第69話・結成!大連合
説明回に近い感じとなります。
俺が王都シドレードに戻ってから四日後、霊峰グレイブール及びタスマンドラ原生林へ行っていた面子が戻ってきた。
昼飯を一緒に食べた後、戻ってきた今日と明日は休養日として疲れを落とす為に解散となる。
しかし、俺はアヤカに用があった為、呼び止めアヤカ達がいなかった数日の事を報告として話す。
◆◆◆
死に戻り『海犬亭』へ帰った俺・ジナ・マティアスさんの三人は、相変わらず書物を読みながら待機していたヴィルヘルムさんと合流した。
そして、死に戻りしたと説明した後、霊峰グレイブルーについて色々聞かれた為、説明していた所に『神盾騎士団』からの使者が来た。
何でもレイドに新しくクランが参加するので明日顔合わせをするそうで、俺ら『深緑』にも出席する様にとの事だった。
しかし、マスターと多数のメンバー不在の事から一度断ったのだが、顔合わせだけというので仕方なしにヴィルヘルムさんと俺が参加する事になった。
「ふむふむ」
『神盾騎士団』のクランホームには、既存のレイドメンバーである『神盾騎士団』『龍咆傭兵団』そして『深緑の傭兵団』に加え新たに五つのクランが集結していた。
各クラン三名、『深緑』だけ二名が参加し総勢二十三名が円卓を囲い顔合わせをする事になった。
『黒獅子騎士団』ここフィラシェット王国で活動中のクランで、マスターであるレオン=シュヴァルツを筆頭とした少数精鋭の集団だ。
クランスキルは、【フェイス】(主にクラン全体に影響するバフスキルを習得)を中心に上げているらしい。
マスターのレオンもそうなのだがサブマスターのレイラさん、ミランダさんは、全身黒尽くめの防具を装備している事から黒がクランのカラーだと思われる。
続いて、『百槍傭兵団』、ハイランド王国を拠点に持つクラン。
マスターであるクリフォード=エドワーズを筆頭にした槍使いの集団だ。
顔合わせだというのにマスターの目の前で所属しているメンバーを勧誘したり、チャラ男っぽい風貌と喋り方など個人的に気に食わない所が多い。
所属人数は六十名弱、百名になるまで募集しているそうだ。
所属しているプレイヤーが全員槍使いという事もあり、統一された鎧と仮面を着けているらしい。
この二つのクランは、ガチムチ連合とは別口で参加したクランだ。
そして、全体的に見て騎士団の絶対数は、傭兵団に比べて圧倒的に少ないのだが、『黒獅子』はフィラショット王国で『神盾』と並んで”まとも”に活動している騎士のクランらしい。
『百槍』に関して俺は知らなかったが、『龍咆』のマスターは知っていたのでそこそこ有名なのだと思う。
「ふ~ん。私は全部知らなかったけどね」
「アヤカは知らな過ぎるんだと思うよ」
次はガチムチ連合の三クラン。
俺の初フレンドでもあるガチムチ連合発起人アイ=ウェーオさん率いる『脳筋傭兵団』は、ブリディアン王国を拠点にして活動している。
ガチムチプレイヤーと筋肉好きプレイヤーが集まるカオスなクランだ。
だから、ガチムチと言っても前衛ばかりではなく後衛も混ざっているし、ガチムチを除いた筋肉好きプレイヤーがクランの半数を占めている。
『深緑』とは真逆でガチ前衛・魔術師・法術師で構成されていて、遊撃人員や精霊使いが少ない。
そして、バルザック=カルナスさんが率いる『獣将傭兵団』、獣人のみで構成されたクランで獣化による瞬間火力はかなり期待出来る。
全種族中獣人は最も寿命が短いとされているが、その分成長速度が一番速いので八つのクラン中平均レベルが一番高いと思われる。
まぁ、全員肉体派というか前衛だらけなのは言うまでもない。
最後に、アレクセイ=ヴォルコフ『ヴォルコフ傭兵団』は、アースガントのみで構成されたクランで大型武器による大火力が期待出来る。
アースガントの強みは、以外の種族では決して扱えない様な武器(個人携帯兵器)を扱えるところにある。
総勢十五名らしいが、アースガントを選択するプレイヤーが少ない中、一つのクランによくこれだけの人数を集められたものだ。
マスターのアレクセイが必要最低限の事しか喋らなかったので詳しい事はさっぱりだ。
「……とまぁ、こんな感じかな?」
「なんかいうか……、こう……色モノだよね」
「あ、うん」
既存のクランが普通だっただけに、そう思うのは仕方がないだろうな。
ぶっちゃけ、俺もそう思ったし……。
「さて、一応経緯の説明も終わった事だし、この後どうする?」
「私は、ちょっと『神盾』に挨拶に行って来るわ」
アヤカはそう言うと席を立ち『海犬亭』から出て行った。
残された俺は、回収して貰った装備を受け取りにクロイツの部屋へ向かう。
◆◆◆
「クロイツ入るよ」
酒場から二階に上がり、クロイツが借りている部屋の扉をノックし中へ入る。
「ぁ~、今整理中なんで少し待ってくれないか?」
「ん、別に構わない」
部屋に入るとクロイツは、床に座り込みザックに入っていたアイテムを取り出し整理していた。
俺はそれを横目で見ながらベッドに座り整理が終わるのを待つ。
「二人とも無事に帰れたみたいで良かったよ」
