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E/O  作者: たま。
oβ・フレンド
57/94

第51話・小さな予兆Ⅰ

長くなりそうなので2話構成にしました

※4/4…文章の構成を少し変更。内容に変化はありません。

テイルウルフの群れに遭遇したのは、森に入ってから大体3時間後、合流してからで言えば2時間後ぐらいだった。

子連れの群れで成狼のテイルウルフが16匹に子狼が3匹の計19匹だ。

レベル差的に大分余裕があったので手強くする為にアヤカが子狼を狙撃、憤慨したテイルウルフの猛烈な攻撃により乱戦状態となった。

子狼の親と思わしきテイルウルフは、アヤカへ一直線で突撃していったがエミリアさんにより一刀両断された。

これにより少し落ち着いたテイルウルフは、2・3匹で行動し始め森では不慣れな俺とクロイツへ集中的に攻撃し始める。


◆◆◆


「くっ、すばしっこい」


こちらが一歩前に出ればテイルウルフの方は一歩下がる。

もっと前に出れば、木の幹を回り逃れる。

広々とした場所でない為、すぐに攻撃範囲から逃れられてしまう。

森ってこんなに戦い難いのか…。


「アキラちゃん。落ち着きや~。

うちのミナミんが追い込むさかい迎撃よろしく~」


アイリスさんが召喚した風の精霊(♀)が回り込む様に3匹のテイルウルフを俺の方へ追い込んでいく。

テイルウルフの意識は精霊に釘付けの為、かなりの隙が生じている。


「すみません!」


俺は後ろから1匹ずつ斬り倒していく。

流石に最後の1匹は気付いた様で俺の攻撃を咄嗟に避ける。


「逃がすかっ!」

『シュトルツカーム』


一歩踏み出し袈裟斬りをする。

攻撃とほぼ同時に鎌鼬が発生し、さらに後ろへ逃げようとしていたテイルウルフを両断する。

現在、アルカディア皇国剣術の流派スキルである《鎌鼬》のレベルは2なので鎌鼬は20cmほど飛ぶ。

ただし、通常攻撃では鎌鼬が発生しないし、鎌鼬自体にグラフィックは存在しない為、見た目が非常に地味で先ほどの技もただの袈裟斬りの様に見えている。


隙のないヒットアンドウェイに俺は翻弄されていたが、皆の援護のお陰で何とか1匹ずつ確実に倒している。

クロイツの方も何とかなっている様で残り6匹と子狼2匹にまで減っていた。


「ミナミん!」

『ヴォルティテンペスト』


アイリスさんの呼応に従って風の精霊(♀)は、風属性中位魔術を無詠唱で使う。

E/Oでの契約者と精霊の関係は、主従関係よりも友人関係に近い。

その為、精霊には相性というステータスが存在し、より親密である程高位の魔術を使ってくれる。


ちなみに、精霊が使う魔法は、特別なものではなく必ず魔術・法術・神術のどれかに当てはまる。

ただし、人間と違い低位であろうと高位であろうと全て無詠唱で使う事が出来る。


先ほどからアイリスさんが精霊を”ミナミん”と呼んでいるが、流石にこれは精霊名ではない。

精霊と契約する時に、精霊個人の名前を契約者が決める。

それが”ミナミん”だ。

確か、精霊名はヴィエンテだった気がする。


精霊の使用した魔術で一気に4・5匹のテイルウルフが巻き込みながらダメージを与え上へ巻き上げていく。

魔術が終わると上からまとめて落下してきた。


「「キャ、キャン!?」」


数匹のテイルウルフはまだ死んでおらず悲鳴を上げる。


「止め!」


俺は駆け出しまとめて落下していたテイルウルフの中央へ技を叩き込む。


『ヴィアb…』


―――ザ…ザザ…ザ…―――


一瞬、画面にノイズが走る。

突然の事で俺は思わず技を中断させた。


「!?」

「え、なに?」

「なんや?」

「ノイズ?」


ノイズが走ったのは俺だけでは無さそうだ。


『オ”オ”ォォォォォオ”オ”オ”ォォォォォォ』


直後、野太い雄叫びが森全体に響き渡り、生き残っていたテイルウルフが散り散りに逃げていく。

それとほぼ同時に聞きなれた電子音が鳴った。

この音は俺だけ聞こえた様で、みんなはまだ雄叫びの方に戸惑っていた。


という事は、この電子音がオラクルクエストの受信だと予想出来る。



★オラクルクエスト『女神の干渉・13』

【内容】

四神が一柱『ヴィーナス』の干渉によりE/O全体にバグが発生。

カルディア王国アルバモント上空にデータが改竄されたバグMob『ディア・アヴァランチドラゴン』が出現。

付近のGM及びセレスティア系プレイヤーは、急行されたし。

尚、討伐には『義体』解除、『封神具』使用を許可するものとし対象を抹消せよ。

報酬は、プレイヤーにより異なります。

【報酬】

封神具・シエロ・デスペランサ(大剣)


★オラクルクエスト『女神の干渉・14』

【内容】

四神が一柱『ヴィーナス』の干渉によりE/O全体にバグが発生。

サウスアルカディア王国王都アルケード付近の森林地帯にデータが改竄されたバグMob『ディア・フォレストオーガ』が出現。

付近のGM及びセレスティア系プレイヤーは、急行されたし。

尚、討伐には『義体』解除、『封神具』使用を許可するものとし対象を抹消せよ。

報酬は、プレイヤーにより異なります。

【報酬】

封神具・天叢雲(太刀)


★オラクルクエスト『女神の干渉・15』

【内容】

四神が一柱『ヴィーナス』の干渉によりE/O全体にバグが発生。

メルディオ王国シエン・グランマ近海にデータが改竄されたバグMob『ディア・アイランドホエール』が出現。

付近のGM及びセレスティア系プレイヤーは、急行されたし。

尚、討伐には『義体』解除、『封神具』使用を許可するものとし対象を抹消せよ。

報酬は、プレイヤーにより異なります。

【報酬】

封神具・トライゾンクラウン(大鎌)



「なっ!?」


オラクルクエストが3つ…。

世界全体で発生しているのか…って、え…14は、もしかして…。


『オ”オ”オ”オ”オ”オ”ォォォ”オ”オ”オ”オ”ォォォ』


木を砕く音折れる音と共に雄叫びが近くなって来ている気がする。

このままだとアヤカ達が巻き込まれる。


「アヤカッ」

「え、な、何?」

「この森から脱出しよう。何か嫌な感じがする」

「大丈夫。この雄叫びはフォレストオーガよ」


確かにフォレストオーガなのは間違いない。

ただし、データが改竄されているけど…。

単に強くなっただけなら良いが、どんな特殊能力を付加されているか分らない。


「いや、私もした方が良いと思いますね。さっきのノイズも気になります」

「私もそう思う」


どう説得しようか迷っているとヘンリックさんとエレナさんが援護してくれた。


「わ、分ったわ。

みんな、一旦王都へ戻りましょう」


俺やヘンリックさん達の真剣な表情を感じ取ったのかアヤカは了承する。


「集団で行動しては気付かれるかも知れません。

散開して王都へ戻りましょう」

「「「「「「了解」」」」」」」


アヤカ達は王都へ向けて別々の方向に散った。

勿論、俺は戻った振りをしてその場へ留まっている。


オラクルクエスト『女神の干渉・14』…承諾っと。

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