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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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森が教えてくれること

「さて……」


エドワルドは畑の畦道を歩きながら、周囲を見渡した。

作物の様子を確かめる――いつもの日課だ。


だが今日は、それだけではない。


(情報だ。一番持っていそうなのは……)


真っ先に思い浮かんだのは、狩人だった。

森に入り、獣を追い、季節の移ろいを肌で知る者たち。


(ここで考えていても仕方がないな)


エドワルドは、畑仕事をしている農家に声をかけながら、少しずつ話題を広げていった。


「森で採れる物、ですか?」


「ああ、色々あるが……安定して採れるかと言われるとな」


返ってくる答えは、どれも似ている。


量は読めない。

年によって、場所によって、出来はまちまち。


だが――


「その代わり、季節を感じられる物は多いですよ」


春の若芽。

夏の実。

秋の木の実と茸。


(なるほどな……)


主食には向かない。

だが、補助として、彩りとして、十分に価値がある。


「……ベリー、ですか?」


何気なく聞いたその言葉に、農家の一人が少し驚いた顔をした。


「うちは、庭に植えてますよ」


「え?」


思わず、足が止まる。


「見せてもらえますか?」



案内された庭先には、低い木が数本、並んでいた。

赤く小さな実は今は無いが、葉は青々としている。


「……これか」


エドワルドは、しゃがみ込み、葉の形をじっと見る。


(覚えておこう)


葉の縁。

付き方。

茎の色。


森で見つけるには、まず“知る”ことだ。


「森にも、ありますよ。時期になれば」


「……そうですか」


エドワルドがそう言うと、農家の表情が一変した。


「ま、まさか……一人で行くつもりじゃ?」


「え? ああ、いえ……」


その瞬間、全力で止められた。


「だめです! 絶対にだめです!」


「貴族の坊ちゃんを森に行かせた、なんて事になったら……!」


(……そりゃ、そうだよな)


今さらながら、自分の立場を思い出す。


困り顔のエドワルドを見て、農家は少し考え――


「狩人を、紹介します」


「一緒に行ってくれる人を」



翌日。


紹介された狩人は、年季の入った男だった。

無駄な言葉は少ないが、目は鋭い。


「坊ちゃん、森は初めてか?」


「……はい」


「なら、今日は“見る”だけだな」


その言葉通り、森は学びの宝庫だった。


傷に塗ると効く草。

煎じれば鎮痛剤になる葉。

腹痛を抑える根。


「茸と木の実は、覚え違えると死ぬ」


「これは兎の道だ」


「鹿と猪は、気配が違う」


次々と示される知識に、エドワルドは息を呑んだ。


(……俺は、何も知らなかった)


だが、否定はしない。

知らなかったなら、知ればいい。


そして――


「これだ」


狩人が指差した低木。


「ベリーだ。さっきの庭のと、同じだろ?」


「……本当だ」


森の中に、確かに“あった”。


「増やし方も、教えとくか」


枝を選び、切り方を示す。


「これを水に挿しておけば、根が出る」


「出たら、植えろ」


エドワルドは、深く頷いた。


「ありがとうございます!出来れば籠いっぱいにお願い出来ますか?」


そう言って、籠いっぱいに枝を切ってもらう。



屋敷に戻ると、すぐにタライを用意した。

水を張り、切り口を浸す。


「……まずは、ここからだな」


机上の知識。

森の現実。


その両方が、ようやく繋がり始めた気がした。


(まだ、ごく一部だ)


だが、それでいい。


エドワルドは、水に揺れる枝を見つめながら、静かに思った。


――森は、黙っているが。

――何も、隠してはいない。


聞きに行く者にだけ、教えてくれるのだ。

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