第35話・$ёдШ#(仮
仮タイトルです
対ブリザードベア戦後、特に何事もなくカフカスクに着いてしまった。
スノーウルフの討伐数にはまったく届かなかったので、カフカスク近郊の森林にて難なく終わらせた。
少し奥に入るだけスノーウルフの群れを簡単に見つける事が出来た。
まぁ、それだけ個体数が多いのだろう。
カフカスクに着き傭兵ギルドでスノーウルフの討伐報告をしたすぐ後にオラクルクエストを受信した。
その内容は…
★オラクルクエスト『バグの根絶』
【内容】
ロードグリアード連邦東部辺境の町カフカスク周辺にてバグが発生。
突然変異と見られるゴーレム系バグMob「&&’#%$7%△2=?*」を一片も残さず滅っせよ。
尚、討伐には『封神具』の使用と『義体』の解除が可能です。
また、対象の右腕には、触れた相手のスキルをバグらせる効果が確認されている。
【報酬】
全所持スキルの熟練度+50
ふむ、如何にもバグっぽい名称のMobだな。
見間違えようがなさ過ぎる。
触れた相手のスキルをバグらせる効果か…。
わざわざ、内容に書くという事は、『結界重膜』では防げないのだろうな。
これは忘れずに覚えておこう。
報酬は、悪くないな。
まぁ、微妙と思う人がいるかも知れないが、全所持スキルってのがミソだ。
つまり、普段使っていないスキルや上がり難いスキルも熟練度が50プラスされるという事だ。
しかも、スキルのカテゴリーには、技や魔法まで含まれている。
上がり難い『縮地法』や『急制動』にも50プラスされるのだから、俺にとっては嬉しい事この上ない。
ちなみに、熟練度100=スキルレベル1と思って貰って良い。
どうだ、悪くないだろう?
まぁ、それはさて置きカフカスクの街だが……簡単に言えば田舎町だ。
強いて言うならば、宿場町といった所だろう。
それは仕方がない事で次の街である港町グリタニスクと国境の町アドランテの間にある中間地点でしかないからだ。
娯楽は皆無、雑貨店はあるが武具店や魔法具店はなく最小限の施設しかない。
当然、スキルトレーナーはいないし駐在している騎士もNPCが4人しかいない。
まだ、日は浅いので俺は雑貨店で補充をした後、カフカスクを後にする。
目指すは、オラクルクエストで指定された場所だ。
◆◆◆
カフカスクを出て2時間と少し予定よりも早く目的地近くに到着する。
オラクルクエストの内容にカフカスクの町”周辺”と書いてあったが、
カフカスクとグリタニスク間の距離を相対的に見た場合の言い回しだったので”周辺”でも間違いではない。
ちなみに、アドランテとカスカスク間に掛かった日数とほぼ同じだけグリタニスクまで掛かると思われる。
ただ、カフカスクとグリタニスク間の時と違うのは、比較的天候が安定している事だろう。
なので、ほぼ同じ距離でもグリタニスクに早く着く可能性が高い。
さて、目的地近くに来た訳だが指定されている場所は今現在いる街道より北へ伸びる小街道を使って行く事になる。
この小街道は、北にある山脈の麓に位置する小さな町まで伸びている。
その町はカフカスクよりもさらに小規模らしい。
E/Oには、名前さえ付けられていない小さな町があちこちに点在している。
その町もその1つで重要度が低く設定されている。
だからと言って、何もない訳でもないらしくいきなりメインクエストの舞台になる事もあるかもしれない。
この小街道は、視界の悪い森林の中を縫うように伸びている街道なので、カフカスクとグリタニスク間と違い危険度が増している。
スノーウルフやブリザードベアに遭遇する可能性も高い。
まぁ、高いと言ってもそう頻繁に遭遇する訳でもない。
前にも述べた事があるが、Mob間にも食物連鎖が存在している。
Mobの敵はプレイヤーだけではないので、E/OにはアクティブやノンアクティブMobが明確に分けられていない。
つまり、空腹なら…獲物がかぶったら…自分にとって危険かどうか…はたまた気まぐれで判断する。
小街道を30分ほど進むと、北の方から木々が折れる音と何か重たいものが歩いている振動と音が聞こえてくる。
確か、バグMobはゴーレム系だった筈なので、対象と見て問題ないだろう。
俺は対象の進行方向へ先回りし様子を見に行くと、ゴーレムに追われる形でプレイヤーらしき傭兵がを走り去っていった。
「どわぁー!!」
「オ”オ”オ”オ”オォォォォォ!」
そして、スノーウルフを取り巻きとした巨大なゴーレムが肥大化した右腕を振り回しながら木々を薙ぎ倒し傭兵を追っていく。
どちらも俺には気付かなかったようだが、ゴーレムの大きさは俺が予想していたサイズよりも2回りから3回り程大きかった。
……って、そんな事を思っている場合ではなかった。
あの傭兵を助けなければ…。
『義体』…解除。
王都ゴルディアで購入した新しい防具は、丁度翼が出現する部分をわざと開けて貰っている。
