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E/O  作者: たま。
oβ・フレンド
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第58話・リンクイーター

ヴィルヘルムさんが、戦矛の『封神具』を大きく後ろへ振り被る。

それとほぼ同時に俺は柄に手を添え何時でも同時攻撃が出来る様に構える。

ドラゴンが大口を開けてヴィルヘルムさんを喰らおうとした瞬間、戦矛が豪快に振り払われた。

属性は雷だろうか……蒼い火花を発しながら戦矛の刃が大きな軌跡と共にドラゴンの首を縦に切り裂いていく。

普通ならこれで絶命してもおかしくは無いだろう。

しかし、俺が追撃する前にその傷さえ瞬時に回復させる。

信じ難い再生能力だ。


《ギャャャァァァァァオオオオ》


寸分狂わず同時に攻撃しないと意味が無い様だ。


ヴィルヘルムさんは、ドラゴンが一瞬で再生した事に驚く事なく連続で攻撃していく。

もう破れかぶれだ。

俺はドラゴンの背に向けて抜刀術で出来るだけ彼の攻撃に合わす様に連続で攻撃していく。

攻撃速度は俺の方が速いので所々攻撃のタイミングが一致した。

しかし、相変わらず一瞬で傷を再生しており、再生速度の低下が見られない。


が、ここで異変に気付いた。

ヴィルヘルムさんの攻撃で出来た傷は一瞬で回復しているが、俺の攻撃で出来た傷は一瞬ではない。

むしろ、カラミティドラゴン本来の再生速度と言った方が良いだろう。

まぁ、それでも他のMobに比べてかなり早い速度ではあるのだけど……。

はっきり言って、俺の攻撃が鱗を切り裂く程度なのに、ヴィルヘルムさんの攻撃は鱗を切り裂き、その先の肉や骨にも達する攻撃だ。

それにも関わらず俺の攻撃で出来た傷は治りが遅い。

どういう事だ……と、考えていたらある事を思い出す。


それは……、この『封神具』神刀・天叢雲の効果だ。

俺は攻撃を続けながらアイテムの効果を再度確認し直す。



《Name》神刀・天叢雲あまのむらくも

《User》アキラ=ツキモリ

《Rank》Myth

《Level》封神具修練

《Base》太刀

《Effect》抜刀術攻撃速度+180%、リンクブレイカー、リンクイーター、流派スキル一時的にMAX、メインクエスト及びオラクルクエスト限定

《Detail》セレスティア・セラフィム・ネフィリム専用武器。

封神具・村雲の最終形態で新たにリンクイーターが追加されている。

リンクブレイカーで関連付けを無効化されたオブジェクトを吸収し、一時的に取り込む事が出来る。

抜刀術攻撃速度がさらに+50%され、流派スキルも一時的にだがレベルMAXとなる。

火力最大モード時、相手に付与されている効果分x倍のダメージを与える。

元から付いている効果分の計算に含まれる。

別名・神罰モードまたは垢バンモードと呼ばれる形態でゲームシステムから逸脱した違反者に対して本来の姿を晒してまでGMが使う最終手段である。

また、これにより死亡したキャラのアカウントデータは抹消される。


リンクブレイカー……リンクイーター……これだな。

間違いない。

つまり、この天叢雲でディア・カラミティドラゴンへ傷を付けた箇所の『超再生力』を奪ったという事か……。

だけど、本来の再生能力を残っている……という事は、本来ない筈のスキルのみを対象としている事だな。

ならば、女神の祝福で追加された箇所を攻撃すれば、それに伴って追加された『スキル』能力を奪えるという事だ。


って、ちょっと待てよ。

奪ったという事は、俺の所持スキルに『超再生力』が追加されているという事じゃないのか?

