第25話・いつもギリギリ過ぎ
相変わらず戦闘表現はアレですが…
《グルルルル…》
あ~、滅茶怒ってる。
獣人は持っていたハルバートを手放し本当の獣のように四つん這いの態勢になる。
ハルバートを手放したら攻撃手段がなくなるかと一瞬楽観視したが、流派を2つ持てるのはプレイヤーだけでない事を思い出す。
そして、獣人専用であり獣化にも対応している流派もあった筈だ。
とは言え、獣人…囚人14号がそれを持っているとは限らないが…。
《ガァッ!!》
ハルバートを持っていた時と比べ物にならないぐらいのスピードで突撃してくる。
だが、師匠の《縮地法》に比べたら遅い。
《縮地法》
『肆式抜刀術・旋風』
獣人と交差する少し手前で技を繰り出す。
”ギィガガンッ”
回転する刃は、滅茶苦茶に振り回された獣人の腕の攻撃を弾きながら懐に潜り込んで行く。
そして、無防備となった獣人の脇腹を2度斬り裂きすれ違う。
《急制動》
回転斬りを強制的に止める為に《急制動》を使う。
そして、獣人の方を振り向くと傷など気にしないかのように四つん這いの態勢のままその場に佇んでいた。
それも束の間すぐに振り向き再び突進を仕掛けてくる。
『参式抜刀術・顎門』
”ヴォワ”
今度は防御の為に『顎門』で空気の壁を作り出す。
いくら獣人の突進と言えどこの壁を抜けるのは容易ではない。
”ボンッ”
獣人がまともに空気の壁へ突っ込むのを確認し、俺は次なる技を繰り出す為に構えなおす。
『壱式抜刀jッ!?』
獣人は空気の壁を無理やり突っ切り野太い腕は俺の首下に伸びてくる。
「ぐぎっ!?」
あまりにも予想外の行動に避ける事が出来ず、獣人の手が俺の首をがっしりと掴む。
「あが…っ…」
《グルルルルル》
獣人は首を掴んだ腕をそのまま上に持ち上げ尚首を掴む腕の力が増していく。
左上のHPゲージは見る見る減っていく。
痛みはないが骨が軋む音で非常に厭な予感が脳裏を横切る。
残りHPに関係なくポキッとかないよな?
俺は獣人の腕から何とか逃れようと右手を動かし夜月で何度も獣人の身体に突き刺す。
それでもビクともしないので左手で獣人の腕を何とか取り払おうとする。
が、これも全然効果がない。
そして、獣人は何を思ったが、俺の首と左肩の間を思いっきり噛み付く。
これにより視界の点滅は加速していき、いよいよ危険域に達した事を察する。
さらにそれへ追い討ちを掛けるように「出血」の状態異常が発生する。
非常にマズイ状態だ。
が、このまま終わる訳には行かない。
(伍式抜刀術・飯綱)
地に足が着いていない状態だが、密着しているし発動してくれ。
《ギァッ!?》
夜月の柄頭は、獣人の左脇腹に打撃を与える。
獣人は一瞬硬直し、首を掴んでいた腕と左肩に噛み付いていた口が離れる。
「かはっ…」
解放されたと同時に喉奥から血が吐き出される。
首が解放された事でHPゲージの減り具合は緩やかになる。
しかし、「出血」による減少はまだ続く。
《ギッ…》
柄頭は丁度、獣人の肺へ打撃が通っていたようで身動きが取れない状態にあった。
残りHP…10%あるかないか、「出血」…止まりそうにない。
残りSP…十分…、このまま押し切るしかない。
夜月を納刀し、すぐに構えなおす。
『陸式抜刀術・神去』
ほぼ零距離、獣人は動かない。
鞘から抜かれた夜月は獣人の右肩に突き刺さる。
そして、俺は身体を反転させ抜刀術の要領で右へ斬り払い獣人の右腕を斬り落とす。
《ギャアッ!?》
斬り落とされた箇所から大量に出血する。
続けざまに次の攻撃へ移る為に再び夜月を鞘へ納める。
『漆式抜刀術・鳴神』
俺はジャンプせずにその場で『鳴神』を繰り出し、左腕の傷口を押さえていた獣人の左腕を斬り落とす。
《ギャアアアッ》
一際大きな悲鳴で獣人は叫ぶ。
そんな悲鳴も気にせず俺は後がない今だからこそ出せる技の為に再び夜月を鞘へ納める。
ちなみにその技は俺の全SPの40%消費する技なのだが、遠距離で真価を発揮する。
《縮地法》
俺は《縮地法》を使用して後方へバックステップする。
そして、俺はいつもよりも腰を落とし前傾姿勢で技を発動させる為の溜めに入る。
両腕から血を大量に流し、すでに戦意喪失状態の獣人を見据える。
『捌式抜刀術・不知火』
鞘から抜かれた夜月は、リングの石材と接触し激しく火花を散らす。
そして、その接触面から巨大な炎が現れる。
