第38話・着々実装中
会話が多すぎる感がありますが、ご了承下さい
『…いつこっちに来るの?』
「そうだな…。ゲーム内時間的に2週間って所だろうな」
『いまどこ?』
「カルディア王国のブリトリアって所にいる」
『へぇ~結構近くまで来てるわね』
「まぁな」
現在の時刻は21時半過ぎだ。
勿論、現実のだ。
晩飯を食べ風呂に入り、さぁ今からログインするぜっていうタイミングで絢華から着信があった。
絢華は珍しくいつもより残業が早く終り、家に着くまでの間暇つぶしに俺へ電話を掛けて来た様だ。
ちなみにブリトニアは、カルディア王国を縦断した際の丁度真ん中に位置する。
世界でも有数の魔法学術都市で魔法の研究と応用を盛んに行われている訳だが、
その中でも有名なのが複合魔術研究所で魔術を極める為には必ず通るであろう施設だ。
また、魔術師ギルドの総本山がある場所でもあり、E/O内にある全ての魔法に関連する書物を保管している魔法図書館もある。
魔法関連のクエストは、ブリトニアに集中している。
禁呪習得でも恐らくお世話になる筈だ。
『そう言えば、クラン作ったよ』
「へぇ」
ブリトニアに着いた直後に3体目の魔王ルシファーが倒されたと言うアナウンスがあった。
場所的に倒したのは絢華達のパーティだと思うので、あえて聞く様な事はしないが恐らく間違いないだろう。
この討伐で解禁されたシステムが『クランシステム』と『フレンドシステム』の強化だ。
内約は、『クラン設立』『クランスキル』『クランハウス』『魔導電話の追加』という事になる。
『クラン設立』は説明の必要はないだろう。
他のMMOと少し違う所と言えば、職業が限定されるぐらいだ。
つまり、傭兵は傭兵とでしかクランを組めない。
もっと簡単に言えば、傭兵は傭兵クラン、騎士は騎士クランしか作れないという事だ。
前作であるUO2に関してはそもそも『クランシステム』がなかったので比較出来ない。
『クランスキル』は、クラン専用のスキルツリーが存在し3つのカテゴリー分けがされている。
傭兵クランで言うと、『トレジャー』『ハンター』『バウンティ』の3つがある。
『トレジャー』は遺跡探索やお宝発掘などに特化したスキルを習得出来る。
『ハンター』は、クエストや対Mobに特化したスキルを習得出来る。
『バウンティ』は、賞金稼ぎや対人に特化したスキルを習得出来る。
この様に1つのスキルツリーに特化させるのか複数のスキルツリーを習得していくかでクランに特徴を付けていく。
『クランハウス』も説明は不要だろう。
マイホームのクラン版でクランハウスでしか建てられない物件があるぐらいだろう。
一番大きな物件でクランタウン…つまり街を建設できる。
まぁ、途方もない金額を要求されるがな。
『魔導電話の追加』は、他のMMOでフレンドコールやフレンドチャットやウィスパーなどと呼ばれているシステムの事だ。
つまり、遠く離れたフレンドとリアルタイムで会話出来る普通のシステムだ。
逆に言えば、今までE/Oにはフレンドコールがなく、他プレイヤーとの連絡手段が時間差のある郵便だけという事になる。
ただし、他のMMOほど余り便利ではなかったりする。
まずは、追加されたからと言って全プレイヤーが使える訳ではないという事だ。
各ギルドからレンタルする仕組みで買う事も当然出来るが、値段は土地プラス豪邸一軒分ほどの価値があるという非常に高価なアイテムだ。
しかも、万能ではなく相手が同じ国にいる事とダンジョンにいない事が条件となっている。
『私を含めて6人しかいないクランだけどね』
「解禁されたの昨日だし、多い方だろ。
てか、絢華のパーティって5人じゃなかったっけ?」
確か、前にそんな事を言っていた感じがする。
『パーティは5人だけど、他にもフレンドはいるわよ』
「あ、フレンドね」
羨ましいなんて思ってないからな。
俺だってフレンドはいる!
