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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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動き出す判断

エドワルドからの書簡か。

領主は机に置かれたそれを手に取り、ゆっくりと目を通した。


各村々の倉庫改修、もしくは新設。

収穫から加工までの緩衝地帯の設置。

それによって生じる作物の滞留、品質の安定、流通の調整――。


「……ふむ」


理屈は、よく分かる。

今まで手を付けられなかったのは、単に金が無かったからだ。

作れた作物をどう保つか、どう運ぶか。

重要だと分かっていても、後回しにせざるを得なかった部分。


だが今は違う。余裕が、ある。


今の内に整えておく、という判断も決して悪くない。むしろ、好機だろう。


「よし」


領主は顔を上げ、近くに控えていた者に命じた。

各村へ馬を走らせ、倉庫の現状を確認させる。

規模、老朽化、使われ方。

まずは実態を知らねば始まらない。


指示を受けた者が慌ただしく部屋を出て行くのを見送り、領主は小さく息を吐いた。



――どうやら、父は動いたようだな。


その知らせを聞き、エドワルドは静かに思う。まだ始まったばかりだ。

結果が出るのは先の話だろう。


だが、もしこの一手が上手く噛み合えば。

村々の流れは変わる。

作物の扱いも、人の考え方も。


確かな変化の兆しが、今、ようやく動き始めていた。



報告は簡単に済まされた。

内容が、あまりにも単純だったからだ。


各村で使われている倉庫のほとんどが、要改修。それ以外の倉庫に至っては、使われているとは言い難い。壁は歪み、屋根は抜け、床も腐りかけている。倉庫としての役割を、すでに果たしていなかった。


「……そうか」


領主は短くそう言うと、迷うことなく判断を下した。

使われている倉庫は、直ちに改修。

朽ちていたものは撤去し、新築する。


理由を並べる必要も無かった。

今の状況で放置する意味が、どこにも無い。


指示はその日のうちに各所へ飛び、人と資材が動き出した。


長く後回しにされてきた部分が、ようやく、領地全体として形を整え始める。


静かだが、確かな変化だった。



ふぅ〜。

これで各村々で一時保管として機能すれば、かなり吸収出来るな。


それに加えて、ここ領都にも倉庫の建築を始めるらしい。言わば第二倉庫だ。

各村々から運ばれて来た物を、まずはここで受け止める。


さらに、乾燥パスタ加工場にも専用の倉庫を建てる計画が進んでいるらしい。

加工待ち、加工後、出荷前――

流れの途中で滞らせないための器だ。


村、領都、加工場。

段階的に吸収出来る倉庫が幾つもあれば、

同じ量でも扱える余裕は、まるで違ってくる。


問題は、今年の収穫量がどれほどになるか、だ。増えるのは間違いない。

だが、どの程度かは誰にも読めない。


それも当然だ。

余力が出た父は、さらに開墾を進めている。

耕す土地が増えれば、それだけで収穫量は単純に増える。


受け止める器を整え、作る量も増えていく。


さて……

今年は、どこまで膨らむことになるのやら。


農家の人からも話を聞いた。


今年の冬は短かった、と。

寒さも例年ほど厳しくはなく、比較的過ごしやすかったらしい。

作業に出られない日が少なく、家畜の消耗も抑えられたという。


それに加えて、害獣駆除が上手くいった。

畑を荒らされることも、貯蔵庫を狙われることも減り、そもそものロスがかなり少なかったそうだ。


つまり――

作った分が、そのまま残りやすかったということ。


となると、だ。

天候も味方している可能性が高い。

このまま行けば、今年は大豊作になるだろう。


そして、今年が良ければ……

その次の年は、隣領も動く。

作付けを増やし、真似をし、追いつこうとする。


そうなれば、さらにその先で、また状況は変わる。


一つの当たり年は、必ず次の年の「歪み」を連れて来る。


さて……備えは、間に合っているだろうか。

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