第12話・デスペナと近況
今回は、説明文が8割占めてます
「ハハハ、今度は僕の勝ちっすね」
2振りの鎌が俺の心臓に深々と刺さっていた。
視界の端に表示されている俺のHPゲージはレッドゾーンに入っており瀕死の状態だと言う事が一目瞭然だ。
1ドット多く見積もって2ドットぐらいの幅しかない。
この心臓に刺さった刃を引き抜くだけで僅かに残ったHPは掻き消えるだろう。
「ゴホッ…」
俺はむせ返り口からは大量の血が吐き出される。
どこかで見たような光景だ。
彼は鎌をグリッっと捻り水平にする。
それだけで1ドット分のHPゲージが削られる。
画面は真っ赤で視界はゼロに近い。
そして、彼は俺の心臓を中心に真横へ振り抜いた。
すると、HPゲージが0になると共に俺の視界は後ろに倒れていく。
薄れ行く意識共に心臓から下の部分が前に倒れるのが見え視界は暗転した。
◆◆◆
目覚めるといつもの牢屋だった。
死亡した事による復活地点への…つまり牢屋に移動したという事だ。
死んだ瞬間と復活した後のデスペナにはもう慣れたものだ。
本当…チュートリアルで何回死んでいる事やら…。
E/Oでのデスペナは、ゲーム内時間1日に限りHP・SP・MPゲージの最大値半減と獲得熟練度の半減である。
まぁ、詰まるところ死んだ後は1日大人しくしておけという事だ。
で、死亡したその場で復活も当然存在するが、条件が存在する上にここは特殊な場所なのでその場での復活は出来ないようになっている。
ちなみに条件とは以下の4つだ。
・死亡からの回復は魔法でのみ(アイテムは不可能)
・復活可能な場所である事
・死亡してからゲーム内時間1日まで
・禁呪リザレクションはデスペナなしで完全復活が可能
魔法は治癒魔法なら何でも良い。つまり、下位法術のヒールでも可能という事だ。
その場合はデスペナが発生する上に、それぞれの回復量に応じた分しか回復出来ない。
何でも良いとは言ったが必然的に回復量の高い法術を使用する事になる。
が、デスペナの負担は大分軽減されており、ゲーム内時間5分だけで済む。
死亡してからゲーム内時間1日は幽霊として死体の近くに存在していられる。
精霊や幽霊などを見る事が出来るスキル”霊視”と治癒魔法を持っているならば復活させる事できる。
まぁ、見えていないとターゲット出来ないのだから当然だ。
ちなみに、”霊視”はエルフなら誰でも持っているし、エルフでなくても霊視は習得出来る。
そして、リザレクションはUO2と同じならば法術に属する禁呪だ。
普通の方法では習得出来ない筈で、恐らくは隠しクエストだと思う。
しかも、回復量はヒールとは違って完全回復かつ範囲魔法だ。
ちなみに、今回は所謂死に戻りでゲーム内時間1日安静にしている必要がある。
流石に能力が拮抗していると思われる対戦相手にデスペナありで勝てるとは思えない。
とは言え、牢屋で出来る事なんて限られている…というより無いに等しい。
俺は右下に意識を向けると、現在の時間が目立たないよう半透明で表示される。
現在の時間とはゲーム内時間とリアル時間の事だ。
ゲームをしている間の体感時間はリアルと同じであるが実際はその10分の1しか時間は経っていない。
理論上は1000分の1もしくはそれ以上にも出来るらしいのだが、脳に掛かる負担がその分増加する。
