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E/O  作者: たま。
oβ・クラン
90/94

第81話・女神介入

切り離した後半です。

★オラクルクエスト『世界の解放Ⅱ』

【内容】

世界の解放に失敗した勇者達。しかし、希望は潰えていない。

誰にも見られる事なく、義体を解除しサタンを倒して世界を救え!!

尚、クエストでは『封神具』の使用と『義体』の解除が可能です。

また、セレスティアプレイヤー以外の視線がある場所での『義体』の解除は出来ません。

【限定】

アキラ=フェアフィールド、ヴィルヘルム=トーラス、ミリアニス=ガルムステット

【報酬】

正式サービスへの移行。

義体所持スキルの引継ぎ因子ボーナス。



 OS社は、ご親切にメインクエスト『世界の解放』が失敗した際の滑り止めまで用意していた様だ。

俺たちがセレスティアではなかった際の滑り止めは用意していたかどうかは分らない……。

ついでに今回はクエスト受注対象を指定してきている。

俺とヴィルヘルムさん、と誰だろう……。

ミリアニス、ミリアニス……っと、レイドメンバー表と照らし合わせてみる。


 いたっ!


 『龍咆傭兵団』の人で現在D班に所属している。

運が良いのか悪いのか俺やヴィルヘルムさん同様、瓦礫生き埋め組だ。

報酬は、今までと違い子供キャラへ引き継ぐ因子へのボーナスと当たり前であるが正式サービスへの移行だ。


 ま、取り合えず受注だな。

義体を解除できるならこの現状から脱出出来る筈だ。


『義体解除』


 肩甲骨辺りから黒い天使の翼が出現し、ただでさえ狭い空間をさらに狭めている。

さて、ここからどう出るかな。

失った左腕は、ネフィリムの再生力で急激に治っていっているが、全快までもう少し掛かる。


 その時、聞きなれた声が瓦礫内で反響する事なく、しっかりと魔法を詠唱しているのが聞こえた。

ヴィルヘルムさんの声だ。


『神なる息吹、天なる鼓動、聖なる御手。主神ガディウスの名の下に、が信奉はさらなる高みを望む。

われが欲するは、神なる息吹……、救世を望むは人々の息吹、われの祈りを誰一人と阻むことはなし『ヒルフェバンデ』』


 詠唱が後半に差し掛かった時、地面が心なしか青白く発光していき魔法名を告げると同時に視界が一気に広がる。

そして、城を丸ごとすっぽり入るほどの巨大な魔方陣が、俺達を遮っていた瓦礫の山は消し去り、再生中だった左腕も全快させ、瓦礫前にいた筈のサタンを弾き飛ばした。

ああ、その手があったか……。

すっかり、神術の存在を忘れていた。


 『ヒルフェバンデ』によって弾き飛ばされたサタンは、地面を抉りながら遥か遠くで倒れている。

瓦礫によって閉じ込められていたプレイヤーと瓦礫の外でサタンに敗れ立ち竦んでいた十数人のプレイヤーが、突然現れた自分達を護っている結界と俺達三人のセレスティアを見て呆然としていた。

