できる。まさか、ここまでとは……


一瞬、呆然とする。

だが、すぐに頭を切り替えた。


……まあいい。


現金収入が増えるのは、領地にとって確実にプラスだ。


「それより」


エドワルドは、視線を樽から農家へ戻した。


「ちょっと、聞いてもいい?」


「はい?」


「じゃじゃ芋から酒が出来たように……小麦からも、出来ると思う?」


農家は顎に手を当て、少し考え込む。


「んー……やったことはありませんなぁ」


「そうだよね」


想定通りだ。


「じゃあさ。俺の指示で、試作品を作ることは出来る?」


一瞬の間。

次の瞬間、農家は力強く笑った。


「坊ちゃまのお陰で、じゃじゃ芋酒が出来たんですよ!」


胸を張って続ける。


「どうなるかは分かりませんが……試してみます!」


その言葉に、エドワルドは思わず笑った。


「ありがとう。出来たら、声かけて」


「承知しました!」


発酵場を後にしながら、エドワルドは確信していた。小麦を「食べる」だけの作物にしない。加工し、形を変え、逃げ道を作る。


未来がズレたのなら、そのズレごと、利用すればいい。エドワルドは、静かに次の一手を思い描いていた。

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