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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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数値に出ないもの

執務室の窓から、領内を見下ろす。


畑は規則正しく区切られ、道は以前よりも踏み固められている。

水路沿いでは、数人の領民が補修作業をしていた。


領主は、書類から視線を上げ、その光景をしばらく眺めていた。


収穫量。売上。備蓄。


数字だけを見れば、確かに改善はしている。

だが――


「……静かだな」


側近が首を傾げる。


「は?」


「不満が、だ」


以前なら、これだけ手を入れれば必ず出ていた。

負担が増えた、なぜ今なのか、自分たちは聞いていない――

そういった声が、どこかで必ず上がる。


だが今は、ない。


側近は少し考え、慎重に言葉を選んだ。


「確かに……苦情は減っております。むしろ、自分から手伝いを申し出る者が増えていると」


「理由は?」


「……はっきりとは。ただ、“仕事がある”“先が見える”と」


領主は、椅子に深く腰を下ろした。


先が見える。


それは、数字には表れない。

だが、領地運営において、これ以上ないほど重要な感覚だ。


「エドワルドの動きは、どうだ」


「相変わらずです。畑、家畜、書庫。派手なことはしておりません」


「だが、人は動いている」


側近は黙った。


ハインリヒは思い出す。

息子が初めて持ち込んできた報告書。

収穫量でも、売上でもない、“循環”という言葉。


当初は、正直に言えば半信半疑だった。

子供の発想だと思った部分もある。


だが――


「雇用が増え、技術が残り、知識が共有されている」


誰か一人が抜けても、止まらない。

特別な才能に依存しない。


それは、領地として強い。


「……数値は結果に過ぎんのだな」


側近が小さく頷く。


「エドワルド様は、結果よりも“形”を作っておられるように見えます」


「形、か」


領主は苦笑した。


「私は、結果ばかりを見てきた」


悪いことではない。

だが、それだけでは足りなかったのだろう。


「領主として、私は支える側に回るべきだな」


「干渉は?」


「しない。邪魔をしない。それが一番だ」


しばらく沈黙が流れた後、側近がぽつりと言った。


「……恐ろしいですね」


「何がだ」


「エドワルド様が、これを“当たり前”としてやっていることが」


ハインリヒは、静かに笑った。


「だからこそ、領地は変わる」


恐怖ではない。

期待でもない。


それは、確信だった。


窓の外では、作業を終えた領民たちが、言葉を交わしながら家路についている。

その足取りは、以前よりも軽い。


数値に出ない変化。

だが、確実にそこにあるもの。


領主はそれを初めて、はっきりと認識していた。


この領地は――静かに、強くなっている。

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