表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/152

じゃじゃ芋、収穫

乾燥パスタの話題が、ようやく落ち着き始めた頃。


畑に立つエドワルドは、足元ではなく――葉を見ていた。


「……黄色くなってきてるな」


兄が、畝を挟んでそう言う。


「はい」


エドワルドは、頷く。


「枯れ始めています。収穫時期だと思われます」


兄は、しゃがみ込み、一本の株を指で弾いた。


「こういうのは、見た目で分かるもんなんだな」


「ええ。地上が終わる頃、下が出来上がっています」


「なるほど」


兄は、納得したように立ち上がる。


「じゃあ」


剣ではなく、鍬を手に取った。


「やるか」



収穫は、思ったよりも静かだった。


土を崩す。

株を引く。

転がり出る、丸い塊。


「……おお」


最初に声を上げたのは、兄だった。


「出てくるな」


「はい」


エドワルドは、抑えた声で答える。


「複数ついています」


一株。

また一株。


土の中から、次々に現れる。


「これは……」


兄は、思わず笑った。


「楽しいな」


「そうですね」


純粋な労働。

成果が、目に見える作業。


剣の稽古とは、違う満足感だった。



途中から、農家も加わった。


「おお、出来とるな」


「悪くないぞ」


声は控えめだが、表情は明るい。


「数、測りますか?」


エドワルドの問いに、兄が頷く。


「やろう」



計量は、倉の前で行われた。


一袋、また一袋。


数字が、少しずつ積み上がっていく。


「……これで、最後です」


農家がそう言い、秤から袋を下ろす。


兄が、帳面を見る。


「合計――」


一瞬、確認してから。


「八十三キロだ」


「……八十三」


誰かが、呟く。


決して、膨大ではない。

だが、小さくもない。


「初年度としては、上出来だな」


兄は、素直にそう言った。


「はい」


エドワルドは、胸の奥で、静かに息を吐く。


失敗しなかった。

それが、何よりだ。


「これ、どう使う?」


兄が、尋ねる。


「すぐ食べる分」

「保存する分」

「種に回す分」


エドワルドは、即答した。


「三つに分けます」


「迷いがないな」


「決めていましたので」


兄は、少しだけ目を細めた。


「……やっぱり、お前は後ろの人間だ」


その声に、嫌味はなかった。



夕方。


収穫を終えた畑は、少し寂しく見える。


だが、地面の下には、

確かに“成果”があった。


乾燥パスタ。

じゃじゃ芋、八十三キロ。


どちらも、派手ではない。


だが、

「飢えを先送りにできる量」だ。


エドワルドは、空になった畝を見ながら、思う。


急がない。

浮かれない。


けれど――


一つずつ、

確実に。


この領地は、

生き延びる準備を整え始めている。


それだけで、

今日は、十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