まぁ、厳密に言えば俺もヴィルヘルムさんもセレスティアとは違うのだけど。


「な、なんで……、セレスティアがいるの?」


 誰かがそう呟いたが気にしない。

三人の中でサタンに一番近い俺の方へヴィルヘルムさんとミリアニスさんが飛んで来る。


「アキラちゃんとヴィルヘルムさんね……。よろしく」

「「よろしく」」


 彼女は、俺達の横に降り立つと横目で視線を合わせつつ挨拶と『封神具』を出現させた。

彼女の両手には、デザインがそれぞれ違う神々しくて仰々しい美しい盾が両腕に装備されている。

見た目は、丸盾であるがそれだけではないのは間違いないだろう。


 ヴィルヘルムさんも彼女と同様に『封神具』を出現させる。

出現したのは以前と違い過剰とも言える豪華な装飾が施された本だ。

本と言っても魔本と呼ばれる列記とした武器で、ステータスやスキル補正が一切ない代わりにあらゆる魔法を下位上位問わず詠唱なしワンスペルで発動出来る。

と言っても、ワンスペルで発動出来る魔法は、魔本毎に決まっていてどんな魔法でもという訳には行かない。

が、しかしだ。

ヴィルヘルムさんが持っている魔本は、神話級だ。

当然、それに記されている魔法が下位な訳がないし、一つ二つなんて数でもないだろう。


 次に俺だ。

右手に出現させたのは、本体が見えない程燃え盛る炎に包まれた大剣だ。

光と炎、二つの属性を持っていて俺の持つ八つの『封神具』の中では、一二を争う火力重視の武器だ。

ちなみに、第二形態では炎を模した剣身をしている。


「ヌハハハハ、面白い。 セレスティアが三人とな」


 サタンは、むくりと立ち上がり何故かサイドチェストしながら楽しそうに笑っている。


「それでは再開である」


 サタンは右手を引き、今にも飛び出しそうな姿勢へと変わる。

が、その時、ノイズと共に第三者による介入が行われた。


『面白くないですね。 手を貸して差し上げましょう』


 四神の女神で間違いない。

しかし、今までの介入と違い、彼女?が直接喋った。

女性と思われる声色、感情がなく無機質で平坦な喋り方、だからと言って機械的かと言われればそうではない。

姿が見えないから余計にそう感じる。


「誰であるかっ!?」


 サタンは、姿を見せない声の主を探す。


「ヴィーナスか!」


 ミリアニスさんが俺やヴィルヘルムさんに聞こえる程度の音量で苦虫を噛んだ様な表情で言った。

俺だけでなくヴィルヘルムさんやミリアニスさんも彼女?に対して良い印象を持っていないのは明白だ。

いや、オラクルクエストを受けた事のあるプレイヤーは、全員女神に対して良い感情を持っていないだろう。

事ある毎に女神の横槍でゲーム内が掻き回されている。

そして、それを処理しているのが俺達セレスティアプレイヤーだ。

ま、OS社のGMも動いてはいるが、世界が広すぎるだけでに彼らだけでは手が回っていない状態だった。

俺が自分の事で手一杯だったcβの時は、特に凄く多かったらしい。


「何をするつもりなんだろう」

「まぁ、ろくでもない事は間違いないだろうね」

「やれやれ……ですね」


 どうせ女神からの介入を防ぐ手立てはないので、何かが起こるのを黙って見ているしかない。


「ぬっ!? ぬおぉぉぉぉおおおぉぉぉ。 我輩達の闘いに水を差すでないっっぁああああアアアアアアガァァァァァッ!?」


 サタンは頭を抱えながら悶え出した。

全身の血管が浮き出て脈動している。

そして、立っていられなくなり膝を着く。


 嫌な予感しかしない。


「ガアアアア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ッ」


 サタンの状態がさらに悪化していく。

どことからもなく0と1で構成されたデータが可視化された状態でサタンへ流れ込んでいっている。

その量は凄まじく受けた本人は、白目を向き口からは泡を吐き出している。

ここまでリアルにしなくても良いだろう。


「我、輩……が、消、え、る……」


 サタンが言い切った瞬間、流れ込んでいたデータが止まり、悶え苦しんでいたのがぴたりと止まった。

サタンの腕はダラリと下がり、相変わらず白目でどこを見ているのか見ていないのか分らない。

口は顎が外れたかの様に開けっ放しで泡の跡と涎がポタポタと地面に落ちている。

そして、しばらくの静寂の後に異変が起こる。


 ボコッ


 そんな表現が合うだろう。

サタンを構成していた身体の至る所が膨れ上がり肥大化していく。

全身が異常なほど膨れ上がりサタンの面影がほとんどなくなる。

その状態からさらに膨れ上がろうとした時、丸で風船が割れた様な感じと共に爆風と漆黒の煙そして0と1のデータエフェクトが辺り一面を覆う。

何が起こっているのかさっぱり分らない。

ただ、嫌な予感だけは膨れ上がっている。

爆煙の向こうから十本以上の木がへし折れる音や地面が軋む音が聞こえており、それに隠れるようにしてベチョ・ネチョ・ゴリッという余り聞きたくもない音も混ざっている。

しかも、開始から五分ほど経った今もまだ終わらない。


 そして、十分経つか経たないかそんな時、漸く煙が晴れ少しずつサタンの姿が現れる。


「「「……」」」


 俺達の前に現れたのは、天を穿つほど巨大なドラゴンだった。

いや、ドラゴンの形をしたサタンというべきか……。

サタンは、ヨハネの黙示録をはじめ一部の書籍ではドラゴンの姿をとっている時がある。

色は赤くないものの今回もそういう説を基に女神によって変異させられたと見て良いだろう。


 ドラゴンの様な頭部からは左右へ伸びる巨大ね禍々しい角、額中央に一つ頭部左右に三つと計七つの目は赤くギラつき、口からは鋭い歯が幾つもならび吐き出される息は黒く濁っている。

巨大な身体を支える二本の脚は太く大きく、腕もそれに負けないぐらいの大きさがある。

今は二本の脚と体躯以上に太く長い尾で身体を支えているが場合によっては、腕も使った四速歩行でも問題なさそうだ。

翼は、メインとなる巨大な一対の主翼とそれよりも若干小さめの副翼が一対が少し後方にそして、尾と腕に補助翼が一対ずつある。

以前、女神によって変異させられたディア・カラミティドラゴンよりも体躯が巨大な為、その分の翼が増えた感じだ。


『グァアオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』


 サタンの咆哮は、ノイズと共に空間を歪ませる。

理性の欠片も感じ取れないその咆哮は、もうそこに今までのサタンは存在せず唯々醜悪で凶悪で暴虐な一匹のドラゴンに成り下がってしまっていた。


 再び電子音がなり、オラクルクエストの内容更新の知らせが届く。



★オラクルクエスト『世界の解放Ⅲ』

【内容】

女神の干渉によって変異した魔神サタンを倒して世界を救え!!

