第11話 『秘密兵器』とその三人の愛人
「来たぞ……やっぱ女連れ……しかも三人勢ぞろいだ……アイツはハーレムを作るのがそんなに好きなのか?」
横を向いたかなめは嫌な顔をしてグラウンドの入り口に目をやった。誠達部員一同はそのままかなめの目の先を見つめた。
そこにはユニフォーム姿の長身の男と、和服姿の女性が二人、そしてなぜか『特殊な部隊』と同じ司法局の特殊部隊であり、お荷物扱いの『特殊な部隊』とは違って花形として知られる公安機動隊の制服に身を包んだ女性の姿があった。
「おう、待っててくれたんだ。いいねえ……久しぶりの野球、秀美さんも春子さんもお蔦もまあ俺の華麗なるプレーを見て行ってよ」
得意げにそう言いながらかなめがいつもきつく言っているのでトレードマークともいえるくわえたばこではなく素昆布をくわえた男はそう言った。
その男こそが司法局実働部隊隊長嵯峨惟基特務大佐だった。
「嵯峨さんねえ……今日はすることがあるからって言うからついて来たけど……まさか隊のグラウンドで隊員のキャンプに付き合いますとか言い出すなんて……まあこのグラウンドの存在自体が司法局ではかなり問題になっているんだから、使わないのはもったいないというのは分かるんだけど……」
制服姿のセミロングの髪の女性、公安機動隊隊長安城秀美少佐は苦笑いを浮かべながらいつものぼんやりとした表情の嵯峨を見上げていた。
「秀美さん……実は今日一日4人で裸で遊べるとか期待してた?でも、それは練習が済んでからのお楽しみ。だっていつも秀美さんはアレの時は一番にばてちゃうじゃない?だからこうして最後まで平気でいる俺が体力を使って多少消耗したところで4人で楽しむ。これが一番。もし一日中楽しみたかったらあと俺好みの女性を4人ほど調達してきてよ。全員を位に血に銃夢中にさせる自信があるから」
嵯峨はそう言うとあきれ果てる部員達の前を進んで死んだ顔で自分を見つめて来るかなめの前に立った。
「叔父貴。朝から絶倫自慢か?それとこの合宿が無ければ安城少佐と女将さんとお蔦を一日中抱く予定だったのか?叔父貴のエロさにはただただ呆れ果てるばかりだな。それと神聖なるグラウンドでそんな下品な話をするんじゃねえ!今回は相手の『菱川重工豊川』の監督の武田さんのご厚意で特別にリーグから永久追放処分をされてる叔父貴も試合に出られるんだ。そのことを感謝して来週の試合では武田さんに失礼の内容に振舞えよ」
かなめは叔父である嵯峨にきつくそう申しつける。
「かなめさんも、そんなに言うことなんじゃないの?新さんがファーストを守ればうちは無敵だって店に来るたびにそうこぼしてるじゃないの」
今日は紺色の留め袖姿に手に大きめの風呂敷包みを抱えた30代後半の美女、『特殊な部隊』行きつけの焼鳥屋の女将家村春子はそう言って嵯峨をにらみつけるかなめに笑いかけた。
「そうだよ、甲武だって野球は人気なんだ。甲武の中等学校野球選手権、そして鏡都六大学野球、そして職業野球リーグ。アタシもやきゅうをみるのは久しぶりだよ……思い出すねえ……女郎屋を新さんに連れられて出て大学野球の試合を見に行ったあの頃……まあ、その途中でアタシが我慢できなくなって連れ込み宿に入ったから試合は見られなかったんだけどね」
こちらは派手な朱色の長い袖の和服に大きな風呂敷包みを背負った元甲武の花街一の花魁で今は嵯峨の住む屋敷で一緒に暮らしている清原蔦が実年齢50歳のわりにどう見ても10代の若さの美しさを自慢するような調子でかなめを挑発するように笑いかけていた。




