2回目の依頼
おはようございます。本日の朝食は、屋台で売っていたスープです。シチューの味なしバージョンといったところ。煮込んだだけか。せめて塩味つけろ。
冒険者ギルドに向かう。今日から本格的に動かないとね。
しかし、その意気込みもギルド内を覗いて減退した。依頼書を奪い合う冒険者達が、餌を求める池の鯉みたいで怖かった。あれに混ざったら、俺は潰れる。ちょっと後で来よう。
とりあえず、開いている店でも覗こうかな。
まず武器屋。値段はピンキリで非常に迷う。なんかやたら都合のいい謳い文句が、逆に不安を誘う。やっぱりギルドの購買で買おうかな。
防具屋。俺のサイズがないという事実。オーダーメイドとか無理です。
魔導具屋。昨日見たコンロがあった。安い小さいので銀貨3枚だった。思ったより買える値段だった。これは買いだな。…今日の成果にもよるけど。あと簡易結界とか、ルーペ、冷やす箱とかもあった。楽しい。
服屋。基本、平民は古着を買う。既製品はあるけど、結構する。まだ服には困ってないので、値段を見るだけ。
薬屋。初級回復薬は、大銅貨3枚。300円くらい。素人でも実は作れる。前世の栄養ドリンク的飲み物。俺も一日の終わりに、グビッとする。風邪の予防にもなるし、何なら虫歯の予防もできる。簡易創薬キットがあった。これも買いだ。
程よく時間を潰し、ギルドに戻る。人はだいぶ減っていた。今日は街の外に出ようと思う。慣れるまではと思ってたけど、旨い肉が食いたい。あと薬草と、スパイス的な何かを採取したい。
薬草採取の依頼はあった。常時依頼なので、わざわざ依頼書を取らなくても、薬草を提出すればオーケーのようだ。Fランクで森の外周部での採取依頼は2つあった。
「リドリス草、ミツの実」
リドリス草は腹痛に効く薬草だ。食用には向かない。ミツの実は、その名のごとく甘い。樹上になる小さな実なので採るのは大変だ。まぁ俺は採れますけど。
まだこの周囲の状況を知らない。元居たところなら、2つ受けても一日で採取しきれる自信がある。でもここにはあまり生えてないのかもしれないし、欲張るのも禁物だ。
締切の期日が長い方の、ミツの実の依頼書を取った。
「すいません。これお願いします」
「はい。確認しますね」
冒険者登録してくれたお姉さんだった。昨日のチンピラ居ないだろうな。
「10個で一組です。あるだけ買い取りますので、頑張ってきてくださいね」
黒い板にピッとして受付終了。
「あの、他の依頼書の物も採ってきたら、依頼達成になりますか? それとも買い取りだけですか?」
「数が揃っていれば、帰ってきたときに依頼書とともに提出いただけるとちゃんとポイントになりますよ。一度に受けられる依頼は基本2つですが、達成していれば、追加で受け付けますので」
「なるほど。ありがとうございます。じゃあ、行ってきます」
受付のお姉さんにこやかに送り出してくれた。
おっと、外に出る前に弓を買わないと。今日の依頼を完遂すれば、運が良ければ魔導コンロも買えるかもしれない。肉を獲って焼いて食おう。
地下の購買には、昨日と同じお兄さんがいた。
「こんにちは。昨日の弓ください。赤い方」
「あ、いらっしゃい。弓、ココにあるこれだよね」
彼の足元にそれはあった。なるほど、適当に置いたように見えて、買われそうなものは近くに置いとくのか? 昨日の鎧もそばにある。
「はい。毎度あり。矢はどうする?」
銀貨を渡し、弓を受け取る。自作のものより、少しだけ重い。
「まだ大丈夫です。失くなったらお願いします」
筒に入っていた矢は無事だったからね。
「外に出るのかい?」
昨日と言ってたことが違うじゃないか、と思われたかな。
「薬草採取です。これは保険」
肉獲る用だが、内緒にしとこう。
「気をつけていくんだよ」
「はい。ありがとうございます」
うん。みんな優しいなぁ。あの町での待遇は何だったんだろう。長男かどうかなんて、誰も気にしていない。それとも冒険者にそもそも長子は居ないのかな。
南門に向かう。ギルド証を見せるとそれで通過できる。
その前に装備確認。マント、斜め掛けの鞄、弓と弓矢。腰にはナイフ。鞄の中には回復薬などと、非常食。服とかコップとかその他諸々。これ以上荷物が増えると、宿屋に置いておくことも考えなくちゃならない。いざというときに動けないと死ぬしね。
では出発。
見たことのある金髪が視界に入った。
「おはようございます」
コクシンさんは、街に来た商人の馬車をチェックしている門番を、更にチェックしていた。槍を手にぼんやりと立っている。声を掛けるまで、俺に気付かなかった。
オツカレデスカ?
「ああ、おはよう。今日は外かい?」
「はい。薬草採取です」
「そうか。浅いところでも偶に魔物は出る。気を付けてな」
「はい。ありがとうございます」
やっぱりぼうっとしてるな。言ってることはマトモだけど。昨日のことかな。流石にあれ以上首は突っ込めないしな。なにもないといいんだけど。
「行ってきます」
ペコリと頭を下げると、少し笑みを浮かべて送り出してくれた。




