第42話・完全な盲点
少し短かったかも知れません。
3/20…前後の話との矛盾点を修正
「それじゃ、私、用紙提出してくるね」
俺とクロイツが書いた入団申請用紙を持ってアヤカは傭兵ギルドに向かった。
ゲームにしては面倒だが用紙を提出して初めて正式な入団となる。
アヤカが戻ってくるまでの間、俺とクロイツを除いたクランメンバーから深緑の傭兵団についての大まかな説明を受けた。
説明と言ってもどういう方向性で活動していくか等で、難しい話はなく雑談を交えながらの話だった。
そして、アヤカが戻り俺とクロイツが正式に入団した事が決まると、装備アイテムの話になった。
クロイツの武器は見せて貰ったので、俺の装備も見せて欲しいという事になった。
「これがボクのメイン武器でこっちがサブです」
夜月絶景と夜空を机の上に置くとエーツーさんは早速自分の前に持っていき鑑定する。
エーツーさんの鑑定スキルは俺よりも高いので細かい所まで鑑定出来るのだろうな。
「ほう、ユニーク級か…で、こっちはレア級…。
ところで、今の刀剣修練のレベルは?」
「えーと、32ですね」
「ふむ。32か…。サブ武器はまぁ良いとしよう。
メインの武器は流石に弱すぎるだろ?」
その言葉に気になったのか他のメンバーがエーツーさんの横からどれどれ…と覗き見る。
後で俺も見るとしよう。
「えーと…。刀剣修練、刀剣修練…え、20?」
アヤカ達の視線が武器ステータスの《Level》の所で止まり硬直する。
そして、一斉に俺の方へ顔を振り向いた。
釣られてクロイツも俺の方を向く。
「使いやすいんだよね」
「いやいや、これじゃスキルが宝の持ち腐れでしょ」
「あんなぁ、アキラちゃん。勇者が使いやすいからって魔王に木の棒で戦いを挑むと思う?」
「いえ…」
極端すぎるが分りやすい例えだ。
何でこんな簡単な事を忘れていたのだろうか。
『秋月夢想流』があまりにも使い易く馴染んでしまった所為で気付かなかったのか…。
「ちゃんと適性レベルの武器を使わないとスキル自体も上がり難いし、同レベル帯のMobにもダメージ与え難いよ?」
「そういう事だ。精々許されるのは-10レベルまでだな。それ以上はマゾとしか思えんぞ」
適性レベル、もしくは少し高いぐらいのレベル差にしないと上がり難いのは基本じゃないか。
逆ベクトルでマゾくしてしまった。
「まぁ、それでも32までよく上げたものだな」
「はは、ですね」
乾いた笑いをするしかない。
「よし、俺っちが適性レベルの武器探して来てやろう」
エーツーさんが立ち上がり背嚢を背負う。
「え、あ、有難うございます。でも、この国に刀はあるのですか?」
「ま、ないだろうな。剣ではまずいのか?」
「流派が剣に対応していないもので…」
「なにっ!? これはどうしたものか。
いや、露店を回れば……って、それは無理が有り過ぎるな…」
王都アルケード内にある露店は、少なく見積もっても百以上ある。
その中から刀を見つけるのは至難の業だろう。
でも、俺の為に真剣に悩んでくれるのは少し嬉しいな。
「ならば、こうすれば良い。
剣に対応した流派を習得する」
「!?」
ヘンリックさんの提案は完全に盲点だった。
将来的にその流派を『秋月夢想流』と掛け合わせれば剣に対応させる事が出来るかも知れない。
悪くはない提案だ。
「2つ目の流派は何か取ってる?」
「いえ、取っていません」
「丁度良いやん」
「では、どの流派にするかだな」
アルケードは王都なので他の都市よりも豊富に流派が揃っている。
これは他の国にも当てはまる事だ。
アイテムと同様で流派にもレア度がありランク別けされている。
ノービス、ノーマル、レア、ユニーク、シークレット、オジリナルの6つだ。
左に行けば行く程習得が容易なのだが、オリジナルだけは2つの流派を掛け合わせた流派なので意味合いが少し違ってくる。
王都の場合は、オリジナルを除く5つ全てのランクの流派が揃っている。
他の都市や街の場合は、ユニークとシークレットのどちらもないか、どちらか一方だけがあるという事が多い。
都市と言えない様な街は、大体ノービスかノーマルしかないが、稀にシークレットが混ざっているので厄介だ。
下手をしたらサービス終了するまで存在すら知られないのもある。
斯く言うUO2もサービス終了した時点で、3つのシークレット流派と1つのユニーク流派が発見されていなかったらしい。
「私が使っているアイゼル流剣術は、騎士剣を二刀流で扱う攻撃的な流派だ」
エミリアさんは、立ち上がり騎士剣を鞘から抜き適当に技を繰り出す。
凄く速い剣閃であったが、速さに慣れた俺の目には4連撃がはっきりと見えた。
「驚いた…。アキラには私の剣閃が見えているのか…」
俺の視線が剣閃を捉えていた事に気付いた様だ。
捉えている事が分るエミリアさんも相当の実力者だな。
その後、騎士剣を鞘に納め席に着く。
「剣に対応している流派は他にあるの?」
「ノービスとノーマルに1つずつあったな。
レアにはなかった筈だ。
ユニークとシークレットは知らん」
ちなみにアイゼル流剣術は、ノーマルにカテゴライズされている流派で3つあるノーマルの内の1つらしい。
昔あったMMOでは、二刀流や抜刀術が特別扱いされているが、E/Oでは普通の流派の1つだ。
他の流派と同じでノービスからシークレットまで全ランク揃っている。
「取り合えず、王城へ行けばノービスとノーマル流派がどんなものか分る筈だから行って見ると良い。
私の流派は特殊なので王城ではなかったが、その2つは騎士が使う基本流派だった筈だ」
「ですね。まだ日は高いですし、ちょっと行って来ます」
俺が席を立つとクロイツも当然とばかりに席を立つ。
お前は金魚のフンか!?
「クロイツさんは、行かなくて良いのよ?」
「え?」
アヤカの言葉で直立不動となったクロイツを横目に俺は『華と泉』を出た。
各キャラの一人称とアキラの呼び方が他の話と違っているかも知れません。
後日、修正しますのでご了承願います