どれどれ……、ああ、あったあった。

『超再生』という名称で追加されている。

効果は、《女神の祝福により致命傷も瞬時に再生させる常識を超越した再生能力》か……。


さて、FカラミティドラゴンとDカラミティドラゴンの違う場所はどこだ。

俺は、攻撃を一時中断しドラゴンの全身を眺める。

しばらくして、2箇所違う場所を発見する。

と言っても、Fカラミティドラゴンの全体像も完璧に覚えている訳ではないので自信がない。

サイズや色の違いはこの際置いておこう。


取り合えず、攻撃をして見よう。

1箇所目は、両腕の手首付近だ。

そこには、主翼と比べてかなり小さめの翼が生えている。

先ほどから眺めている限り、動作範囲も大きくないので補助翼……戦闘機でいうカナード翼に近い役割かも知れない。

もう1箇所は、尾の中間付近だ。

ここにも小さめの翼が生えている。

両腕の翼よりも大きめだけど、こちらも動作範囲は大きくは無い。

つまり、尾翼…なのだろう。


大きくなった体躯を支える為に翼が追加されたという事だ。

ばらば、この翼を奪えばバランスを崩し、行動を大きく阻害する事が出来そうだ。


俺はドラゴンの攻撃を避けながら懐へ飛び、まずは両腕の翼を斬りそのまま尾に向けて飛び尾翼も両断する。

予想が正解した様でドラゴンは大きくバランスを崩し地面へと落下していった。

それとほぼ同時に俺の両腕と両脚に小さな翼が1対ずつ追加される。


《ギャォン!?》


「どういう事だ?」


今まであらゆる攻撃も意に返さず微動だにしなかったドラゴンが、いきなり落下し為ヴィルヘルムさんが驚いた。

あまりにも衝撃的だったのだろう。

俺の身体に追加された翼には気付いていない。


地面に落下したドラゴンをジタバタと転げまわっている。

恐らく再度飛び立とうとしているのだろう。

しかし、翼を失っているので飛び立つ事が出来ない。


「この武器のお陰かな?」


俺は、ヴィルヘルムさんの横で天叢雲を鞘に納めながら答える。


「攻撃力はヴィルヘルムさんのに比べて大した事はないけど、相手のスキルを奪う能力が付いているんだ」

「奪う……のか?」

「と言っても、本来ない筈のスキルのみだけどね」

「なるほど……。確かに両腕と尾の翼はFカラミティドラゴンにはなかったな」

「ついでに言うと再生能力も奪っているみたいよ」


俺は超再生せずに傷が残ったままのドラゴンの背中を指差した。


「これは……」


ヴィルヘルムさんは何やら考え込む。

今だにドラゴンは地面で転げまわっているので時間はある。


「よし。君は出来る限りドラゴンの全身を切り刻んでくれ」

「ん?良いけど……」


切り刻むと言っても表面しか出来ないけどね。


「俺の相棒は、君の様に特殊な能力がない代わりに火力に特化しているんだ」

「ん。何となく分る」

「特に最大火力モードは桁が違う……。

が、溜め時間がとにかく長いので時間稼ぎと超再生させない為に全身を攻撃して貰いたい」

「了解」


つまり、最大火力モードというのは、ディバイン・パニッシャーの砲撃モードと似たものという事だな。

俺は天叢雲を鞘に納めたまま急降下しドラゴンの全身を嘗め回すように切り刻んでいく。

ドラゴンから奪取したカナード翼と尾翼が良い感じに機動性を上げてくれている。

これでディバイン・パニッシャーを持てば宇宙戦争が出来るかも知れないな。

まぁ、しないけど……。

天叢雲で出来た傷は超再生しない為、どんどんダメージが蓄積されていく。

流石のドラゴンでもこれはたまったものではない。


◆◆◆


さて、見える範囲は全て切り刻んだ。

しかし、地面との接触面が残っている。

どうしたものか。

どうにかこの巨体を打ち上げなければならない。

もしくは、ドラゴンが自発的に起き上がってくれると良いのだが、皮膚だけでなくあらゆる器官も切り刻んでいるのでしばらくは俺を認識すら出来ない。

主翼であるどでかい翼も虫食い状態で飛べる程の浮力を得る事が出来ない筈だ。


俺が現在持っているスキルでこの巨体を持ち上げる事が出来そうなのは……『神術』ぐらい。

となると、何が良いだろうか。

基本的に『神術』は『法術』の上位互換で、『法術』に攻撃魔法を充実させた感じだ。

むむむ、何が良いだろうか。


「あ」


確か補助魔法に結界を創るものがあった筈……。

スキルの『多重結界』は『法術』にある同名の魔法とほぼ同じ効果で対象は個人(詠唱者)のみだ。

しかし、『神術』の結界は『絶対聖域』と言い、幾重にも張っている訳ではないが絶対に破れる事のない広範囲結界だ。

ただし、張っている間はMPを消費し続けるが……。

まぁ、ネフィリムの間はMP切れの心配なんて必要ないけどな。

で、逆に言えば任意のタイミングで『結界』を張ったり消したり出来るという訳だ。


つまり、ドラゴンを持ち上げられそうな場所で一瞬だけ『絶対結界』を張り体躯を打ち上げる。

