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E/O  作者: たま。
oβ・フレンド
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第55話・速攻そして帰還

短めです。

後方で法術師が何かを詠唱していた様だが、全速力で走っていた俺に届く筈もなく、もうすぐ森林フィールドに入る。

さっき、アレの同志と戦っている際、法術師がアタッカーに連絡をしていた様だし取り返しに来る可能性がある。

素直に地上を走っていては、すぐに見付かるのも必至だ。

『縮地法』で勢いを付け木の根を蹴り三角跳びの要領で反対側の木の幹を蹴り別の木の枝に飛び乗る。


「さて、どのルートで帰るか……」


そこが問題だ。

相手クランは必死に探しているだろうし、恐らく…いや間違いなく【気配察知】のスキルを活用している筈だ。

もしかしたら、すでに発見されているかも知れない。

どうせ、フラッグを自陣に持ち帰れば俺達の勝ちが確定し待機エリアか会場外へ転送される筈だ。

ならば、ちょっとドラゴンに障害物の役割をして貰おうかな。

そうと決まれば、アヤカに連絡しよう。

ドラゴンに向けて木々を飛び移りながら魔導電話でアヤカへ連絡する。

普段、魔導電話は持っていないが今大会に限って一時的に借りている。


「アヤカ、ちょっと良い?」

『ん、なに?ちょっと忙しいんだけど……』

「フラッグを奪った」

『え、ほんと?』

「ああ。それで今から帰還する。

恐らく、相手クランは気付いているので、簡単には戻れないと思う。

そこでドラゴンをけしかけ様と思うんだけど……」

『はぁ、ドラゴンって正気なの!? アキラ』

「ああ。だから、巻き込まれない様にしてくれよ」

『え、ちょ』


アヤカの返事を待たずに魔導電話を切る。

そして、再び木々の上を駆け出していく。

今回は、迂回せずにまっすぐのコースだ。

相手クランに気付かれていたとしても、真正面から当たる事はないだろう。


しばらく、駆けていると大きく開いた場所に出る。

その中央には巨大なドラゴンが丸まって寝ている。

行きの時と体勢は変わっていない。

巨体ゆえ遠いにも関わらず低音の寝息が聞こえる。


状況を把握する為に【気配察知】を使い周囲を見回す。

まだ、遠いとはいえハイライトで相手クランのアタッカーが俺を追っているのが分る。

もう少し惹き付けてからドラゴンを起こすとしますか。

アヤカ達は……と、ゆっくりではあるが自陣へ向けて後退しているな。


「よし、行くか…」


今いる木から2・3本後方の木へ飛び退き助走を着ける。

クラウチングスタート風に構え一気に前方へダッシュする。

そして、最後の枝で【縮地法】を使用し思いっきり枝を蹴りドラゴンへ向けてジャップした。

この時点でドラゴンは気付いていない。


ドラゴンの頭部を着地地点になる様にバランスを取ったり体勢を捻ったりして調整する。


そして――


俺は、ドラゴンの額に思いっきり着地した。

それと同時にドラゴンは目を覚まし、鎌首を上げながら鼓膜が破れるかも知れない程の咆哮をする。

ドラゴンが鎌首を上げた反動と同時に【縮地法】で跳び上がり自陣方面へ向かう。

森林フィールドへ再び戻ると同時にドラゴンの威圧感を感じながら俺は全速力で駆け出した。

木々を縦横無尽に避けながら駆けているとドラゴンの咆哮で恐慌状態だったMobと遭遇する。

しかし、Mobは俺を襲う事はせず、森林の外側を目指して逃げ出していた。


俺の背後ではドラゴンが羽ばたく音とドラゴンブレスによる攻撃の音が聞こえる。

フォレストオースドラゴンのドラゴンブレスは、風属性なので暴風による風圧と突風による切り裂きが特徴である。

完全にお怒りの様で、姿は見えないが確実に俺を追っているのが分る。

そして、相手クランのアタッカーが巻き添えを食っているのも画面中央に見えるリスポーンポイントの減少で確認出来た。


森林フィールドの切れ目と思われる光が前方にある木々の隙間から見える。

そして、前方に良い踏み台になりそうな岩も見える。


「いっけぇぇぇ!」


俺は岩に足を踏み出したと同時に【縮地法】を使い大きく前方へ跳ぶ。

数百メートル先に自陣エリアを確認、その数十メートル手前にアヤカ達が後退しているも確認出来た。

そして、俺は首だけを回し後ろを見る。

ドラゴンとの距離だが、草原フィールドもとい上空は何の障害物もないので森林フィールドの頃よりは確実に離していた。

これなら追いつかれる心配はない。


地面に着地すると同時にもう一度【縮地法】を使い一気に速度を上げて自陣へ駆けて行く。

途中、アヤカ達を追い抜き自陣へフラッグを置いた所でブザーの様な音が会場内に響き渡り試合は終了した。


◆◆◆


「お疲れ様でした。そして、第二回戦進出おめでとうございます」


俺達全員が無事に待機エリアに転送されると、待機していた法術師3人組が労いの言葉と相変わらず綺麗な会釈で出迎えた。

そして、この言葉で漸く俺達はクラン戦に勝利したのだと確信したのだった。


「勝った…の?」

「みたいだな」

「信じられへんわ……」

「しかも、こちらの戦闘不能者はゼロとは……奇跡ですね」

「ん…よかった」

「結構、頑張った」

「流石、俺のアキラだな」


抱き合ったり握手したりしてお互いを褒め合った。

クランとしては始めての活動という事だけでなく、集団戦闘で勝利した事は本当に嬉しかった。

とは言え、俺はフラッグ奪取を1人でやったので集団と言えるか微妙ではあるが……。

逆に考えれば、これは作戦勝ちというやつだろう。


「あの……そろそろ宜しいでしょうか?」

「あ、ごめんなさい」

「1回戦を見事勝利した『深緑の傭兵団』の皆様は、翌日の第2回戦に出場して頂きます。

えーと、第2回戦の相手は、……まだ決まっていない様ですね。

でも、開始時間は今日と同じですよ」

「はい、分りました」

「それでは、街へ帰還する為の魔法陣を用意していますので、そちらへ向かって下さい」


法術師の人が右手で誘導した先には、青白い魔法陣が展開していた。

このまま待機エリアにいても何もないので、誘導されるがまま魔法陣に乗る。

全員乗った所で一瞬にして開会式があった場所へ転送された。


開会式会場を出ると知らない顔のプレイヤーとNPCに囲まれる。

彼らの言葉を一括りで要約すれば、『LIVE中継見たぜ!』か『あんたら結構やるねー』が大半だった。

中には俺に対して他クランからの勧誘などがあったが、聞こえないフリをして無視した。

そして、アパートまでの道のりで気付いたのだが、LIVE中継は街上空に大きく映像が映し出される…という様な感じではなかった。

どちらかと言えば、街頭テレビ的な感じでそれほど大きくもないが街の至る所で流れている感じだ。

会場内で直接見られない人の為に王都アルカード限定でそういう措置が取られた様だ。


次話は閑話となります。

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