まぁ、脳(人のCPU)をオーバークロックしているのだから当然だろう。
ヴァーチャルゲームの業界では10分の1以上にしてはならないという規定があるらしい。
何でも10分の1以上にすると連続稼動による負担が極端に増えるとの事。
つまり、10分の1っていうのは安全マージンって事だ。
理論上、10分の1の状態で長時間…極端な話1年や2年稼動しても脳死にはならないらしい。
だからと言って安全という訳ではなく、何らかの障害が出るのは間違いない。
1000分の1にしようものなら1年長くても2年で脳死になる。
とは言え、1年や2年連続稼動する馬鹿もいなければ、常時1000分の1にするようなヴァーチャルゲームも登場する事はないだろう。
まぁ、例外も一応存在する。
現実時間0.1秒未満(ゲーム内時間約1分40秒未満)なら1000分の1にしてもOKらしい。
で、確証はないが、それを利用したスキルが存在すると思う。
0.1秒未満なら規定違反にならないのだから当然利用する筈だ。
俺が開発の立場なら絶対に利用するね。
さて、現時刻はPM23:35…。
いつもより2時間ほど早いがやる事もないしログアウトする事にしよう。
もうちょっと早い時間だったら、ログアウトしてからゲーム内時間1日分をリアルで過ごして再ログインすれば良いのだが今回は大体2時間ちょっと掛かる訳だし今日は大人しくE/Oを終了させる。
◆◆◆
E/Oを終了させたは良いが流石にこの時間帯は寝れそうにない。
いつもはAM2:00あたりまでプレイしている訳だから当然だ。
というか、習慣化しているな。
暇だし近況の報告でもするとしようか…。
ん?誰にだって?…それはあれだよ。
察して欲しい。
まずは、俺の事についてだな。
◆種族スキル⇒『ヒューマLv21』
◆血族スキル⇒『成長+』
◆才能スキル⇒
◆属性スキル⇒『無Lv1』『火Lv1』『水Lv1』『風Lv1』『雷Lv1』『地Lv1』『光Lv1』『闇Lv1』
◆流派スキル⇒『我流Lv26』
◆ノーマルスキル⇒『格闘Lv29』『矛槍修練Lv8』『回避Lv2』『武器防御Lv5』
『気配察知Lv3』『軽鎧修練Lv6』『毒耐性Lv6』『サバイバルLv8』
『魔術Lv1』
という事だ。
ぶっちゃけ、スキル習得時とほとんど変わっていない。
恐らく、あのハーフエルフのNPCのレベルは俺とほとんど変わらないのだと思う。
『魔術』も相手がアレなだけに使う機会は一度もない。
ああ、そう言えば種族スキル『ヒューマ』のレベルが20になった時に固有スキルを習得した。
『成長+』は、スキル熟練度が他の種族よりも多く取得出来る効果がある。
つまり、経験値ブーストなのだが、どのくらい取得量が多いのかよく分っていない。
行った行動・与えたダメージ・自分のレベル・相手のレベル・パーティメンバー数などで大きく取得量が変わるので検証がし難いのだ。
ちなみに装備品は変わっていない。強いて言うならば耐久値が大分減っているぐらいだろう。
そう……悪くはなったが良くはなっていないという事だ…。
次に絢華についてだ。
あいつは今までゲームらしきものをほとんどやった事がないのは知っていると思う。
世間でどんなにクソゲー認定されようが、初めてのMMOってのは自分の中で神ゲー化するのはよく聞くよな?
