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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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頭を下げない援助

さらに数日が経った。

商人達は、変わらず保護民を連れて来る。


数は確実に増えている。

だが――まだだ。


まだ“波”にはなっていない。

こちらで調整が効いている。

受け入れ、分散、休養、移送。

全てが、かろうじて噛み合っている。


だがそれは、時間を買っているに過ぎない。


そんな中だった。


「エドワルド様! 領主様より! 一度、お戻りになる様にと!」


「解りました」


嫌な予感は、当たるものだ。




「保護民の受け入れ、ご苦労だった」


父上はそう切り出した。


「隣領から、再度返事が来た」


「……どうでしたか?」


「“その様な事実は無い”。だが、“それでもどうしてもと言うなら、援助を受けても良い”……だそうだ」


一瞬、言葉を失った。


「……な!? 何ですか、それは!」


父上は苦く笑う。


「頭は下げたくない様だ。こちらが困っているとは認めない。だが、物は欲しい。

――要は、“くれるなら貰ってやる”という態度だ」


胸の奥が、冷える。


「……それでは、何も変わりません。

原因を否定したままでは、同じ事が繰り返される」


「解っておる」


父上は腕を組んだ。


「だがな、エドワルド。相手が嘘を吐いていようが、保身であろうが、援助が届けば救われる者はいる」


「……」


「問題は、“どう渡すか”だ」


沈黙が落ちる。


助ければ、嘘を延命させる。

拒めば、人が死ぬ。


どちらも、正しくはない。

だが、どちらも選ばねばならない。


「さて……如何したものか」


父上のその一言は、領主としてではなく、

同じ“選択を背負う者”としての問いだった。


俺は、静かに息を吸った。


これは、援助の話じゃない。

これは――

“誰の責任として、誰を救うか”の話だ。


そしてその答えは、もう一段、深い所にある気がしていた。


俺は一歩前に出た。


「それでしたら……直接“村”へ援助する、というのは如何でしょうか」


父上が、静かにこちらを見る。


「領主に物を渡して、そこから分配させるのではありません。

商人を使い、村へ直接、食料を届けるんです」


一瞬の沈黙。


そして父上は、小さく笑った。


「ふふ……実にやらしいやり方だな」


だが、その目は笑っていない。


「だが、それなら民は救われる」


父上はすぐに判断を下した。


「今使っている商人に行きは“じゃじゃ芋”を持たせろ。保存も利くし、腹も膨れる」


「帰りは……」


「希望者を連れて帰らせろ」


俺は息を呑む。


「食う物があれば、時間は稼げる。

体力が残っていれば、いずれこちらへ向かって来る者も出るだろう」


父上ははっきりと言った。


「受け入れは、お前に任せる」


――責任を渡された。


だが、不思議と重さは感じなかった。

覚悟は、もう出来ている。


「解りました」


「私は私で、返事を書いておく」


父上は筆を取る。


「“援助の申し出は、有難く受け取る。

ただし、混乱を避ける為、村単位で支援を行う”……とな」


相手の面子は保たれる。

だが、実権は渡さない。


嘘を吐いたままでも、民は救われる。

責任を認めなくても、命は繋がる。


それが、政治という名の戦場。


剣を抜かず、血も流さず、それでも確かに――勝ち負けのある戦だった。


そして俺は思う。


これは、まだ序章だ。

だが今、確実に一歩、先手を取った。

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