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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十二章 国主の一族たち

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533話 女子会風にしてみた

どんよりと曇を背負っているかのような雰囲気のリフィだが、それでも酷い目に遭った友仁ユレンを慰めようという気持ちが強いようで、懸命に微笑みを浮かべているといった様子だ。

 先日の離宮での騒ぎは宜が起こしたものだと聞き、元は宜王太子の婚約者であった身として、心中穏やかではないのだろう。

 しかし当人は友仁側に隠しているため、違和感を抱かれまいと普段通りを努めているようだ。


 ――これは駄目だな、シェン殿下はなにやっているんだか。


 雨妹ユイメイはリフィをひと目見て、そう思ってしまう。

 どうやら沈はリフィの精神面を労わることを上手く出来ていないようだ。

 沈当人が短い付き合いでもわかるくらいに鋼の心臓を持っているような人なので、精神的に弱っている人を理解するのが難しいのかもしれない。

 加えてリフィも元姫としての矜持があるだろうし、弱音を吐けない人なのだろう。

 それらが悪い方へと作用していて、今の状態だということだと思われる。

 友仁も彼女の顔色の悪さに驚いていたようだが、気を取り直したようにニコリと笑みを浮かべた。


「こっちだよ!」


友仁は自らリフィを卓へと案内して、席へ座ると。


「リフィ、元気がないね? 具合が悪いの?」


直球で尋ねる友仁に、リフィはビクッと肩を跳ねさせたが、表情は消さないままだ。


「いいえ、身体はなんともないのです。

 ただ気分が少々塞いでしまい、それが見た目に表れてしまっているようで」


困ったように自身の頬を撫でるリフィに、友仁が心配を隠さずに眉を下げる。


「邸が攻められたんだもの、すごく怖かったよね」

「ええ、まあ……」


友仁の労りの言葉に、リフィは感激するような、戸惑うような、微妙な顔になった。


 ――相変わらず、優しい声掛けに弱い人だなぁ。


 そんなリフィに、友仁がさらに声をかける。


「あのね、不安は誰かに聞いてもらうといいんだよ?

 私もそうやって助けてもらうもの。

 だから、リフィも不安を言うといいよ。

 ちゃんと聞くからね、この雨妹が!」

「はい、ドンと来いです!」


最後に友仁から両手で指し示され、雨妹は自分の胸を叩く。


「沈殿下への文句でも愚痴でも悪口でも、なんでもどうぞ!」

「そりゃあつまり、全部沈殿下の悪口ってことだね」


胡霜フー・シュアンが口を挟むが、まあそうかもしれない。

 けれど部下というのは、上司の悪口を言えばスカッとすることが多いのだ。

 逆に沈を褒め称えたくて仕方がない場合であっても、全ての褒めを聞いて共に称えようではないか。

 

「もしくは、リフィさんは皆さんに人気がありそうなので、恋のお話だっていいです。

 恋人さんへの愚痴もどうぞ!」

「まぁ!」


雨妹の話し方がおかしかったのか、リフィが朗らかに笑う。


 ――やっぱり美人さんは、そういう笑顔がいいよね。


 リフィの気負いが抜けた笑顔に、雨妹はホッとした。


「さあさあ、リフィさんもこちらに座ってどうぞ!」


雨妹はリフィを席に着くように促すと、あらかじめ用意していた茶器を持ちだしてくる。


「では、まずは不肖ながらこの雨妹、お茶を淹れさせていただきます!」

「あら!」


まるでこれから一騎打ちでもするかのような気合の入った宣言に、リフィが目を丸くしている。


 ――ふふふ、まさか自分がお茶をご馳走になるとは思わないでしょう!


 これも友仁と話し合った、リフィの気持ちをほぐすためのびっくり演出だ。

 実は今回、雨妹たちはリフィを敢えて招いていた。

 今回のアレコレの件を最後に丸く収められるかどうか鍵となるのは、リフィだと思うからだ。

 彼女を呼び出すのに「友仁殿下が奶茶を所望です」と言えば、なにも不思議がられない。

 そしてリフィの口が少しでも緩みやすいようにと、友仁以外の面子を女子会よろしく雨妹と胡霜という女性で固めたのだ。

 部屋の中には胡霜がいるからと、特別に明も立勇も外してもらった。

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