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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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縄張りという壁

「……来たか」


屋敷の裏手、簡易の飼育場に馬車が止まるのを見て、エドワルドは小さく息を吐いた。

木箱の中から聞こえてくる、甲高い鳴き声。


――セキシャク鳥だ。


「相変わらず、顔が……」


木箱を運んできた商人の顔は、今回も見事に傷だらけだった。

引きつった笑みを浮かべるその様子に、エドワルドは内心で察する。


(……やっぱり、そうなるよな)


「問題なく、連れてきましたよ。今回は言われた通り、雄一、雌三で」


「ありがとうございます」


商人はほっとしたように頷き、早々に引き上げていった。



増築したばかりの柵へ、新しいセキシャク鳥を入れる。


――瞬間。


「ギャアッ!」


低く、荒々しい鳴き声が響いた。


既に飼っている雄と、新しく来た雄。

互いに首を伸ばし、羽を逆立て、目を剥く。


(……やっぱりか)


柵越しとはいえ、威嚇の圧が凄まじい。

今にも飛びかかりそうな勢いだ。


「このままじゃ……」


エドワルドは用意していた板を持ち出し、二つの区画の間に差し込んだ。


視界を遮る。


すると――


「……?」


先ほどまでの剣呑な気配が、嘘のように静まった。

鳴き声も、徐々に落ち着いていく。


「やっぱり、“見える”のが駄目なんだな」


縄張り意識。

存在を感じるだけなら耐えられるが、姿が見えると我慢ならない。


(対策は、出来そうだ)


板を固定しながら、エドワルドは一つ頷いた。


「一先ず、これでいい」



既存のセキシャク鳥の様子も確認する。


小屋の奥では、雛がちょこちょこと動き回っていた。


「……五羽か」


最初の抱卵から孵った小雛は、五羽。

失敗を覚悟していただけに、かなりの好成績だ。


羽毛はまだ柔らかいが、足取りはしっかりしている。

餌もよく食べ、水も飲む。


「順調だな」


この成長速度なら、増えるのは時間の問題だろう。


(問題は……)


小雛の中に、雄がいるかどうか。


今のところ、小雛同士で威嚇し合う様子はない。

小競り合いすら起きていない。


(まあ、今はいい)


性別が分かるのは、もう少し先だ。

その時に、改めて考えればいい。



エドワルドは、柵全体を見渡した。


板で仕切られた二つの区画。

静まった雄。

元気に動き回る雛。


「……やっぱり、やってみないと分からないな」


書庫の記録だけでは見えなかったこと。

商人の傷だらけの顔が、ようやく納得に変わった。


だが――


(対策は、出来る)


問題があるなら、潰す。

未知なら、観察する。


それだけだ。


エドワルドは、静かに餌皿を整えながら思った。


この鳥は、確かに扱いづらい。

だが、それ以上に――


「……伸びしろがある」


小さな雛が、ぴい、と鳴いた。


それは、この領地の未来が、また一歩前に進んだ音のように聞こえた。

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