第40話・エルフは遠目でみるもの
ブランドさんの店を出て、また中央大通りへ戻り王城方面へと向かう。
「あいつのあの顔見たか?面白くて仕方がねぇや」
がははは、と笑いながら上機嫌で歩いていく。
行き先は勿論『泉と花』だ。
「真正面に王城が見えるだろ?」
「はい」
「その左右の区画が貴族街で通りを挟んだ向かいがプレイヤーの居住区だ。
んでプレイヤー居住区の入り口に集合商店街の建物があってな。それが目印となる」
絢華が言っていた「大きな建物が目印」は、その集合商店街の事だったのだろうか…。
「集合商店街を見付ければ後は簡単でな。
その中を通り抜けて小道の向こう側に見える建物が『泉と花』になる。
一応、ここ以外からでも行けるんだが、正直分り難いから最初はここから入ると良い」
確かに目印になるだろうが、絢華の説明があまりにも情報不足だ。
大通りを左に曲がり集合商店街の中へ入る。
日本で言うアーケード商店街の凄く短いバージョンと思って貰って良い感じだ。
しかも、結構な割合で店が入っておらずシャッター街になっている。
「ああ、この商店街はな。
半分はNPCの店で残りはプレイヤー用の空き店舗なんだわ。
結構、家賃が高くてあまり埋まっていないみたいだな」
「アレキサンダーさんは、店舗持ってないのですか?」
「行商だからな。俺っちの店舗は、この背嚢よ」
背負っている背嚢をポンポンと軽く叩く。
「で、着いた訳だが昼時にいる連中は限られているぜ?
本当に時間指定はなかったんだな?」
「はい」
「そうか。なら、良いんだがよ」
アレキサンダーさんは、小洒落た印象を受ける酒場の扉を勢いよく開けた。
「おう、帰ったぞ」
中に入ると同時に酒場の右奥を貸しきっている集団に向けて声を掛けた。
と言っても、彼ら以外に客はいなかったが…。
酒場のマスターは、中に入った俺らを一瞬見た後すぐに何事も無かったかの様に作業へ入る。
NPCなのだろうけど売買NPCよりも高度なAIを使われているみたいでアレキサンダーさんが客かどうかを判断した様だ。
普通なら「いらっしゃい」など何かしらの反応がある筈だ。
「あ、おかえり。エーツーさん」
「戻ったか」
「頼んでいたもん。買うてくれた?」
「今日は遅かったな」
「おかえり。ところでその2人は?」
円卓を囲み座りながら談笑していた5人組は、全員揃ってこちらへ顔を向けた。
全員エルフの美男美女だった。
「ここに知り合いが待っているらしくてな。連れて来た」
「「「「「??」」」」」
エルフ5人組は、お互いを顔を見合わせて「誰?」「さぁ」など微かに聞こえる小声で相談をする。
ぶっちゃけ、絢華のキャラが分らないので俺もこの5人組の誰かなのかも分らない。
もしかしたら、いないかも知れない。
「ごめん。人違いじゃないかな?」
全員エルフなのは間違いないのだが、俺の知っているエルフのイメージとは全然違い耳が尖がっている以外の個性はかなり違う。
そして、金髪碧眼と最もイメージに近いエルフの姿をしたプレイヤー♀が代表して答えた。
「人違いだってよ。どうする?来るのを待つか?」
「ん~どうしよ」
「日時決めていなかったんだろ?仕方ないと思うぜ」
「じゃ、待つ事にします」
俺は空席ばかりの店内を見渡して、日の当たる窓際の席へ向かう。
「あ、ちょっと、待って。折角だし私達とお喋りしましょう?」
薄碧色の髪のエルフ♂が隣の円卓から2人分の椅子を自分達の円卓へ移動させる。
「どうぞ、こちらへ」
「え、あ、ありがとう」
「ども」
アレキサンダーさんには、彼らの円卓の中に自分の席があるようで自然と彼らの中へ入り着席した。
俺とクロイツは、紅髪のエルフ♀と銀髪のエルフ♀の間に着席する。
「マスター、水2杯」
「はぁい」
アレキサンダーさん以外は、美男美女で眩し過ぎる。
遠目でエルフは何度か見ていたが、こんな近くで…しかも向かい合わせで見ると目に毒でしかならない。
「どこから来たん?」
先ほどから気になっていたが関西弁で喋るエルフがいた。
違和感あり過ぎ。
「ボクはゴリアテ王国からです」
「俺はハイランド王国からだな」
「へぇ、結構遠いやん。わざわざ、こんな遠い所まで来たんは、その知り合いに会う為なん?」
「まぁ、そういう約束でしたし…遅くなりましたけど」
「その知り合いに会えるとええな」
「ですね」
関西弁のエルフ♀との会話が一段落した所でマスターが水を運んできた。
「注文は如何致しますか?」
「あ、今は良いです」
「俺も」
「はい、ご注文される時はご遠慮なく呼んで下さいね」
物腰の柔らかそうなマスターは、普通に会話出来ている事からも思った以上に高度なAIみたいだ。
マスターはカウンターに戻るとグラス磨きの作業に戻る。
この時間はかなり暇な様だ。
「私達これでもクラン作ってるんだよ?」
「へぇ~そうなんですか」
4人…いや、5人でクランか…。
多いか少ないかで見れば間違いなく少ないな。
「深緑の傭兵団って言って…あ、私、アヤカ=ツキカゲって言うんだけど、宜しくね」
「……はぁ~~~……」
俺は大きく溜息をつく。
知り合いはお前だよ。
「え?え?」
アヤカを見た後、再度大きく溜息をついた。
早くて今日の晩、遅くて明日に次話投稿すると思います。
もしかしたら、途中でダレてしないかも知れませんが…




