閑話7・クラン戦実況Ⅰ
長くなったので2話に分けます。
少し特殊な書き方をしています。
「」と地の文は、実況アナウンサーの言葉で『』LIVE映像を通した言葉となります。
5/12…傭兵団の名称を略称に変更
5/16…2回以降の人名を名前のみに変更
いよいよ、第一回クラン戦inサウスアルカディア王国が始まります。
ここはその内の1つである第二会場『深緑の傭兵団』VS『黒犬傭兵団』の実況をしたいと思います。
誠に勝手ながら以降、『深緑』及び『黒犬』と略称で呼ばせて頂きます。
そして、私、OS社広報課アラン=ビーチャムが実況をお送りします。
まずは、リスポーンポイントを確認しましょう。
『黒犬』の方が2名多いので両クランは10ポイントで始まる様ですね。
フラッグの奪取がどうしても出来ない場合でも、このリスポーンポイントをゼロにすると勝利する事が出来ます。
LIVE映像なのですが、各クラン各チームの代表者の視点へとカメラを切り替える事が出来、臨場感たっぷりの実況をお送り出来ます。
第一エリア『黒犬』は2名、第二エリア『深緑』は3名の代表者がいますので全体カメラを合わせると計6つある事になります。
当然ですが、会場の皆様には全体カメラを見る必要はありませんので、5つの映像のみとなります。
また、私がピックアップした選手カメラに関してはより大きい映像となります。
おっと、そろそろ始まる様ですね。
それでは、会場そして視聴者の皆様ご一緒に……。
「5・4・3・2・1・0!!」
それでは、全体を…っと、いえ待ってください。
一際速い選手がいますね。
『深緑』所属のアキラ=ツキモリ選手、登録情報では剣士という事になっています。
それにしても速い。
全てのスキルを把握していませんので何か分りませんが、どうも移動系スキルを利用しながら走っている様ですね。
ちょっと、彼女の視点に切り替えてみましょう。
◆◆◆
『…よっと……』
他の選手がまだ自陣フィールドにも関わらず、彼女は森林フィールドに入りましたね。
これはすごい。
木々を縦横無尽に避けながら速度を落とさず駆け抜けています。
これもスキルが関係しているのでしょうかね。
この速さだと慣性の力も結構掛かる筈なのですが……。
『はっ…はっ…はっ……』
森林フィールドにはドラゴン以外にも様々なMobが配置されていますが、彼女は一切攻撃を行っていませんね。
Mobの配置状況によっては、木々の枝をも利用し移動しています。
おっと、ドラゴンがいますね。
『…………』
これまで速度を落とさなかった彼女の動きが完全に止まりました。
流石に、ドラゴンが近くにいると慎重にならざる得ないでしょう。
今回、第二会場に配置されたのは、フォレストオースドラゴンでモナーク級の飛龍です。
対策を取られない為に、出場者には直前までドラゴンの情報は知らせておりません。
また、各会場で配置されているドラゴンが違います。
ドラゴンは、彼女に気付いていないみたいですね。
遠回りして先へ進むようです。
それでは違う視点へ移してみましょう。
◆◆◆
こちらは…『黒犬』所属のラファエル=ブッフバルト選手ですね。
登録情報では、……これは珍しい銃使いですね。
『第六感』持ちプレイヤーなのでしょうか。
わが社で把握している『第六感』持ちは30人ほどです。
データベースへアクセス出来れば分るのですが…流石に無理ですね。
おっと、【気配察知】のスキルを使った様です。
遠いですが、ハイライトで相手選手が見えますね。
かなりスキルレベルが高くないとこういった見え方はしないですよ。
『みんなよく聞け。相手アタッカーは、前方500m付近を進んでいる。
もうすぐ、交戦距離になるだろう』
『了解』
『それとローランド、もうすぐ交戦状態になるとディフェンス組に連絡してくれ』
『了解』
こういった視線が遮られる場所で、先に相手を見付けられたのはかなり有利と言えるでしょう。
先ほどのアキラ選手は、……彼の視線の外だったみたいですね。
流石に自分より後方に相手選手がいるとは思いもしないでしょうからね。
これがどういった結果になるか楽しみです。
ローランド選手は、魔導電話でディフェンスチームへ連絡を取っている様です。
今回、クラン戦フィールド限定で他プレイヤーとの連絡が許可されています。
ついでですので、そのディフェンスチームの視点に切り替えてみましょう。
◆◆◆
『はい…はい…了解です』
通話が終わった様ですね。
『みんな、アタッカーの方がそろそろ交戦に入るそうよ』
