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E/O  作者: たま。
oβ・クラン
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第71話・賞金首の狙い

『壱式抜刀術』


 取り合えず、一番近い賞金首を一閃する。

 不意打ちかつ武器と鎌鼬の追加効果で何とか倒せた。

 レベルが同程度のプレイヤー相手だと、月守夢想流と言えど一撃で倒せない場合がある。

 プレイヤーは、一般的なMobと違い属性が二つある上に防具によって弱点属性を克服できるので属性武器による恩恵は対Mobほどはない。

  特に抜刀術の様な連撃よりも単撃に重点が置かれていると、それが顕著に出る。

 前と違いプレイヤーのレベルが高レベルされて来ている今は本当に難しいところだ。

 今回はある意味、無属性装備だったのが何とか倒せた理由かも知れない。


 周りをチラッと見る。

 乱戦だ。

 相手を選び放題だが、下手に動くと味方も巻き込みかねない。

 鎌鼬効果もあって攻撃範囲が広い月守夢想流は、敵味方入り乱れての乱戦は使える技が限定されてしまい少々使い辛い。

 

 右から斬りかかって来た賞金首を技を用いないで弾き返し、その反動で斬り返して一閃する。


 やはりか……。

 月守夢想流剣術は、技を使用しない攻撃では攻撃力に欠ける。

 恐らくだが、刀を用いる流派の中でも通常攻撃に関しては攻撃力が平凡なのだろう。

 これは秋月夢想流の時から薄々感じていた事で、極力技を用いて戦ってきた。

 将来的に通常攻撃の強化も考えないといけないかも知れない。


 当の賞金首はと言うと怯ませる事には成功したが、大したダメージではないという事が相手の表情からも分る。

 「これは勝てる」と思ったかどうか分らないが、厭らしく表情を歪めながらもう一度攻撃して来た。

 

『弐式抜刀術』


 大きく剣を振りかぶった所を下から上への抜刀術で一閃する。

 俺の剣閃を認識すら出来ず、厭らしい表情のまま後ろへ倒れた。


「シドレ!」


 仲間と思しき賞金首が入れ替わる様に俺の前に立ち塞がる。


「ちっ、ダメか。

てめぇは……、アキラ=ツキモリだな?」

「…………人違いです」


 もう俺はツキモリ姓じゃないもんねぇ……と、冗談は置いといて、誰だこいつ?


