第14話 『特殊な部隊』のサウスポーエース始動
「それじゃあ、ベルガー大尉の言葉もあったようだし本格的に投げ込みを始めてみようか。まずは僕は立ったまま受けるから誠君は思う通りの球を投げてくれたまえ」
そう言うとマスクをしたかえでは誠にマスク越しに笑いかけた。その隣ではかえでがどれほどのものかを確認しようとカウラが黙ってその様子を見つめている。
「じゃあ行きます!」
二人の女性の視線に少し動揺した誠は調整のつもりで高めのストレートと言う感じの球を投げたがその球は少し右にズレた。
かえでは何事もなかったかのように反応してそれを受け止めるとすぐさま誠に鋭い返球をしてくる。
「軽く考えるんだ。自分が思うように投げればいい。人が見ていようが相手がどんな打者だろうが関係ないんだ。自分なりにベストを尽くす……誠君はそれだけを考えればいいんだ」
誠の動揺を見透かしていたようにかえではそう言って笑いかける。
その効果もあってか、立ったままの20球ほどの投げ込みは無いごともなく終わった。
「じゃあ、ここからは本格的に行こう。僕はサインは出さないよ。誠君は好きな球を投げればいいんだ……それじゃあ行こう!」
座って誠の投球を受ける準備を始めたかえでを見ると監督のかなめやそれまでパーラとキャッチボールをしていたアメリア、そして誠の来る前はチームのエースだった島田までもがかえでの周りに集まり誠の投球を見つめるようになった。
『何を投げてもいいって言うけど……最初はストレート……いきなり僕のスライダーやカーブなんて捕れるわけがないよな』
誠はそう思ってそれなりのスピードのある伸びのあるストレートをかえでのミットめがけて投げ込んだ。
いい音を立ててミットに吸い込まれる球だがかえではどこか不満そうに返球を返した。
「誠君。僕はどんな球を投げてもいいと言ったよね?こんな誰でも捕れるようなストレート……別にそれじゃあ君の『許婚』である僕がキャッチャーを務める意味がないじゃないか。本当にどんな球でも受け止めて見せるから……君は遠慮をする必要なんかないんだ」
かえでの言葉にカチンと来た誠は今度は大きく落ちるカーブを投げ込んだ。
これもまたかえではまるでその球が来ると読んでいたかのように確実に捕球してすぐさま返球してくる。
「いいよ、その調子だ。次も好きな球で良い……ただし、フォークを投げる時は言ってくれないかな?その方がギャラリーも喜ぶだろうし……それに僕達の絆がいかに強くて誰にも引き離せないものかを示すいい機会になる」
かえではそう言って笑いながら座って誠の投球を待った。誠はかえでの見られることに興奮を覚える露出癖を思い出し、次は大きく曲がるスライダーを投げ込もうとミット中の球の握りを変えた。




