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E/O  作者: たま。
cβ・チュートリアル
26/94

第22話・苦戦なんてものじゃない

文才を下さい

毎度おなじみの闘技場への階段を昇り、リングへ向けて大歓声の中歩いていく。

俺サイドのリング脇にはハイアがいたが、今回は対戦相手の事は聞かない。

ランク3からの連戦があまりにもあっさりしていた。

まぁ、苦戦すればスキル上げにもなるし、事前情報なしで戦闘も一度は体験するのも良い。


「今回は対戦相手の事聞かないのか?」

「まぁね」


と言うより、俺が知る限りランク7以上はそんなにいない筈だ。

ハイアの事だがら恐らく対戦相手はランク7の囚人だろう。


ハイアやヴェルと雑談していると、牢獄への階段から看守に連れられて1人の囚人がやって来る。

その足でそのまま俺サイドとは反対側のリング脇へ移動する。


ああ、どういう相手が分った。

歯ごたえがありそうだ。

否、勝てるか微妙な相手だ。


一言で言えばサムライだ。

何故か上半身裸のムキムキ逆三角形で下半身は流石に脱がず着物、右手には野太刀が握られている。

見た目は強そうだ。


しばらくして、相手の準備も終わったようでリングに上がるように指示される。

俺と相手のサムライはリングの上に上がり所定の位置に着く。

開始数秒前になり俺は腰に差してあるサムライソードに手を添え腰を落とす。

そして、相手のサムライは、野太刀を上段に構える。

元々大柄な体格なのに野太刀を上段に構えた事により一層大きく見える。

威圧感がハンパない。


「…居合か…」


サムライはボソリと呟くと同時に開始の鐘がなる。


《縮地法》をしてすぐにでも間合いを詰めたいのは山々だが、入った瞬間斬られそうなイメージが俺の脳裏を離れない。


「来ないのなら、こっちから行く」


彼がそう言うと5mの距離を《縮地法》を用いずに一瞬で間合いを詰める。

大きい体格と高い脚力だから為せる技だ。

確かに《縮地法》と比べれば遅いスピードなのだが、一般的に見れば十分早い動きだ。

彼が間合いを詰めたのは見て分ったのだが、虚を突かれた事で身体が反応しなかった。

気付いた頃には彼の野太刀が俺の頭上に迫っているところだった。

俺は咄嗟に《縮地法》で横へ逃げる。


「あっぶな…」


すぐに《急制動》を掛け体勢を整え構え直す。

そして、彼が攻撃した後の硬直時間が終わる前に俺《縮地法》で間合いを詰める。


『壱式抜刀術・凪』


ジャストタイミング、普通なら避けれない一撃だ。

しかし、当たる直前に硬直時間が解けた彼は最小限の動きで俺の攻撃を避ける。

掠りぐらいはしたかも知れないが完全に避けられた。

俺は反撃を恐れ《急制動》は掛けず慣性のまま走り抜け彼から離れる。


振り向くと、彼は少し驚いている表情をしていた。

どうも、先ほどの回避は彼にとって意外行動だったようだ。

俺からしたら《縮地法》からの抜刀術を避けられた方が驚きなのだが…。

大分、格下に見られているのだろうな。


彼は俺の方に向き直ると上段の構えから正眼の構えに変更する。

能力差の物差を改めたようだ。

俺としては格下と見られていた方が都合は良いのだけど、まぁ仕方あるまい。

正眼の構えになった彼には先ほど以上に隙が見当たらなくなった。



「シッ」


攻撃に戸惑っていると先ほどと同じように先制を取られる。

隙の少ない踏み込み上段斬りといったところか…。

警戒はしていたので不意打ちという事はなく、《縮地法》は用いず回避しながらの抜刀術をする。


「ハッ!」


技を繰り出すほどの余裕はなかったので通常技だ。

カウンター気味の攻撃だったにも関わらず彼は難なく避ける。

足が止まってしまっているので、身体を反転しそのまま攻撃に転じる。


『肆式抜刀術・旋風』

”ガッキィィン”