「いいや、違わねぇ~。てめぇはアキラ=ツキモリだ」


 確信してるなら確認するなよ。


「で、「オラァ」何の「うらぁ!」用?」


 コラッ、人の話に割り込まないでくれないか。

 空気の読まない二人の賞金首が左右から割り込み攻撃してくる。

 適当にあしらいつつ俺に用事があるらしい賞金首に答える。


「第三回武闘会だ」

「はぁ?」

「てめぇの卑怯な技で俺は優勝出来なかった……。全ててめぇの所為だ」


 ああ、つまり逆恨みですね。分ります。

 それに卑怯な技って何だろ。

 あの時、普通に戦っていただけなのだが……。

 それはともかく……。


「戦いましたっけ?」

「何だと!? 忘れたっていうのかっ!」

「ほんとに戦った?」


 俺は律儀にもあの大会の事を思い出しながら首を傾げる。

 ……激昂している所申し訳ないが本当に戦った記憶がない。

 というより戦った相手は覚えているし、賞金首などいなかったはずだ。


「「ぎゃははは」」


 先ほど割り込んで攻撃してきた二人の賞金首が大笑いしながら剣を構え俺の左右に立つ。

 後ろではジナが戦っているので後ろからの攻撃はなさそうだ。

 取り合えず、この三人に意識を向けておけば良いだろう。


「うるせぇ! ヨージ、ゼリス」

「で、メギド。こいつがお宝持ってるのか?」

「ああ」


 メギドと呼ばれた賞金首は、予備で右腰に差していた名剣・サン・ヴァンジャンスをチラリと見る。

 それに誘導される様にヨージとゼリスそして俺はサン・ヴァンジャンスを見た。


「これ?」


 俺は、名刀・桜吹雪・嵐山を一瞬で鞘に戻し、彼らが言うお宝である名剣・サン・ヴァンジャンスを鞘から抜く。

 第三回武闘会の個人の部優勝商品だ。

 鞘から抜かれたサン・ヴァンジャンスは禍々しい装飾と漆黒に近い黒いオーラが刀身を纏っている。

 よく見ると刀身とオーラに、悲痛な表情の人の顔らしい模様が浮かんでは消えを繰り返している。


「「「ヒィッ」」」


 三人は短い悲鳴と共に半歩後退した。

 彼らの視線は剣と俺の顔を交互に見ている。

 心なしか顔が青い。


「ほ、本当に、これが、お宝なの、か?」

「そ、その筈だ」

「こ、これは要らないんじゃね?」


 彼らにはどう見えているのだろう。

 どう見ても剣だけでなく俺の顔を見て引いている様にも見える。

 あ、確か魅力-100%みたいなのが付いていた気がする。

 ブサイクに見えるのか、それ以外例えば人外とか悪魔の様に見えているのだろうか。

 まぁ、それは良いとして、まだまだ敵はいるのだしこの三人ばかり相手にする必要もないだろう。


「ところで、君が言う卑怯な技ってこんなのかな?」

『壱式抜刀術』


 俺は、名剣・サン・ヴァンジャンスを鞘に戻すと同時に剣を振り抜く。

 ”なんちゃって”抜刀術だ。

 本来は抜刀術になる訳もない攻撃方法なのだが、システム補正と流派補正のお陰で抜刀術の様な攻撃となった。

 彼らが半歩下がっていたとは言え、一歩踏み出した上での抜刀術は彼ら三人を攻撃範囲に入れるのは容易かった。

 と言うより、腰が引けていた三人は全く反応出来ずまともに喰らってしまった様だ。

 さらに怨霊を纏っているかの様に見えない事もない闇属性を纏った鎌鼬が彼ら三人を飲み込んだ。

 闇が消え彼ら三人が再び姿を現すがすでに生気はなく、糸が切れた人形の様に力なく倒れた。

 闇属性の鎌鼬の効果には、(弱点属性が闇属性以外の相手は)直接ダメージというものがないのだが、状態異常の悪化と恐怖・混乱・暗闇効果がある。

 が、今回は剣で出来たダメージが致命傷の様だ。

 多少は、出血と大出血効果の悪化によるところもあるだろうが。


 さて、三人を殺った後も現在進行形で賞金首を狩っている訳だが、何故こいつらが俺らを待ち伏せしていたか何となく分った気がする。

 簡単に言えば”追い剥ぎ””盗賊””泥棒”言い方は色々あるが、俺達魔王攻略組の装備品が目的だったという訳だ。

 

 賞金首の中でもレッドネームと呼ばれている犯罪者は、街に出入りする事が基本的に出来ない。

 つまり、NPC及びPC商店の利用が出来ない訳だ。

 では、彼らはどうやって装備の更新をしているかと言うとPCやNPCから奪っている。

 奪う以外にも手段は存在する。

 レッドネームの職人に依頼するのが、一番安全ではあるがほとんどいないと思って良い。

 次に商店から盗んだりスリで掠め取ったりなのだが、その場合は街に入らなければならないリスクが存在する。

 夜中にこっそり騎士の目を盗んで街に入り込むなんて、早々出来やしない。

 まずは、低レベルプレイヤーは無理だ。

 必然的に高レベルプレイヤーに限られてしまう。

 で、消去法で残ったのが街の外にいるプレイヤーを襲って奪うという方法だ。

 E/Oでは、レベル=プレイヤーの強さという訳ではなく、±10程度なら強さに違いはあまりない。

 そして、レベル差がかなり有るからといってダメージが0になる事もない。

 つまり、数に物を言わせて襲えば例え魔王攻略組と言えど何とでもなる。


 実際、彼らは俺ら連合より多い人数を集めた様だ。

 さっきから戦っていて気付いたが最初にクロイツが言った”六十人の二倍”よりも多いと感じた。

 とは言え、それは旧連合の人数より多いというだけで、新連合の人数よりは少ない。

 大部分の賞金首の装備が、俺らよりもショボいと考えると新連合よりも人数が少ないのはどうあっても勝ち目がないと言わざる得ない。

 とすると彼らは、旧連合時の人数に合わせて、何時来るか分らない俺らを一週間以上この辺に潜伏し待ち伏せしていたと思われる。


 そして、未だ彼らはそれに気付いていない。

 まだ、旧連合の二クランとしか戦闘していないからだ。

 が、それももうすぐ終わるだろう。

 そろそろ『百槍傭兵団』が合流する時間だ。


◆◆◆


 『全員、構え。突撃!!』


 この喧騒の中、俺達が来た方向の森の奥より一人の男性の声が聞こえた。

 それと同時に男女数十人の雄叫びが次第に大きくなってくる。

 『百槍傭兵団』マスター、クリフォード=エドワーズさん率いる槍使い六十名弱の集団だ。

 彼らは、統一された鎧と顔上半分が隠れる鉄仮面を装備している。

 集団で突撃された際の心情的ダメージは結構あるのではないかと思う。


 すでに俺達二つのクランで賞金首集団の四分の一ほど削っていた為、これで彼らの人数的アドバンテージは完全になくなった。

 今からは殲滅戦だ。

 

※第三回武闘会ルール及び概要

・大会期間中は、賞金首だろうと街へ自由に出入り出来る。

ただし、期間中に少しでも犯罪的な行動を起こした場合は、即刻逮捕投獄される。(期間中、街を警護している騎士が増員されている)

・武器および魔法の制限はなし。

・試合時の対戦者死亡はお咎めなし(即効で法術師による蘇生がある為)

・個人の部、タッグの部、少人数PTの部の三つあり。

・予選バトルロイヤル⇒本戦五戦(内、準々決勝・準決勝・決勝含む)

・優勝者(優勝商品・優勝賞金・開催国の好感度と信頼度上昇・名声)

・準優勝者(参加賞・準優勝賞金・開催国の好感度と信頼度上昇・名声)

・参加者(参加賞・開催国の好感度と信頼度微上昇・名声)

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