第21話 四番の意地とバットコントロールが得意な人造人間
「はーい、50球中にヒット性の当たりは35本……やっぱり今年も『四番サード』は私で決まりよね♪」
マウンドの上で悔しそうな顔をしているかなめに向けて涼しい顔でアメリアはそう言い放った。
「くそったれマシンが……どれもストライクゾーンにしか行かねーぞ。フォークも投げれるという触れ込みで取り寄せたのに……あいつ、ボールになるフォークは振らねえでやんの……おい!ぼやぼやしてんじゃねーぞ!次はアンだ!オメエは打撃に問題が有るんだ!鍛えてやる!打席に立て!」
かなめは部員から少し離れた位置でアメリアの見事な打撃フォームを感心しながら見つめていたアンに声をかけた。
「僕ですか……分かりました……」
明らかに嫌がりながらアンはバッターボックスに向った。
こうして始まった打撃練習はマシンの高性能さとアンの打撃はやはりツケ刃程度の事、そして野球をするのは初めてだという割にリンのバットコントロールが見事だということを誠に思い知らせることになった。
「リンさん、お疲れ様です。でも見事ですよ、内角は引っ張るんじゃなくっておっつけて外角も右方向に流す……本当にプロの指導を受けていたんですね」
次に打撃練習の順番が回ってくる誠は練習を終えたリンにそう声をかけた。
「ええ、バットのコントロールは私の一番の得意で好きなことです。誠様のバットに初めて触れた時も非常に興奮しました。ですが、あれほど立派なバットで中々達しないバットと言うのは私も驚きました。ぜひ一度お相手したいと……いえ、私だけのものにしたいとその時思いました」
「あのーそれって下ネタですよね。リンさんも冗談を言うんですか……そういうの西園寺さんに聞かれない程度の声で言ってくださいね。あの人グラウンドは神聖な場所だと信じ込んでますから……下手をすると射殺されますよ」
誠はそう言いながらリンに変わって左バッターボックスに入った。
「神前か!オメエには期待してるんだ……うちじゃあ飛距離はオメエが一番なんだ。今回のキャンプでは飛ばすだけじゃなくて確実に強い当たりを打つことだけを考えて振れ!」
そう言うとかなめはマシンのスイッチを押した。
インハイのストレート。誠の得意とするコースだった。
誠が思い切り引っ張った打球はそのままライトのポールを巻くようにフェンスの向こうに消えていった。
「へえ、神前は軟球であそこまで飛ばすんだ……こりゃあ大したもんだな。高校時代に野球を辞めてくれて俺としては大助かりだ。さも無きゃうちなんか来るはずがないだろうからね」
自分も打撃練習では二本のさく越えをしていた嵯峨が余裕の表情で誠の見事なホームランに目をやった。そんな嵯峨の背中をダグアウトでは安城、春子、お蔦が熱い視線で見つめ続けているのが嵯峨としてはちょっとした自慢だった。