技が発動する事でサムライソードの攻撃は加速し、俺の背後を狙っていた彼の野太刀と交差し火花を散る。

お互い攻撃は止まない。

隙の少なかった彼が一瞬早く弾かれた刀の反動を利用し横薙ぎに転じる。

逆に俺は体勢を低くし横薙ぎを回避しつつ抜刀術を繰り出す。


『弐式抜刀術・朧』


彼は俺の攻撃に反応したが、少しタイミングが遅かったようで着物の一部と腹部の皮膚を少し斬り裂く。


「っ!?」


ダメージは大した事はないが、彼に少しだけ隙が出来る。

俺は続けざま次手へ転じる。

さらに一歩踏み出しタックルをする。

体勢を崩すと同時に攻撃を繰り出す。


『伍式抜刀術・飯綱』


サムライソードの柄頭は、無防備となった彼の腹部に対して強烈な打撃を与える。

流石の彼もいきなり打撃が来るとは思わなかったようだ。


「がはっ!」


彼の口から血が吐き出される。

内臓にダメージが入ったかもしれない。

彼は後退りした後、大きくバックステップし膝を着く。

地味ではあるが、相当なダメージがあったようだ。

膝を着いているとはいえ、俺は警戒を緩めず腰を落とし柄に手を添え構える。


彼は口を拭い立ち上がり右手に握られていた刀を鞘へ納める。

納刀をして何をするのかと思えば彼は柄に手を添え腰を落とし抜刀術の構えを行う。

これには流石に驚いたが、抜刀術が居合剣術の専売特許という訳でもないので恐らくはハッタリという訳でもないだろう。

所詮、抜刀術も剣術の一攻撃手段に過ぎない。

居合剣術以外の流派にも1つ2つはあっておかしくないのだ。


さて、相手も抜刀術となると攻撃速度のアドバンテージはなくなったと見て良いだろう。

さらに、彼は俺にないものをいくつも持っている。

大きな体格、高い脚力、野太刀のリーチだ。

《縮地法》で高い脚力には勝るかもしれないが、リーチ差は彼の方が長いのは間違いない。


お互いタイミングの機会を計る。

対抜刀術は初めての事だ。

どのタイミングで行けば勝てるのかが分らない。

今までの相手は攻撃速度で勝っていたので後の先を取れたが今回はそうも行かない。


『奥義・摩利支天』


先に彼が仕掛けた。

俺は迷わず《縮地法》で飛び出し彼の攻撃に会わせる様に攻撃を繰り出す。

むしろ、迷っていたら負けてしまう。

何が何でもこの攻撃を凌がないといけない。


『壱式抜刀術・凪』


ほぼお互いの中間辺りで攻撃が重なる。

良く悪くもお互いの刀は交差はしなかった。

サムライソードを握っている手には彼の身体を斬り裂いた手応えが伝わってくる。

それと同時に俺の視界は4回ほど赤く点滅し左上にあったHPゲージは一気に4分の3を失う。


お互いの位置が先ほどとは全く逆になる。

俺は《急制動》で《縮地法》と抜刀術による硬直時間をキャンセルさせ、再び刀を鞘へ納め抜刀術をすぐにでも出せる状態にする。

そして、身体を反転再び《縮地法》を使用し、腹部から大量の血を流しながらこちらへ背中を向けている彼へ向けて走る。

俺の身体中からは大量の血液が飛び散っており、少しずつHPが減って行っているがこのチャンスを逃す訳にはいかない。

元からこのタイミングで決着を着ける予定だった。


『陸式抜刀術・神去』


発動すると同時に俺は鞘からサムライソードを抜き一直線に彼の身体を突き刺す。

手応え十分、このまま横薙ぎに転じて技が完了する。

しかし、刀が微動だにしない。

それどころか刀を彼の身体から抜く事が出来ない。


彼がその状態のまま立ち上がった事で俺はぶら下っている状態になる。

そして、彼の右肘がぶら下っていた俺の顔に直撃し、その反動で俺は刀から手を放し尻餅を着く。


「しまっ…」


その場にいるのは危険と判断し俺はバックステップで後ろへ下がる。

武器がない状態はマズイのだが、その場にいる方がより危険と判断した。


彼がこちらへ振り向いた事で、刀が抜けなかった理由が判明する。

どうやら、刀を持っていなかった方の手で自身の身体から突き出た刀身を握っていたようだ。

握っていた手を放し、そのまま背後へ回して刺さっていたサムライソードを引き抜いて前方へ投げる。

サムライソードが転がった先は、丁度俺と彼の中間辺りだ。


彼の状態は相当重症のようで、深々と斬り裂かれた腹部からは大量の血液が流れ足元には血溜まりが出来ている。

先ほどまで刀が突き刺さっていた胸部からも夥しい血液が流れ、口からも絶えず血が吐き出されている。

そして、俺もよく似た状況だ。

首筋・右肩・右腹部・右足が彼による一度の抜刀術で付いた傷からは止まる気配がない程に血が流れている。

俺の通った跡には、分り易いほど血の道が出来ていた。

そして、現在進行形で状態異常「大出血」によりHPゲージが減っていて、もうすぐレッドゾーンに入る。

恐らく彼もそんな状態だろう。

もしかしたら、俺よりも酷いかもしれない。


間違いなく、次の一手で決着が付く。

その攻撃で倒れなかったとしても「大出血」によってどちらかが確実に倒れるのは間違いない。


彼は震える腕で野太刀を握り締め上段に構える。

絶望的な状況と言えよう。

彼の場合は攻撃するだけで良いが、俺の場合は拾ってから攻撃をしなければならない。

恐らくは俺が拾うタイミングで彼の攻撃が来ると思われる。


どっちみちやらなければ(HP的に)時間切れとなってしまうので《縮地法》で前方へ走る。

彼は俺の事をよく見ている。

俺がサムライソードを拾うそのタイミングで彼は一瞬で間合いを詰め野太刀が俺に向けて振り下ろされる。


《急制動》


俺はサムライソードを拾うと同時に《急制動》で完全停止する。


”ガキン”


俺の前髪を掠めるように彼の野太刀は振るわれるが当たる事なく地面に直撃する。

俺は彼の野太刀を踏み台にし真上に跳ぶ。


『漆式抜刀術・鳴神』


技が発動と同時に俺の身体は急降下しサムライソードの刀身は彼を頭部から真っ二つするかの様に斬り裂いていく。

発動からの斬り終わりまでは本当に早くて丸で稲妻だ。

斬り終わりから数秒経っただろうか、彼の身体本当に真っ二つとなり左右逆の方向へ倒れていった。

そして、俺のサムライソードは、”ピシッ”という乾いた音と共に砕け散った。


しばらく、人の歓声が途絶えた後、それを超える大歓声が闘技場を包み込む。

そして、俺はその大歓声の中で気を失った。

対戦相手のイメージは、サムライスピリッツの牙神幻十郎。

見た目だけね。

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