収穫の集計
小麦と硬豆、どちらの収穫も無事に終わった。
思っていたより、日数は掛からなかった。
畑を見回しながら、エドワルドは小さく息を吐く。
「……早かったな」
理由は、はっきりしている。
農具の更新が、少しずつだが確実に進んでいた。
鎌の刃の精度、柄の長さ、持ち手の工夫。
一つ一つは小さな違いでも、積み重なると作業性は大きく変わる。
結果、刈り取りが早く終わった。
それだけ農家たちにも余裕が生まれる。
収穫が長引けば、他の仕事は止まる。
逆に、早く終われば、補修や次の準備に時間を回せる。
「……いい流れだな」
さて、問題は中身だ。
小麦の集計は、これから父の側で行われる。
領地全体の数字になるため、時間がかかる。
だが、硬豆は違う。
こちらは、エドワルドの管轄だ。
袋を開き、量を確認する。
「……約十キロ、か」
数字だけ見れば、悪くはない。
だが、経緯を思い返せば、話は変わる。
種を十キロ撒いて、収穫が十キロ……
これは、失敗だ。明確に。
半分が発芽せず、半分が育った結果がこれだ。本来であれば、少なくとも倍。
うまくいけば、さらに上を狙える作物だ。
「……痛いな」
原因は、分かっている。直蒔きだ。
硬豆は強いが、それでも最初の段階は弱い。
発芽前後でやられれば、それまでだ。
次は、苗床だな。
浅手の囲い箱で苗まで育てる。
ある程度の大きさになってから畑に移す。
手間は増える。だが、その分、確実に生き残る。
「ここで、差が出る」
収穫量は、偶然ではない。工程の積み重ねだ。失敗は、失敗として受け取る。だが、無駄ではない。
次は、同じ事はしない。
そう決めて、エドワルドは袋を閉じた。
この秋は、まだ終わっていない。
だが、次の春に向けた準備は、もう始まっている。




