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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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生命力

水を張ったタライの縁に、細い影が見えた。


「……出てるな」


エドワルドは身を屈め、目を凝らす。

森から切ってきたベリーの枝。その切り口付近から、白く細い根が伸び始めていた。


一本だけではない。

二本、三本――いや、ほとんど全部だ。


「強いな……」


葉は萎れるどころか、色が濃い。

水に挿しているだけだというのに、生命力を隠そうともしない。


(森であれだけ普通に生えているわけだ)


人の手がなくても育つ。

だが、人の手を拒むわけでもない。


「……よし。そろそろ土に行ってもらおう」


エドワルドは決めた。



使っていない土地は、領内にいくらでもある。

畑にするには微妙で、放置されていた一角。

日当たりは悪くないし、水はけも極端ではない。


(ここでいいか)


間隔を空け、一本ずつ丁寧に植えていく。

深くしすぎず、根を折らないように。


作業を続けていると、背後から気配が増えてきた。


「……また坊ちゃん、何かやってるぞ」

「今度は木でも植えてるのか?」

「いや、あれ……森のベリーじゃないか?」


ひそひそ声。

視線。

好奇と困惑が入り混じった空気。


(まあ、そうなるよな)


森に行けば勝手に採れるものを、わざわざ畑に植える。

農家からすれば、意味が分からない行動だろう。


実際、庭先にベリーを植えている家はある。

だがそれは、子供が摘むためか、景色の一部としてだ。世話もしないし、増やそうともしていない。


エドワルドは、気にせず鍬を動かす。


(俺も、正直よく分かってるわけじゃない)


試しだ。

上手くいけば、それでいい。

駄目なら、やめればいい。


前の人生では、「やってみる前に時間切れ」そればかりだった。



すべて植え終え、手を止める。


並んだ小さな苗は、まだ頼りない。

だが、根は確かに土に触れている。


(もし、これが上手くいったら……)


頭の中で、次が浮かぶ。


傷に塗ると効いた草。

煎じると痛みが和らいだ葉。

腹痛を抑えた根。


名前は分からない。

書庫にも載っていないかもしれない。


だが、効いたという事実だけは覚えている。


(全部、森任せにしてるのは勿体ないな)


安定して手に入る場所があれば、

怪我人も、病人も、少しは楽になる。


「……焦らない」


エドワルドは、小さく息を吐いた。


今は、ベリーだけでいい。

まずは一本、根付くかどうか。


農家の視線は、まだ背中に残っている。

だが、気にならなかった。


どうせ、最初はいつも同じだ。


変なことをしていると言われ。

意味がないと笑われ。

そして、結果が出てから静かになる。


(それでいい)


エドワルドは、最後に土を軽く押さえた。


森の中で当たり前にあったものを人の手の届く場所へ。


それもまた――

飢えない未来へ続く、小さな一歩だった。

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