並んで立つ背中
募集をかけて、まさかと思っていたが――
応募は二人、来た。
(上々だ)
エドワルドは、内心でそう頷いた。
一人来れば御の字、と思っていたところに二人。
これだけで、時間の使い方は大きく変わる。
「これで……だいぶ楽になるな」
独り言のように呟きながら、今日もいつも通りの作業に向かう。
◇
最初から、特別扱いはしなかった。
「じゃあ、まずは俺のやってることを見てください」
そう言って、エドワルドは畑へ向かう。
硬豆の様子を確認し、枯れ具合を見て収穫の判断。
肥料の状態を確かめ、足りない場所に少し足す。
水路を見て、流れが弱くなっている所を見つけて土を除く。
次は家畜だ。
セキシャク鳥の囲いを見回し、巣の中を確認。
小雛の様子、親鳥の動き、餌の減り具合。
豚の様子も同じだ。
落ち着いているか、食いはどうか、怪我はないか。
ただ、それだけのこと。
――いつも通り。
◇
だが。
背後からの視線は、はっきりと感じていた。
振り返らなくても分かる。
二人とも、畑の端に立ったまま、じっと見ている。
「……」
驚いているのが、空気で伝わってくる。
作業の合間、思い切ったように一人が口を開いた。
「……あの?これ全部……エドワルド様が?」
「はい」
即答だった。
「いつも、こんな感じです」
二人は顔を見合わせた。
「畑だけじゃなくて?鳥も、豚も、水路も……」
「貴族の……子供が……?」
言葉が途中で止まる。
戸惑い。
困惑。
そして、理解が追いついていない顔。
(そりゃそうだよな)
エドワルドは内心で苦笑した。
普通なら、ありえない。
見回るだけならまだしも、手を動かし、汚れ、考え、試す。
それを――
「当たり前」みたいな顔でやっている。
◇
「最初は、見てるだけでいいです」
エドワルドは、手を止めずに言った。
「そのうち、同じことをやってもらいます。出来ない所は、出来ないって言ってください」
二人は、少し遅れて頷いた。
「……正直。こんなに色々やってるとは思ってませんでした」
「俺も、最初は一人で回るつもりじゃなかったんです」
ぽつりと、本音が漏れる。
「でも、やってみたら止まらなくなって。気づいたら、全部やってました」
二人は、少しだけ笑った。
◇
日が傾く頃。
作業を終え、畑の端で一息つく。
エドワルドは、二人を見て言った。
「明日からは、少しずつ分けます。同じことを、同じ目線で」
「はい」
返事は、揃っていた。
(……大丈夫そうだな)
すぐに完璧とはいかない。
失敗もするだろう。
それでも――
一人で背負うより、ずっといい。
エドワルドは、畑に並ぶ三つの影を見下ろした。
並んで立つ背中。
それは、少しだけ未来が軽くなった証だった。