「ああ」
「モニカさんは?」
「ジナの奴とマティアスさんに装備渡しに行っていた筈……っと、あったあった」
ザックから遺品アイテム(持ち運びしやすい様コンパクトに纏められているが総重量はそのまま)を取り出し俺の足元へ置く。
置かれたアイテムに手を添えるとエフェクト共に消え、背中にザックが強制装備されると共にそれ以外のアイテム一式が中に収納される。
そして、背中からザックを外し中へ手を突っ込みアイテムを確認する。
「ん、確かに」
間違いなく死に戻り直前の装備だ。
「ありがと」
軽く礼を言った後、部屋から出ようとするとクロイツが俺の右手を掴んだ。
「?」
「心配したんだからな」
「ん? ああ。ごめん」
謝ったものの、ノベルやアニメである様なデスゲームではないので、リアルに死ぬ訳ではない。
戦闘不能になったら最後に立ち寄った教会へ戻るだけなので心配される様な事は何もない筈だ。
まぁ、でもワイバーンから逃げ切れたのに力尽きたのは残念だった。
強いて言うならば、死に戻り直前、無駄にポーションを使わせてしまったのは、すまないと思っている。
「俺達は夫婦だよな?」
「まぁ、一応ね」
ゲーム内ではそうだな。
「だったら……」
そう言うと、クロイツがいきなり俺の腕を引っ張る。
バランスを崩した俺は”不本意”ながらクロイツの胸へ飛び込む形となった。
そして、クロイツは、優しく俺を抱きしめる。
突然だった事もあるし、クロイツの両腕にすっぽりと抱かれているので逃れる事が出来そうにない。
「本当に心配したんだからな」
俺の耳元で優しく囁く。
ごめん。中身が野郎なもんで、寒気しか感じない。
「わ、分った。心配させてごめんって」
俺はクロイツから苦れる為に身を捩るなどして逃れようとするが逃してくれそうにない。
何か厭な予感がする。
「アキラ……」
何、目を閉じて顔を寄せてきてんだ!?
「ちょっ……調子に……調子に乗るな!!」
唯一動く頭を振りかぶりクロイツが寄せてきた顔に向けて頭突きをかます。
「いッ!」
なかなかのクリーンヒット、手(頭?)応えを感じた。
俺の身体を拘束していたクロイツの両腕が緩む。
その機を逃さず、緩んだと同時に渾身の右ボディブローを鳩尾に叩き込んでやった。
「ぐはっ!?」
クロイツは鳩尾を手で抑えながら数歩後ろへ退く。
完全に頭に来ていた俺は、追撃の手を緩めず、がら空きとなった顎を思いっきり蹴り上げた。
「がッ!?」
ノックダウン。
クロイツは、仰向けに倒れた。
「頭を冷やせ。バカ」
「ア、アキラ~」
情けない表情で俺の名前を呼ぶクロイツを無視し、早々に部屋を出た。
「主殿!」
そして、何時ものお約束の如く、般若の面相でクロイツの部屋を睨むジナが立っていた。
「ジ、ジナ!?」
俺と視線が合うと中々の勢いで胸に飛び込んでくる。
あ~癒される~……じゃなくて、何でまたジナがここにいるんだ。
「野獣、殺処分?」
「コロサナイ、コロサナイ」
懐から忍者刀を取り出し、今にもクロイツの部屋へ突入しそうなジナを宥め、そのまま俺の部屋へお持ち帰りした。
その後、ジナが満足するまでログアウト出来なかったのは言うまでもない。
※説明回のつもりが変な方向へ行きましたが、E/Oには恋愛要素はありません。
・顔合わせ参加者一覧・
『神盾騎士団』
《マスター》トリスタン=グレンデス、ヒューマLv115
《サブマスター》アリアナ=コルネイユ、獣人・豹猫族Lv117
《サブマスター》ルクス=マルサス、ヒューマLv109
『龍咆傭兵団』
《マスター》ラウリ=ヒューティア、アキレウスLv111
《サブマスター》マリネ=マリオン。ハーフエルフLv92
《サブマスター》ディミトリ=ダウランド、ヒューガントLv96
『深緑の傭兵団』
《サブマスター》ヴィルヘルム=トーラス、ハイエルフLv42
《メンバー》アキラ=フェアフィールド、ヒューマLv114
『黒獅子騎士団』
《マスター》レオン=シュヴァルツ、ヒューマLv113
《サブマスター》レイラ=ライラ、ダークエルフLv93
《サブマスター》ミランダ=フランチェスコ、ヒューマLv103
『百槍傭兵団』
《マスター》クリフォード=エドワーズ、ヒューマLv111
《サブマスター》アクバル=メギストス、アキレウスLv113
《サブマスター》フリーデ=アイゲン、エルフLv91
『脳筋傭兵団』
《マスター》アイ=ウェーオ、ヒューマLv117
《サブマスター》ブラッドレイ=ブラッド、ヴァンパイアLv98
《サブマスター》レジーナ=キンニクスキー、アマゾネスLv117
『獣将傭兵団』
《マスター》バルザック=カルナス、獣人・獅子族Lv120
《サブマスター》シバ=カニス、獣人・狼犬族Lv118
《サブマスター》マイアス=マライアス、獣人・鬼熊族Lv120
『ヴォルコフ傭兵団』
《マスター》アレクセイ=ヴォルコフ、アースガントLv99
《サブマスター》リュート=カラール、アースガントLv96
《サブマスター》アルジェント=ホックス、アースガントLv92