…2人だけど…しかも1人は……。
「………」
『どうしたの?』
「いや、何でもない」
『亮が入ってくれると7人になるわね』
「あー多分、8人になるかもよ?」
『え、何で?』
「いや、まぁ、ちょっと色々あって1人のプレイヤーとパーティ組んでる。
多分、そっちに着いても一緒に行動する可能性が高い」
『ふーん、色々ね』
「クランメンバー募集しているなら”百ちゃんねる”利用してみたら?」
『え~”百ちゃんねる”って言ったらアレでしょ?』
「匿名掲示板って事?」
『そう、それ』
「って言っても、GIDで身元特定出来るから犯罪的な事は一切ないって」
『へぇ、そうなんだ…』
「そこにクラン員募集スレが昨日建っていたし書き込んでみたら?
何なら俺が書き込んでも良いけど?」
『あ、大丈夫。クランメンバーに頼んでみる』
「クランに日本人いるんだ?」
『直接は聞いてないけどね。駄目ならまた連絡するね』
言いたい事を言って絢華は電話を切った。
さて、ログインしよう。
俺はHMGを被りベッドで横になる。
HMGの電源を入れVR空間へ意識をダイブさせた。
◆◆◆
「買い物終わった?」
「まぁね」
やはり、魔術書は全属性買えなかった。
取り合えず、炎の魔術書を中級まで購入し風と雷の魔術書を初級まで、それ以外の属性は基本的な魔術を羊皮紙で単品購入した。
これで魔王討伐で得た賞金は全て使い切ってしまった。
後は最低限の路銀しか残っていない。
全属性を購入したものだから魔術書店のお姉さんに怪しまれた。
まぁ、フレンドの代理購入的な事を適当に言って誤魔化したけど…。
それに買っただけでまだ習得はしていない。
就寝する前に少しずつ読んで行こうと思う。
「そっちはどんなクエスト受けたの?」
俺が魔術書の購入している間、クロイツにはクエストを受けに行って貰っていた。
「ソルジャードラゴンの討伐」
「よく残っていたね」
ソルジャードラゴンの討伐は、結構人気のクエストだ。
ドラゴン種の中で最も下位に位置し、生息数でもダントツで各地に出没する最もポピュラーなドラゴンだ。
大陸や気候によって性質が若干異なるがちょっと手強いMobという認識で良い。
姿形もドラゴンというイメージよりも二足歩行の中型恐竜と言った感じだ。
つまり、飛龍ではなく陸龍って事だな。
人気な理由は倒しやすいからではなく、ドロップが美味しい事に起因する。
料理人のロールプレイしているプレイヤーにとって龍肉は最高級の食材だ。
それで作られるドラゴンステーキは、とてつもなく美味しいのは勿論のこと成長ボーナスが高い。
これは、味覚が解禁される前でも人気だった…と言う情報を百ちゃんねるで見た…。
龍皮や龍骨は防具の材料になるし、龍血は龍殺しの材料になる。
龍血が何故龍殺しの材料になるかと言うと、材料となったドラゴンの龍血は下位のドラゴンにとって猛毒となっている。
まぁ、ソルジャー級は最下位なので龍殺しの材料にはならないが…。
龍眼というのもあるが、流石にソルジャー級ではドロップしない。
龍眼は、魔法触媒として最高の性能を誇る宝石なのだ。
「1体?」
「ああ、1体っぽいな。南東にある宿場町を夜な夜な襲っているらしい」
「東か…」
「大丈夫大丈夫。道のりの途中を少し外れた所だから、そんなに時間は掛からないよ」
「じゃ、行こ」
俺達2人は、ブリトニアの正門をくぐりノースアルカディアとの国境近くになる街モリネピアへ向かう。
ブリトニアから南方は平原がずっと続いており起伏も激しくない為、恐らく2日ほどで着くだろう。
魔術書購入エピソードについては、蛇足になりそうだったので省きました。




