第13話 キャッチボールと嫉妬
ランニングが終わると部員達はグラブを手にそれぞれキャッチボールを始めた。
「誠君、とりあえず肩を作っておこうか。僕も君の球をしっかりと受け止めてみたい」
かえではそう言って誠に歩み寄ってきた。しかし、その視線が誠の股間をじっと見つめていることに誠は明らかにどんよりとした顔をした。
「かえでさん……今、僕の別の玉のことを考えてません?やめてくださいね」
やんわりとそう言った誠に自分が誠の玉のことで脳内が一杯になっていることに気付いたかえでは恥ずかしがる様子もなく微笑むとそのまま誠から距離を取った。
『大丈夫なのかな……この人仕事中以外はエロい事しか考えていない変態だからな……でもプロの指導を受けていたとか……まあ、試合中はなんとかなるだろうし、アメリアさんほどじゃなくても大野先輩よりはマシだとは思うんだけど』
誠はそう言うと少し強めに左腕を振って一球かえでのキャッチャーミットめがけて球を投げてみた。
かえでは慣れた様子でそれを受け取るとこれもまた鋭いボールを誠に投げてくる。
「誠君は意外と意地悪なんだね……でも僕はそう言う扱われ方をされるのが好きだと知っている君の優しさなんだろ?君の球に愛を感じたよ」
いつものさわやかな笑顔を浮かべるかえでを見て誠はかえでが真正のマゾヒストであることを思い出して自分だけはまともであろうととりあえず肩の様子を見ながらキャッチボールを続けた。
「日野、神前は肩はすぐできるが持ち前の気の弱さから立ち上がりが悪い。それだけ投げればストレートだけならもう準備は出来ているはずだ。貴様には私の球も受けてもらう予定だ。正捕手になるのなら早く準備をした方がいい」
いつの間にかかえでの隣に立っていたカウラが少し離れた誠にも聞こえる程度の声でそう言った。そのカウラの顔にはいつもの無表情ではなくかえでへの対抗心剥き出しの闘争心のようなものが誠にも見て取れた。
「ベルガー大尉。ご助言有難う。ただ、あの大野ですら簡単に取れた君のシンカーなんかは別に練習なんかせずとも僕には捕ることはできるよ。今日は誠君の球を受けることに集中したい……リン!マスクを取ってきてくれ!」
嫉妬の表情を浮かべるカウラを軽くいなすとかえではアンとキャッチボールをしていたリンに声をかけた。リンは静かにうなずくとアンを待たせて用具が置いてある場所に走る。
「随分と自信があるようだな。神前の大きく落ちるスライダー……あれを貴様は捕れるのかな?まあ、フォークはおそらく捕ることはできないだろうから期待しないでおこう」
明らかに無反応のかえでにいら立ちをさらにあらわにさせながらカウラはそう言い放った。
「君も随分と僕を甘く見ているようだね……誠君のフォークを捕るためにお姉さまは僕を選んだんだよ……僕ならただ捕るだけじゃなく効果的な配球で確実に相手を三振に打ち取る。その為の策はいくらでも用意してあるんだ。見くびらないで欲しいな」
走ってキャッチャーマスクを持って来たリンからかえではマスクを受け取るとそう言ってカウラを余裕の表情で見つめた。
かつて人妻24人を寝取って自分のクローンを孕ませるという異常な計画『マリア・テレジア計画』により、寝取られた夫の嫉妬と怒りの罵詈雑言を受けても平然と聞き流していたという鉄の神経の持ち主であるかえでにはカウラの甘い純情からくる嫉妬など相手にするまでも無いという自信がそこには見て取れた。