俺はUOがそうだった。
絢華も例に漏れずE/Oにどっぷりとはまったらしい。
初日にフレンドが出来たのは大きいな。
最近、よく絢華から電話を掛かって来るのだがE/Oの話がほとんどだ。
以前は2ヶ月に1回ぐらいのペースで掛かって来ては、仕事の話や付き合っている男の話などが9割を占めていたのだが…。
というか、絢華とゲームの話をするとは夢にも思わなかった。
仕事から帰ったら必ず2時間プレイ、休日はほぼ丸1日プレイしているとの事。
平日はともかく休日のプレイ時間は俺より長い。
昨日、絢華と話した時に聞いたステータスは大体こんな感じだ。
◆種族スキル⇒『ハイエルフLv19』
◆血族スキル⇒『剣適性+』『弓適性+』『精霊魔法適性++』『霊視(真)』
◆才能スキル⇒『弓の才能』
◆属性スキル⇒『無Lv1』『火Lv1』『水Lv0』『風Lv1』『雷Lv0』
『地Lv0』『光Lv2』『闇Lv0』
◆流派スキル⇒『ルニエス流弓術Lv13』《速射Lv8》《エイムLv9》
◆ノーマルスキル⇒『弓修練Lv21』『法術Lv3』『軽鎧修練Lv9』
『気配察知Lv13』『回避Lv16』『追跡Lv11』『気配遮断Lv9』
『分析Lv10』『野営Lv4』『所持Lv3』
//『木工Lv3』『剣修練Lv1』『精霊魔法Lv1』
とまぁ、種族レベルは俺よりも低いがそれ以外が比較にならないほど充実している。
血族スキルは、『霊視(真)』と『精霊魔法適性++』は最初からで、『剣適性+』と『弓適性+』がLv10で習得したらしい。
才能スキルの『弓の才能』は2日前に習得したらしい。
ちなみに、才能スキルの習得条件は、9割のリアルラックと血の記憶システムが1割関係している。
世代を重ねる毎にその割合を血の記憶側に偏らせていく事が出来るが、初期キャラだとほぼリアルラックと思って良い。
才能スキルがあるとないとではキャラの成長に大きな差が出てくる。
血族スキルの『○○適性△』よりも効果は絶大で、しかも重複効果がある。
言うならば、今のアヤカは弓に特化されたキャラクターと思って良い。
属性スキルは、無属性・火属性・風属性がそれぞれLv1だが、聞いた感じアヤカは精霊魔法を使っていないようだ。
精霊魔法もノンアクティブに入れている事からも明らかだろう。
法術は使っているようだが、多用はしていないみたいだな。
種族スキルのレベルと見比べても法術のレベルはかなり低いから間違いないだろう。
流派スキルは、流派自体と流派に紐付けされたスキルが2つある。
各流派には2つのスキルが付いていて、ノーマルスキルでは習得出来ない特殊なスキルだ。
弓術と言っても流派はルニエス流だけではない。
各国に1つずつ…という訳ではないが世界各地に弓術の流派が存在し、各々使用武器(と言っても2種類)・技・スキルが違う。
これらのスキルも流派の個性を出す為だという事だ。
つまり、ルニエス流は速射と高い命中率が売りという事だな。
ノーマルスキルに関しては俺と共通するスキルも結構ある。
殆ど名称通りの効果だと思って良いらしい。
分り難いのは『所持Lv3』ぐらいか…これは限界所持量を超えた際のSPの減少緩和とダッシュ時のSP減少緩和との事だ。
Lv3は、3歩歩いて(走って)1SP減少という意味だ。
ちなみに、SPは技の使用時にも減る。
『木工Lv3』は生産スキルだ。
レベルも低い事から恐らく矢の作成に用いているだけだろう。
ステータスは、こんなもので良いだろう。
最初の方に出てきた初日に出来たフレンドというのは、ハイエルフの剣使いと精霊使いの2人らしい。
この2人とはほとんど一緒に行動していて、稀に1人から2人がそれに加わる。
1人はハイエルフの法術師、そしてもう1人は剣術と精霊魔法のハイブリット型らしい。
ちなみに法術師の方は男との事だ(中身の性別は知らないらしいが)。
で、最近アヤカの話に出てくるのはハイエルフの精霊使いの方だ。
関西弁が特徴的で場を和ますのが巧いらしい。
一度会ってみたいものだ。
とまぁ、こんなもので良いだろうか。
それにしても、始めた日が同じ筈なのに大きな差を付けられているな。
対ハーフエルフ戦2回目の戦いで前話と違い逆に負けました。
次話で3回目の戦いを書きます。、
一般的なプレイヤーの成長速度は、大体アヤカに近いです。
才能スキル以外は、大体こういう構成で取得しています。
逆にアキラが異常という事です。悪い意味で…。
牢獄闘技場にいる囚人のスキル構成はアキラとよく似た構成になっています。牢屋に入る前、騎士だったり傭兵だったりしたNPCはもうちょっとマシな構成ですが、物心付いた頃から牢屋暮らしのNPCは同じと見て良いでしょう。
ちなみに、現E/Oのアキラは、ちゃんと仕事とE/Oを両立させています。(廃神様になる前の話なので…)