恐らく、それ程大きくは打ち上げる事が出来ないだろう。

しかし、グレゴリの力も『覚醒』させてやれば、『縮地法』との兼ね合いで切り刻む時間ぐらいは出来る筈だ。


「ん、それで行こう」


俺はドラゴンの腹部付近に飛来する。

腹部はなだらかな曲線になっているので体躯の下と言えなくもない場所がある。

まぁ、これはドラゴンの体が大きいからある訳だが……。


重心の真ん中あたりにまで移動し、スキル『覚醒』を使ってグレゴリの翼を出現させる。

ドラゴンから奪った翼を合わせると計4対の翼となる訳だが、もしかしたら未知のスピードが出るかも知れないな。


『我等が主神ガディウスの名の下に、例外なき不可侵の領域『絶対聖域デュー・アブソリュエール』』


俺の体を中心に不可視のバリアが一瞬にして円球状に肥大していき、巨大なドラゴンの体躯を持ち上げる。

いや、持ち上げたというより打ち上げた感じでバリアの頂点より3mほど浮き上がった。

この状態で『絶対聖域』を解く事で地上から大体8mほどの高さまで宙に浮いた状態となる。


『縮地法』


スキルで一気に中へ潜り込み最初の一撃を与える。

『急制動』で慣性を殺しまた別の場所を斬る。

これを何回も繰り返し残り面積の3分の1を切り刻むのに成功する。

この間大体2秒ほどでドラゴンの体躯は最初より2mほど落ちてきている。

ここから重力の関係上落下スピードが上がであろう事から間髪置かずに残りの箇所も切り刻みに行った。


ドラゴンが地面に落下する頃には切り刻む作業も終了し、一旦その場を離れヴィルヘルムさんの近くまで飛んで行く。


「こっちは終わった」

「ああ。こちらももうすぐ完了する」


『超再生』がなくても流石ドラゴンというべきか最初に斬った傷口が治りかけている。

潰した両目もすでに回復し強烈な眼力で俺とヴィルヘルムさんを睨んでいた。

喉も突き刺して潰していたのだが、大分治っている様で咆哮はしないまでも喉を鳴らす事は出来る様だ。

流石に斬り落とした箇所は治っていないので飛行は出来ないだろう。


「よし。君は後ろに下がってくれ」

「ん」


ヴィルヘルムさんの後方へ20mほど余裕のある距離まで飛び退く。

改めて見るまで全然気付かなかったが、彼の『封神具』が最初に見た形状から大分変化をしている。

恐らくこれが最大火力モードなのだろう。

通常形態時、戦矛の刃は大体1mぐらいの大きさだったが、現在は2m近くにまで肥大している。

また、刃は常に振動しており、雷のエフェクトも放出している。

そして、必要なのかも不明なギミックでゴテゴテしており、謎の排魔口からディバイン・パニッシャーの様に天使の羽状のエフェクトを放出していた。


「はっ!」


ヴィルヘルムさんは、気合と共に巨大な『封神具』を一気に振り下ろした。

軽く振り下ろされた様にも見えたが、それとほぼ同時に《ドォン》とど派手な爆発音と共に前方180度の風景が一瞬にして吹き飛んだ。


吹き飛んだ――この表現は別に大袈裟ではない。

本当に吹き飛んだのだ。

ドラゴンは言わずもがな一瞬にして塵となり跡形もない。

そして、ドラゴンがいた場所……いや、前方180度に広がる全ての地面が最大で数十mほどの深さで抉れている。

それだけではなく前方180度に広がる空から一切の雲が消えていた。

まぁ、最初どのくらいの雲があったが忘れたが、晴天の青空という訳ではなかったのは覚えている。

最後にクラン戦会場の一番端と思われる場所のポリゴンが切り裂かれており見えてはいけない所が見えていた。


《Name》神矛・ヴァニシングロア

《User》ヴィルヘルム=トーラス

《Rank》Myth

《Level》封神具修練

《Base》戦矛

《Effect》結界破壊、光・雷属性付与エフェクトダメージ有り(武器攻撃力30%分)、火力最大モード…火力放射型、無敵設定無効、物理攻撃力+1000%、溜め時間3分、クールタイム+500%、

メインクエスト及びオラクルクエスト限定

《Detail》目だった特殊能力が付与されてはいないが、単純な火力だけでも封神具随一と言っても過言ではないほどに高火力の武器となっている。

封神具・ヴァニシングロアの最終形態で火力最大モードにする事が出来る。

火力最大モード時、斬撃から放射型に変更されるだけでなく、無敵設定がされているオブジェクトさえ破壊せしめる。

物理攻撃力も大幅に向上するが、放出前の溜め時間と放出後のクールタイムが戦闘をする上では非常に長く設定されている。

別名・神罰モードまたは垢バンモードと呼ばれる形態でゲームシステムから逸脱した違反者に対して本来の姿を晒してまでGMが使う最終手段である。

また、これにより死亡したキャラのアカウントデータは抹消される。


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