初の商人と商談
商人と会うのは、あの時以来だ。
セキシャク鳥を引き取った時。
父――領主としての立場で、話の中心に立っていたあの場。
(今回は、俺が前に出る)
もっとも、話自体は既に父が通している。
「息子が直接話す」その一点だけを伝え、了承も得ているはずだ。
(変に警戒はされない、か)
それでも商人だ。
油断すれば、主導権を握られる。
エドワルドは、軽く背筋を伸ばした。
目的は三つ。
セキシャク鳥の追加購入。
豚の導入。
そして――情報。
物流。
各地の特産品。
余っている物、困っている物。
商人は、物と金だけでなく、話を運んでくる存在だ。
その中に、次の“種”が混じっている可能性は高い。
(話さない理由が、ない)
商人の詰所に入ると、すぐに気付かれた。
「おや……これはこれは。エドワルド様でしたな」
覚えられている。
それだけで、前回の取引は成功だった証拠だ。
「本日は、お父上から伺っております。直接お話を、との事で」
「はい。今回は私が」
年齢を見て、一瞬だけ商人の目が細くなる。
だが、すぐに笑みに戻った。
(試されるな)
「では、用件を伺いましょう」
「まずは、セキシャク鳥です」
エドワルドは、はっきり言った。
「前回と、同じ羽数を条件も、同じで構いません」
商人は即座に頷いた。
「問題ありません。供給も安定しております」
「ただ……」
一瞬、言葉を切る。
「雄の割合を調整する事も出来ますが?」
(来た)
「ええ。そこも含めて、意図的にお願いしたい。性質を見たいので」
「……なるほど」
商人は、面白そうに笑った。
「管理者の視点ですな。承知しました」
話は、次へ移る。
「それと、豚を」
今度は、商人の表情が少し変わった。
「頭数、用途、繁殖前提か否か。どこまでをお考えで?」
「繁殖前提です。頭数は……相談したい」
「ふむ」
商人は、指を組んだ。
「この地なら、無理はなさらぬ方が良い。最初は小さく、確実に」
(同意見だ)
話は自然と、流通の話へ移っていく。
「この辺りでは、保存に困る作物が多くてですな。加工出来る土地は、強いですよ」
「他には?」
「芋、豆、果実……」
「酒にするか、干すか、潰すか」
「それだけで価値が変わる。果樹も試されては?」
エドワルドは、黙って聞いた。
(やっぱり、ヒントは転がってる)
全てが今すぐ使えるわけじゃない。
だが、覚えておけば、いつか繋がる。
商談が終わり、条件がまとまる。
「では、手配を進めましょう。到着は――」
「お願いします」
初めての商談。
だが、手応えは悪くない。
(……次も、いけるな)
エドワルドは、そう確信していた。




