第22話 午前の練習も終わって
午前中の練習は最後に代打に格下げされた大野の打撃練習で終了した。
「それじゃあ、昼飯にするぞ!慌てて食うんじゃねえぞ!午後は紅白戦をやる!赤チームは神前とかえでのバッテリー以外は全員補欠の面子でやる!白チームはカウラ!それとレギュラーメンバーだ!かえで……オメエのチームのセカンドにはあのサラを用意してやるからな……あそこに飛んだらどんな打球でも全部ランナーはセーフだ……考えてリードしろよ……」
打撃練習を終えて整列した部員達に向けて相変わらず偉そうにかなめはそう言い放った。
「ちょうどいいハンデと言うか……そこは配球で何とかしろという意味だね?面白いじゃないか。そのくらいじゃ無いとやる気にならないところだった。まあ、そもそも打球が前に飛ばなければ守備がどうであろうが関係ないんだからね」
かえではそう言って挑戦するような目で姉であるかなめを見つめた。
二人の間にかわされる火花に部員達は肝を冷やして立ち尽くす。
「はい、皆さんご苦労様。今日は春子さんがお弁当を作ってくれたから皆さんで食べてね。嵯峨さん、ちゃんとあなたも動いてお弁当を部員に配るのよ。いつもあなたの為に働いてくれている部下ですもの……それくらい出来て当然でしょ?」
お蔦の大荷物の一つを手にした制服姿の安城が春子と一緒にダグアウトから出てくるとそう部員達に言った。
『女将さんありがとうございます!』
部員全員が春子に向けてそう言って頭を下げる。
「まったく、叔父貴の奴……自分の女を三人も連れて合宿とは良い身分だな……まあ、遼帝国皇帝なんだから女が三人いても別に不思議な話じゃねえが……叔父貴の親父の霊帝は女を7,000人囲んだ後宮で政治もせずにエロい事と薬に夢中だったという話だからそれに比べればだいぶマシとは言えるんだがな」
安城に歩み寄って微笑みを浮かべお蔦の運んで来た弁当を配るのを手伝う嵯峨を見ながらかなめはそう独り言を言いながら一人ピッチングマシンをマウンドから移動させようとしている菰田に向けて歩き出した。
「おい!弁当を受け取ったら食う前にピッチングマシンを片付けろよ!補欠連中は今日もマシンの前にきりきり舞いだったんだからそいつ等が最優先!ヒット性の当たりの無かった奴で手伝わなかった奴を見つけたら後で射殺してやるからな!」
ピッチングマシンの前で叫ぶかなめを見ると打撃に自信がなく、打撃練習でもぼてぼてのゴロしか打てなかった数名の部員達がまだ弁当を受け取っていないのにそのままかなめの所に走っていった。
「相変わらず西園寺さんは勝手だな……自分はほとんど動いてないからお腹もすいてないから良いけど……あの人達だってお腹が空いてると思うのにな」
誠はそう言いながらいつもの張り詰めたような雰囲気が消えてどこか親しみやすさすら感じる制服姿の安城から弁当を受け取った。
「西園寺の奴は真正の『女王様』だからな。男を虐めることが好きなんだろう」
となりでお蔦から弁当を受け取ったカウラは諦めたようにそう言うとファールグラウンドの日の当たる場所へと誠を導いた。