尚、クエストでは『封神具』の使用と『義体』の解除が可能です。

また、三人での攻略が失敗した場合、直ちに『世界の解放Ⅳ』へ移行します。

【限定】

アキラ=フェアフィールド、ヴィルヘルム=トーラス、ミリアニス=ガルムステット

【報酬】

正式サービスへの移行。

義体所持スキルの引継ぎ因子ボーナス。

セレスティア所持スキルの因子ボーナス。



「では、ドラゴン退治と洒落込みましょう」

「ん」

「ええ」

当初の予定では、次話で完結(魔神サタン戦を省略)の予定でしたが、アキラが全然活躍していない事に気づいた為、急遽書く事に決めました。

なので、GW中に完結できるか微妙になりました。


《Name》神剣・レーヴァテイン

《User》アキラ=フェアフィールド

《Rank》Myth

《Level》封神具修練

《Base》大剣

《Effect》火・光属性付与エフェクトダメージあり(武器攻撃力+300%)、浄化の炎(敵性対象のあらゆる付与効果を打ち消す。自身と味方のあらゆる状態異常を打ち消す)

制限解放モード……常時発動型、エフェクトダメージが本来よりさらに+300%、、救世の炎(HP・SP・MPへのダメージ、与ダメージ分を自身と味方のHP・SP・MPに還元する)

メインクエスト及びオラクルクエスト限定

《Detail》

ロキによってニブルヘイムで産み出され、スルトが所有していると云われる神剣。

剣身自体が炎と化した大剣で剣自体よりも纏っている炎が非常に強力。

また、浄化の炎により対象の付与効果を打ち消した上に自身に掛かっているあらゆる状態異常も治す。

浄化の炎の凄い所は、部位欠損や戦闘不能さえも打ち消してしまう所だ。

第一形態、古木の枝の最終形態で制限解放モードを使用出来る。

制限解放モードでは、剣自体よりもエフェクトによるダメージが増加する。また、救世の炎には、攻撃と回復が同時に行われる。

別名・神罰モードまたは垢バンモードと呼ばれる形態でゲームシステムから逸脱した違反者に対して本来の姿を晒してまでGMが使う最終手段である。

また、これにより死亡したキャラのアカウントデータは抹消される。


《Name》聖典・シアグリウスの書

《User》ヴィルヘルム=トーラス

《Rank》Myth

《Level》封神具修練

《Base》魔本

《Effect》登録魔法のワンスペル発動

◆登録魔法

『魔術メテオライトアヴェルス』

『魔術アヴァランチエクスプローション』

『法術リザレクション』

『神術フォーラインリヒト』

『神術スティグマオーバーラップ』

メインクエスト及びオラクルクエスト限定

《Detail》

ガリアの統治者シアグリウスの生涯を綴った聖典で古今東西様々な魔法を暗号化して記されている。

聖典ではあるが、他の魔本と同様で魔法を詠唱なしで詠唱時と同様の威力で発動できる以外は付与効果を持たない。

魔本の価値は、登録されている魔法の質と量で決まるが、このシアグリウスの書はどれも最高峰に位置している。

封神具・シアグリウスの黒歴史の最終形態で多重詠唱モードに出来る。

多重詠唱モード時……単発発動型、詠唱なしで登録されている魔法を全て同時に発動出来る。発動キーは「ガリア」である。

別名・神罰モードまたは垢バンモードと呼ばれる形態でゲームシステムから逸脱した違反者に対して本来の姿を晒してまでGMが使う最終手段である。

また、これにより死亡したキャラのアカウントデータは抹消される。

※第一形態、シアグリウスの黒歴史は、世に出る事がなかったシアグリウスの私生活が赤裸々に書かれている暴露本。


《Name》神盾・カイン&アベル

《User》ミリアニス=ガルムテット

《Rank》Myth

《Level》封神具修練

《Base》手甲

《Effect》

光・闇属性付与エフェクトダメージあり(武器攻撃力+30%)アベル・物理以外の攻撃を吸収する。カイン・吸収した攻撃を七倍にして返す。メインクエスト及びオラクルクエスト限定

不死モード……Detailに記載。限定発動型、クールタイム+500%

《Detail》

アダムとエバの子供であるカインとアベルの名から取った兄弟盾で相反する属性がそれぞれ付与されている。

見た目は盾であるが、列記とした打撃武器である。もちろん、盾としても非常に優秀である。

封神具・原初の兄弟の最終形態で不死モードに出来る。

不死モード時……三十秒間だけダメージを受けず、その間に受けたあらゆる攻撃を吸収貯蓄し、三十秒過ぎた後、まとめて七倍にして返す。

別名・神罰モードまたは垢バンモードと呼ばれる形態でゲームシステムから逸脱した違反者に対して本来の姿を晒してまでGMが使う最終手段である。

また、これにより死亡したキャラのアカウントデータは抹消される。

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