第19話 整備したてのピッチングマシンとかなめがアメリアに貸したノルマ
かなめの一言で逆らうと後で何をされるか分からないと悟った菰田とその周りでキャッチボールをしていた補欠のメンバーはすぐに走ってグラウンドの隅に置かれた真新しいピッチングマシンに走っていった。
「かなめちゃん……今度はちゃんと使えるマシンなんでしょうね……夏みたいに菰田君を生贄に使わないと怖くて使えないようなマシンだったらただの時間の無駄だわ」
これまでさんざんとても普通では対応不可能な打球ばかり追わされてきた嫌味からサードの守備位置から戻って来たアメリアはそう言ってかなめをにらみつけた。
「その点は問題ねえ。ピッチングマシンの貸し出しを専門にやってる業者で一番人気の機械を用意した。しかも昨日まで整備をしていたから故障の可能性もねえ。アタシは同じ過ちを二度と繰り返さねえ女なんだよ」
得意げにかなめはそう言うとサングラスを手にやりニヤリと笑った。
ピッチングマシンは菰田達と気を利かせて駆け寄って来たスコアラーの西、そして看護班のひよこの手によりマウンドに据えられる。
誠から見てもまるで新品同様に見えるその機械は依然見た錆びだらけのアーム式旧式マシンとはまるで違う機械に見えた。
「まずは、アメリア!オメエから行け!マシンに文句を垂れてきた以上難しい球をこちらでも設定するからな……打率六割がノルマ!それ以下だったら後でどうなるか分かってんだろうな!」
ピッチングマシンに向って歩いて行きながらかなめはアメリアに向けてそう叫んだ。
「西園寺も無理を言う。打率六割?どうせアイツの事だからあのマシンの最高球速で変化球ばかり投げるつもりだぞ……クラウゼ、自信はあるのか?」
アメリアの隣でバットを持ってたたずんでいたカウラがそう言ってアメリアを見上げた。
「かなめちゃんがああいう以上従うのが選手でしょ?打率六割?上等じゃないの……どうせ相手はマシンなんだから人間みたいに考えて投げるようなことはしない。それにあれだけぴかぴかってことは球が揺れて来たり思わぬ方向に行ったりしないってことよね。それならこの勝負受けて立つわ」
そう言ってアメリアはそれまで三本バットを持って続けていた素振りを止めて残りの二本を投げ捨てると右バッターボックスに入った。
「クラウゼ中佐……君にはちゃんと打ってもらわないと誠君に勝ち星を付けてあげられないからね。いくら誠君と僕で『菱川重工豊川』の重量打線を抑えても点が捕れなかったら引き分けで勝ち点は1しかつかないんだから」
リンの助けを借りてキャッチャーの防具を脱ぎながらかえではそうつぶやいてアメリアに視線を送る。
マウンドでひよこから軟球を受け取ってマシンに球を入れているかなめを見つめている自信がありそうな表情のアメリアを誠は見ながらこの勝負の結末がどうなるのかかたずをのんで見守っていた。




