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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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113/152

迫る年、遠ざけたい日

早いもので、俺も十一歳を迎えた。

年を重ねる事自体は、本来なら祝うべき事なのだろう。


だが――素直に喜べない理由がある。


記憶では、十三の年。

我が領地、そして近隣領地にまで及ぶ大豊作。

それ自体は祝福される出来事だ。


だが、それが引き金になる。

調査、介入、そして余計な目。

一度動き出した流れは、簡単には止まらない。


今年は、まだ二年ある。

だが、この二年は決して短くない。


「おーい! 我が弟!!」


廊下の向こうから、聞き慣れた声が飛んで来た。


「お兄様!!」


元気よく駆け寄って来る弟は、相変わらずだ。

その様子を見ていると、少し肩の力が抜ける。


「何だ? 余り嬉しく無いのか?」


「そ、そんな事はありませんよ!」


即答だった。

だが、ほんの一瞬だけ、視線が泳いだのを俺は見逃さない。


「そうか? 最近、変な事ばかりしてるからさー」


「……あはは」


乾いた笑い。

誤魔化すような、照れたような。


それでもいい。

今はまだ、何も知らなくていい。


俺が考え、備える。

家族と領地を守る為に。


十一歳の誕生日は、

決意を新たにする日になっただけの事だ。


静かに、しかし確かに。

時は、次の年へと向かって動き出していた。


夕食の席は、いつもとは明らかに違っていた。


誕生日だから、という理由はある。

だがそれだけではないと、すぐに分かった。


肉料理が二品。

焼き加減も香りも申し分ない。

新しく取れた野菜が惜しげもなく使われ、彩りも豊かだ。

干しベリーを使った甘味まで並んでいる。


――こんな豪華な夕食、記憶にない。


家族の笑顔も、どこか柔らかい。

使用人達の動きにも、慌ただしさより余裕が感じられた。


それだけ、今の我が家、我が領地には余力があるという事だ。

金も、物も、そして心にも。


俺は静かに皿を見つめながら、胸の奥で思う。


この光景を、失いたくない。

この穏やかさを、守りたい。


「おめでとう」


父の一言に、軽く頭を下げる。

その声には、確かな重みと安堵があった。


――この幸せが、続きますように。


願うだけでは足りない事は分かっている。

だが今だけは、祈る事を許して欲しかった。


食卓を包む温かい空気を、噛み締めるように感じながら。

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