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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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逆を読む

「確かお前の話だと、豊作は二〜三年続くとの話だったな?」


父上の問いに、俺は一拍置いて頷いた。


「はい。過去の資料からすると、その様になります」


「そうなると、来年が最後になる確率が高い……となるが」


父上は独り言の様に呟き、視線を机上の地図へ落とした。


「……あくまでも予想となりますが」


「分かっておる」


父上は顔を上げ、こちらを見据える。


「お前は、来年は如何なると思っておる?」


……一瞬、言葉に詰まる。

だが、ここで曖昧な返答は求められていない。


「――あくまでも予想ですが」


そう前置きして、俺は口を開いた。


「恐らく来年も、我が領は大豊作になると思われます。それに加えて、この周辺の他領も同様に」


父上の眉が僅かに動く。


「続けよ」


「その際に……逆の発想を提案します」


「逆、だと?」


「はい」


俺は一度息を整え、言葉を選んだ。


「まず領内では、備蓄を最優先とします。領内市場を安定させる為、直接買取も含めて価格を支えます」


「ふむ……」


「さらに、他領の小麦も価格帯が下がった所で買い取ります」


父上が、ゆっくりと目を細めた。


「……更に買う、だと?」


「はい。こちらは全て、加工品に回します」


「…………」


一瞬の沈黙。だが、父上の表情が変わった。


「……なるほど。加工すれば、保存は更に伸びるか」


「はい。王都でも、加工パスタは安定して売れていると聞いております。小麦のままより、価格の振れも抑えられるかと」


父上は深く頷いた。


「なるほどな……」


地図と書類を見比べながら、父上は小さく息を吐く。


「豊作を売るのではなく、豊作を“溜める”か」


その言葉に、俺は何も返さなかった。

まだ、これは提案に過ぎない。


だが――父上の視線は、確かに次の一手を描き始めていた。


父上は椅子に深く腰掛け直し、腕を組んだ。


「確かに……エドワルドの話も理解出来る。あくまでも“もしも”の場合だがな」


その声には、既に否定の色は無かった。


「幸いにして、我が領には潤沢と言って良い程の資金がある。

急な買い付けにも耐えられるし、備蓄を増やしても問題は無い」


机の上の書類を指で叩きながら、父上は続ける。


「それに、加工場や倉庫といった領内の設備強化は、しておいて無駄にはならぬ。仮に予想が外れたとしても、領の基盤が強くなるだけだ」


一度、俺の方へ視線を向けた。


「豊作に備えるだけでなく、不作に備える……か。結果として、どちらにも対応出来る形になるな」


父上は小さく息を吐き、決断した様に頷く。


「よかろう。段階的に進めよう。まずは備蓄を優先し、並行して加工設備の増設案をまとめる」


その言葉を聞き、俺は静かに頭を下げた。


「承知しました」


こうして、来年を見据えた動きが、静かに始まった。

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