夜月の刀身が纏っている光に包まれつつ巨大な炎は、リングの地面を這うように獣人へ襲い掛かる。
本質的に言えば火炎放射器と言えない事もないのだが、斬撃ダメージのある炎だ。
しかも、その斬撃ダメージは抜刀術と同等のものである。
獣人を襲った炎の刃はまず身体を斬り裂き、その上で焼き尽くしていった。
炎を過ぎ去った後には、一直線に焦げたリングの石材と黒焦げになった獣人の死体だけだった。
一瞬の静けさの後に勝利の鐘が響き渡る。
『ハッハッハ、これは予想外…』
SPはギリ残っているが、出血が未だ続いていた為HPは1ドットにまで減って行く。
『…!!!!!!』
リングを見下ろす壇上でご高説を垂れているスロゥスであったが、すでに意識が朦朧としていた俺の耳には入らなかった。
”ピコン”
電子音と共に俺は意識を失った。
◆◆◆
どのくらい経ったのだろうか、俺はいつもの牢屋で目を覚ます。
俺はデスペナによって思い通りに動かない身体を起こし周りを見渡す。
ハイアとヴェルはいない。
そう言えば、闘技場で優勝した事でチュートリアルが終了したのだったな。
次は、どんな内容になっているのだろうか…。
恐らくは、『魔王側近の討伐』だろうと思うのだが…。
「クエスト確認」
★メインクエスト『魔王側近の討伐Ⅱ』
【内容】
闘技場で優勝した貴方には魔王側近「スロゥス」に挑戦する権利が与えられました。
魔王を倒す為にまずはスロゥスを倒してください。
尚、このクエストを破棄する事は出来ません。
【報酬】
全戦闘スキル熟練度+50(スキルレベル+0,5)
【連続クエスト】
『魔王の討伐Ⅱ』
★オラクルクエスト『力の発現Ⅰ』
【内容】
種族スキルレベル30達成おめでとうございます。
これにより、血族スキル『限定解除』『封神具修練』が解放されました。
メインクエスト『魔王側近の討伐Ⅱ』にてこれらのチュートリアルを行います。
まずは、魔王側近「スロゥス」に話しかけて下さい。
尚、このクエストを破棄する事は出来ません。
※セレスティア・セラフィム・ネフィリム専用クエスト
【報酬】
種族スキル『義体』『封神具召喚』『神術』『アームズ適性++』『結界重膜』『覚醒』の解放
【連続クエスト】
『力の発現Ⅱ』
……えーと、あれ?
何か見知らぬクエストがある。
メインクエストは、まぁ分る。
正規?の方法で『魔王側近の討伐』を受けた訳ではないからな…。
オラクルクエスト?
UO2にはなかったクエストだ。
しかも、内容をよく読むと種族スキルが解放されたように見える。
解放されたスキルの為に魔王の側近さえチュートリアルの対象になっているは驚きだ。
そして、報酬…これまた血族スキルだ。
こっちはもっとヤバそうな名称のスキルが勢揃いだな。
「ス、スキル確認」
◆種族スキル⇒『ヒューマLv30』
◆血族スキル⇒『成長+』『限定解除』『封神具修練』
◆才能スキル⇒『剣術の才能』
◆属性スキル⇒『無Lv1』『火Lv2』『水Lv1』『風Lv1』『雷Lv1』『地Lv1』『光Lv2』『闇Lv1』
◆流派スキル⇒『秋月夢想流居合剣術Lv13』《縮地法Lv2》《急制動Lv1》
◆ノーマルスキル⇒『格闘Lv29』『刀剣修練Lv21』『回避Lv15』『受け流しLv8』
『気配察知Lv11』『軽鎧修練Lv12』『サバイバルLv8』//『魔術Lv1』『武器防御Lv7』
えーと、血族スキル以外にも何か習得しているみたいだけど今回はスルーしておこう。
『限定解除』…神剣の性能を一部解放するスキル。オラクルクエストとメインクエスト以外でも使用可能。
『封神具修練』…資格のある者が封神具を扱う為の技能。
という事は、『魔王側近の討伐Ⅱ』で神剣とやらが入手出来るという事だな。
それと気になったのが”オラクルクエストとメインクエスト以外でも使用可能”という一文だ。
これを読む限り、他のスキルは”オラクルクエストとメインクエスト以外では使用出来ない”という意味に捉えられる。
デスペナ解除後が楽しみになってきた。
「って!?」
リアル時間AM4:52……。
あわわ、クエストやスキルの確認している場合ではないじゃないか。
だが、欲張れば1時間は寝れる!…筈。
「ログアウト!」
やっと、種族ネフィリムとしての力を一部解放したアキラ、多分恐らくCβラストに向かって話は加速していく…筈です。
10/28…『神剣』という表記を『封神具』に変更




