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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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剣の価値、血の値段

「レオン団長。少し宜しいですか?」


呼び止めると、屈強な男――灰鴉傭兵団の団長レオンは、即座にこちらを向いた。


「何でしょうか?」


警戒はしているが、敵意は無い。

やはり軍人の立ち振る舞いだ。


「率直に聞きます。貴方方を――保護したい」


一瞬、レオンの眉が動いた。


「……保護、でありますか?」


「はい。正確に言えば、証人としての保護です」


俺は誤魔化さず続ける。


「隣領での命令内容。それを拒否した事実。

それらは、今後必ず問題になります」


レオンは黙って聞いている。


「俺の立場で、今すぐ約束出来るのは衣食住の提供です。それと……正直に言いますが、金額は分かりません」


「……」


「ですが」


言葉を切り、真正面から見据えた。


「貴方方を、この地で雇いたいと考えています」


レオンは腕を組み、静かに息を吐いた。


「我々は傭兵です。

戦が無ければ、価値は無い」


その言葉は淡々としていたが、重い。


「いいえ」


俺は首を振った。


「今は、この様な状況です。

剣を振るうだけが役目ではありません」


周囲に視線を向ける。


「難民、村、治安、輸送、抑止。

人手は、多い方が良い」


レオンは少し驚いた様に俺を見た。


「……随分と現実的なお考えだ」


「現実を見なければ、生き残れません」


それは自分に言い聞かせる言葉でもあった。


「ただし」


俺は一歩引いた。


「今すぐ答えは求めません。

団として、皆で話し合って下さい」


「……」


しばし沈黙。


やがてレオンは、深く一礼した。


「承知しました。我々も、軽々しく決められる立場ではありません」


「はい」


「ただ一つ」


レオンは顔を上げ、真っ直ぐ言った。


「我々は、金だけで動く傭兵ではありません。

筋を通せぬ主には、従わない」


「それで結構です」


俺は即答した。


「俺も、嘘を吐く気はありません」


レオンは、ほんの僅かに口角を上げた。


「……面白いお方だ。

“保護”と言いながら、こちらを試しておられる」


「お互い様です」


そう言うと、レオンは踵を返した。


「では、団に持ち帰ります」


その背中を見送りながら、俺は思う。


剣の価値。血の値段。


そして――

この男を、敵に回してはいけないという直感だけは、前世と同じく確かだった。


さて。次は、傭兵団の返事次第だ。


数時間ほど経った頃だった。


建設予定地の確認を終え、仮設の詰所に戻った俺の前に、見覚えのある影が立った。


「……エドワルド様」


顔を上げると、そこに居たのはレオン団長だった。

昼間よりも表情は引き締まり、迷いは無い。


「話は、まとまりましたか?」


「はい」


レオンは一歩前に出て、深く頭を下げた。


「先程の話――是非、お受け致します」


胸の奥で、静かに息を吐く。


「ありがとうございます」


俺は形式ばらずに答えた。


「既に南側で住居の建築を始めています。

完成までは簡素な造りになりますが、そこを拠点として使って下さい」


「承知しました」


「それと」


言葉を継ぐ。


「この領内で、正規に依頼が入った場合は、それを受けて構いません。

ただし――まずは体力の回復を最優先で」


レオンは一瞬、目を伏せた。


「……お気遣い、誠に有難う御座います」


その声音に、傭兵としてではなく、人として救われた色が混じったのを、俺は見逃さなかった。


「こちらこそ」


俺は小さく頷く。


「今は戦ではありません。

ですが――備える時間は、必ず意味を持ちます」


「はい」


レオンは真っ直ぐに答えた。


「この灰鴉傭兵団、当面はこの地に身を置き、

貴方の判断に従いましょう」


その言葉を聞いた瞬間、俺は理解した。


これは単なる雇用ではない。

未来への布石だ。


前世で俺の首を刎ねた男は、

今世では――俺の選択で、剣を収めた。


ズレは確実に生じている。

だが、それは悪いズレではない。

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