少し見た目が恥ずかしいが、性能は文句のない良い防具を買う事が出来たと思っている。
『封神具召喚』
『封神具・パニッシャー最終申請』
『…承認…』
『封神具形態変化解除、第一から第四を解除』
『…承認…』
『パニッシャー性能更新・第一から第四を更新』
『…許可…』
異次元?亜空間?から取り出したパニッシャーを召喚すると同時そのまま『ディバイン・パニッシャー』形態へと移行させ、俺は真上に飛ぶ。
森の中で追うよりも森を上から見下ろした方が見つけ易いと俺は判断したからだ。
それに地上はMobと遭遇し易く面倒だしな。
森の上空100mほどを一瞬にして飛んだ俺は、森の方を見下ろす。
すると、カフカスクとグリタニスク間街道方面へ向けてまっすぐに砂埃を舞い上がらせながらゴーレムが突き進んでいた。
恐らく傭兵はゴーレムの前方を走っているのだろう。
俺は下降後にゴーレムと併走する形で飛び、傭兵の場所を確認すると俺は『ディバイン・パニッシャー』の魔導ビームをゴーレムとの間に射出する。
巧く行けばゴーレムのヘイトがこちらへ移る。
射出された2発の魔導ビームは、ゴーレムの前方にある大地を大きく削って行き足止めに成功すると共にゴーレムのヘイトをこちらへ移す事が出来た。
取り巻きのスノーウルフに関してはヘイトを移す事が出来ず、どうにか窪んだ場所を越え傭兵を追おうと試行錯誤している。
魔導ビームで削れた大地が大きすぎたのか回り込めず、しばらくして傭兵がスノーウルフの知覚範囲から逃れていった。
ターゲットを見失ったスノーウルフはゴーレムの足元で右往左往している。
傭兵を追う事はもうないだろうと判断しゴーレムの前に降り立つ。
スノーウルフ共は唸って威嚇しているが、ゴーレムの方は当然無表情だし視線の動きもないので次の行動が読み辛い。
突如、ゴーレムが右手を振り上げる。
確かに唐突で予測は出来なかったが、動きが非常に鈍重で読む必要がないようだ。
ゴーレムは振り上げた右手を俺に向かって振り下ろす。
やはり、振り下ろす速度も早くは感じられず、俺は余裕を持って後方へ飛ぶ。
俺が先ほどまで居た所にゴーレムの右手が振り下ろされ激しい衝撃で地面が大きく窪む。
それとほぼ同時に周辺の空間が歪み、一瞬であるがテクスチャ割れと0と1の数字がエフェクトの様に散る。
どうも、ゴーレムの右手はプレイヤーを含めたキャラクターだけでなく、オブジェクトにも何らかの影響を及ぼしている様だ。
しかし、それらの現象も一瞬で元に戻っており、恐らくOS社つまり運営・開発か四神システムがバグを修復しているのだろう。
影響範囲が広くない今の内に決着を付けた方が良さそうだ。
それにいい加減ゴーレムの足元で吼えているだけのスノーウルフも鬱陶しくなってきた。
あれだけ大きい腕だとバランスも良くないだろう。
俺は、高く飛び上がりゴーレムの上空から一気に下降しゴーレムの右手を掻い潜る。
そして、股の間を通り抜け背後に着き、パニッシャーをゴーレムの右足に撃ち込んで消滅させる。
右足を失った事でゴーレムはバランスを崩し右手を地面に着かざる得なくなる。
これで右手の脅威はなくなった。
最後に締めの為に着地すると待ってましたとばかりにスノーウルフが襲い掛かってくる。
「ああ、鬱陶しい」
2丁のパニッシャーでスノーウルフを迎え撃つ。
パニッシャーから放たれる魔導ビームは、スノーウルフを数匹ずつ薙ぎ払って行く。
流石に今の状態でスノーウルフ如きでは俺の相手になる事はない。
「オ”オ”オ”オ”オォォォォォ!!!」
ゴーレムは身動き出来ない状態で吼える。
戦う意思を失っていないというべきなのか…こちらへ何度も振り返ろうとする。
しかし、その度に右側へ倒れそうになり右手で身体を支える。
『ディバイン・パニッシャー砲撃モードへ移行』
左手に持ったパニッシャーを右手のパニッシャーへ連結させる。
完全に合体変形した事を確認した俺は砲身の先にあるリングサイトにゴーレムを納めトリガーを弾く。
2基の魔導エンジンは、最大回転数に達し放てる状態になる。
『気配察知』で射線上にプレイヤーがいない事を確認し、俺はトリガーを放す。
最終形態の『ディバイン・パニッシャー』から解き放たれた極太の魔導ビームは、
真正面にいたゴーレムを一瞬で消滅させ背後の木々と地面を抉り遥か地平線の向こうへ消えていった。
ピコンという電子音と共にオラクルクエストの達成を確認する。
「ふぅ」
俺は『義体』を使いヒューマの姿に戻る。
前回は、空中で放ったので余り実感が湧かなかったが、地上で放つと『ディバイン・パニッシャー』の凄まじさがよく分る。
少し斜め上に放ったので永遠と地面が抉れているという訳ではないが、カフカスク=グリタニスク間街道まで一直線の道が出来上がってしまっていた。
余りMobのバグ要素を活かしきれませんでした




