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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十三章 新たな後宮模様

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556話 最新後宮事情

友仁ユレンに同行する立勇リーヨンとしての姿はずっと見ていたけれど、この立彬リビンの姿では久しぶりだ。雨妹ユイメイとしてもなんだか懐かしみがある。


「お久しぶりです、立彬様。ワン美人になにかご用でしたか?」


しかし立彬とは旅に出て以来の顔合わせとなる設定であるので、一応そうした挨拶を挟んでから問う。用事であるならば、自分はさっさとこの場から立ち去ろうと思ったわけだが、これに立彬が首を横に振った。


「そうではない。雨妹、お前に少々話があるのだ」

「私にですか?」


雨妹はきょとんとしてしまう。


 ――なにか大事な話があったかな?


 記憶をひっくり返してもなにも出てこないといった雨妹の様子を見て、立彬が渋い顔になる。


「全く、のん気者めが。今が一番気を遣う時期だというのに」

「はぁ」


そうは言っても、やはりいまいちピンとこない。そんな雨妹たちの様子を眺めていた王美人が「ふふっ」と笑みを漏らす。


「お二人とも、どうぞ庭をご覧になりながらお話しをしてくださいな」


そして内緒話の場所を提供してくれるという。


「お心遣い、感謝いたします」


立彬が王美人に礼を述べると、おやつとお茶を口の中に詰め込んだ雨妹は二人で庭に出ることになった。


「王美人の庭園は自然のままで、落ち着くな」


立彬が遊歩道を歩きながら、感心するように周囲を見渡す。


「ですよね、前のお屋敷と雰囲気が同じですもの」


雨妹も「立彬様にもわかりますか!」と激しく同意する。

 あちらからの植え替え分だけでは広さ的に樹木が足りないので、新たに植えたものもあるのだろう。遊歩道もまだ整備途中らしく、これから整えるらしい場所もあった。けれどちょっと偉くなってもこうしたところが変わらないのが、王美人が父に愛される理由なのだろう。

 しかし、お庭見学に夢中になっている場合でもない。


「それしても立彬様、よく私がここだとわかりましたね?」


まずはこれについて問うと、立彬がなんということもないという調子で答えた。


「お前の家の方へ行ってみれば留守だったのでな。楊殿に会いこちらだと聞いた。もう早速働いているとは思わなかったぞ」

「なるほど、それは手間をおかけしました」


なるほど、一度家に行って空振りさせてしまったらしい。けれど早速働いているのは立彬とて同じなので、どっちもどっちだ。つまり、自分たちはお仕事大好きな似た者同士ということだろう。


「で、話とはなんですか?」


改めて切り出す雨妹に、立彬が咳払いをした。


「雨妹よ、お前は百花宮の変化について知っているか?」


立彬の質問に、雨妹はきょとんとしてしまう。


「変化ですか? 食堂が広くなって顔見知りが増えたってことくらいです」


正直に答えるが、つまりこの目で見た以上の情報は全くないということでもある。


「やはりのん気であったか」


これを聞いた立彬は想定内だという顔になる。


「今もっとも注視すべき変化は、皇太后失脚の跡を誰が埋めるのか、という点であろう」

「ああ、そちらですか!」


雨妹もやっと思考が追い付く。確かに後宮で一番の権力者は誰か? というのは大事だ。自分の生活に密着していないので、さっぱり気にしていなかったが、大きな目で見れば知っておくことは必要だろう。そしてさすが立彬、立勇としての勤めから帰って来て早くも最新情報に接しているとは。むしろ働き過ぎを心配するくらいだ。

 なにはともあれ、雨妹も「ふむ」と想像してみる。


「普通に考えれば、皇后陛下が一番偉いとなるのでしょうけれど……」


けれど皇后は皇太后派の筆頭であり、本来ならば皇太后と一緒に尼寺行きになるべき人物だ。何故か今回は身分据え置きとなったようだが、そんな人が未だに権力の中心にいるだろうか?

 この沸き上がった疑問を察した立彬が答えてくれた。


「皇后陛下は、皇帝陛下が新たな皇后を連れて来られることを厭ったため、その壁役として据え置かれているだけの立場だ。それに皇后陛下本人は、皇太后がいなければなにも出来ない」


なるほど、皇后の席を温めておくだけが役目であるらしい。

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