えーと、ローランド選手と連絡を取っていたのがミーシャ=スエルノフ選手ですね。
登録情報では、法術師ですね。
『黒犬』の初期フィールドは、荒地となっています。
少し大き目の岩が点在しており、攻めるにも守るにも有効な活用が出来るでしょう。
逆に『深緑』の初期フィールドは草原となっており、こちらは背が低く幹の太い木が点在しています。
岩と同じ様に有効活用が期待されますね。
ただ、オブジェクトの耐久力としては岩に劣りますので使い様によっては足元を掬われるかもしれません。
『黒犬』は半数をディフェンサーチームに割いていますが、基本的に攻撃力や防御力の高いプレイヤーを配置しています。
ただ、1人だけアタッカーからディフェンサーに転向されていますね。
何かあったのでしょうか。
法術師のミーシャ選手を最後方に配置し残りのメンバーがフラッグを取り囲んだ状態です。
並大抵の事では奪うのが難しいでしょうね。
『……うぷっ……俺的には早く奪って早く終わらせて来て欲しいよ……』
あー、この選手ですね。
アタッカーからディフェンサーに転向したのは……。
えーと、名前はキース=ロイアス選手で登録情報では”軽剣士”となっています。
まぁ、読んで字のごとく恐らく軽装の剣士なのでしょうか。
基本的に本大会で登録されている役割は自称ですので、本当のところは私でも知りません。
アキラ選手と同系統のプレイスタイルと見て良いでしょう。
この配置転向がどういった結果になるのか楽しみです。
それでは、そろそろアタッカーチーム同士の戦闘を見てみましょう。
えーと、どちらにしましょうか。
そうですね……。
『深緑』アヤカ=ツキカゲ選手の視点へ移りましょう。
◆◆◆
っと、切り替わりましたね。
視点が高いですね。
なるほど、アヤカ選手は木の枝の上に陣取っている様ですね。
見晴らしの良さと【気配察知】の使用で相手の動きが丸分りになっています。
『みんな、分ってると思うけど誰一人ここを通さない様にね。
最悪、相討ちでも良いわ。持ち堪えて!!』
『了解』
法術師のヘンリック=アイスラー選手を最後尾に配置し、その上にアヤカ選手、それ以外の選手は前方へ配置していますね。
対する『黒犬』は、前方4人後方1人で扇状に配置しています。
法術師の配置が『深緑』と『黒犬』では逆の配置となっています。
アタッカーチームの人数では『黒犬』の方が有利ですが、『深緑』には法術師が配置されています。
私としては、法術師のいる方が有利に思えなくもないですが、どういった結果になるのでしょうか。
先ほど、アヤカ選手の発言で”相討ち”とありましたが、人数差によりリスポーンポイントが2つ多い事からの発言と思われます。
『深緑』は2回戦闘不能になっても復活出来ます。
逆に『黒犬』は戦闘不能になる毎にフィールドから選手がいなくなっていきます。
『クロイツくん、エミリアさん。
前方30m、5m間隔で敵プレイヤーが近付いているわ。
囲まれない様に注意して!』
『『了解』』
クロイツ=フェアフィールド選手、登録情報では格闘家となっていますね。
ですが、彼の太腿に二挺のソードオフショットガンが見えますね。
そして、エミリア=フェルト選手、登録情報では剣士となっています。
ただし、彼女の両腕には1本ずつ剣が握られていますね。
この2人、一癖も二癖もありそうな気がして中々面白そうです。
さぁ、どう戦うのか見物です。
アイコンタクトというべきなのでしょうか、一瞬向き合ったと思われた瞬間お二人が飛び出しましたね。
囲まれる前に先手を打ったというべきでしょうか。
両端の選手に対して同時に駆け出しました。
アキラ選手ほどではありませんが、中々速い動きです。
『黒犬』の選手達も黙って迎え討つ訳ではありません。
彼らも駆け出しましたね。
クロイツ選手を相手にするのは『黒犬』所属のローランド=グリトニス選手とマキシム=ジーニアス選手です。
登録情報では、ローランド選手が短槍・盾の槍使いでマキシム選手が二刀流小太刀の剣士ですね。
やはり、同じ役割名でも実際見てみると全然違いますね。
このお二人も癖があり面白いです。
そして、エミリア選手を相手にするのは、ミレニア=ユリセス選手とイゴール=ゴルブノフ選手です。
登録情報では、ミレニア選手が格闘家でイゴール選手が湾曲刀の剣士ですね。
この辺の地域では、湾曲刀の流派はなかった筈なので他大陸から来られた方でしょうかね。
私も見るのは初めてなので楽しみです。
さぁ、そろそろ交戦です。
まだ続き書けていません。
明日、投稿出来たら良いなぁ。




