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中盤~殴打~




 —ノゾム—


 「クソ! お前らいい加減邪魔だーーーーー!!」


 僕は無詠唱でサンダーシャワーをデイダラボッチたち目掛けてぶっ放し、黙らせる。


 デイダラボッチの岩による遠距離攻撃とケルベロスによる中距離攻撃の連携に手間取っている隙を突かれてかなりの魔物が集落を抜けてしまった。

 さらに、空を見ると飛ぶことによって壁を越えられる魔物たちの姿が見られる。


 「今から追いかける? いや、そんな事をしても、ここを死守出来なきゃ意味がない。…なら、倒された分の分裂体をここに置いて、転移陣を破壊しに行く? けど、転移陣に何が待ちかまえているか判らない以上、並列思考が使えないのは…」


 大量の魔物が集落を突破してしまった以上、何か手を打たないといけないのだけど、何をするにも手が足りない。

 さらに悪い報せとして、残っていた分裂体も全てやられたようだ。


 僕は迫り来る魔物を斬り捨てながらも、現状を打開する策を考え続ける。


 ドーピングマジックでもう一度殲滅する? だけど、敵の戦力がまだまだあったら?

 それなら、再びこの島を魔物で埋め尽くされる前に転移陣を破壊する? 移動に時間がかかりすぎる。1箇所潰す為の移動の間に魔物で埋め尽くすされるだろう。

 だったら、1箇所潰す度にドーピングマジックで殲滅する? そんな魔力は媒体や僕自身にも残っていない。


 「え?」


 戦闘をしながらも、打開策を模索していたところに、背後から見知った気配が6つ近付いてくるを察知して、僕は困惑する。

 だって、その気配の持ち主たちは、この島でも比較的安全な所に残してきたはずだった。しかも、こちらに来れないように主人の命令を行使した上で。

 なのに、何故ここへ向かってきている?


 困惑する僕をよそに、近付いてくる気配が6から10に増え、進行速度もさらに加速する。そして、気配が集落にさしかかったところで…


 「『シューティングテンペスト』!!」


 「『煉獄の瞬焔(インフェルノ・ノヴァ)』!!」


 あろう事か、風の上位魔法をぶっ放してきた。しかも、僕を巻き込むように!


 「ちょっ!? いくら何でも、これはっ!」


 ただでさえ高火力のシューティングテンペストを広範囲化させているせいで、逃げれない。仕方がないので、飛ばされないようにその場で踏ん張るしかない。周囲の魔物たちは切り刻まれながら吹き飛ばされるのがほとんどで、僕のようにその場で踏ん張れる奴は皆無だった。


 「はぁはぁ。た、耐えたぁ…って、もう一つ魔法なかったっけ?」


 シューティングテンペストを全身切り傷だらけになりながらも、何とか耐えきったところで、もう一つ魔法が放たれた事を思い出す。ただ、聞いたこともない魔法だったけど…。

 周囲を見渡すと、シューティングテンペストで飛ばされた魔物の中心辺りに、高密度の火の玉が浮いているのを発見した。

 見た感じ、超高温じゃないかな? だって、火の玉から500mほど離れているこの場所の気温が上昇しているんだよ? ってか、あの火球、まだまだ魔力密度が上昇しているんですが?


 「これって、ここもやば…」


 ッカ!!


 危険を感じ、この場から離れようとしたところで、火球が破裂し辺り一帯が光に包まれる。


 ッバーーーーン!!


 光に遅れて、辺り一帯を超高温の炎の衝撃波が突き抜ける。


 「ぐっ、がぁ…、はぁ」


 超高温の炎のせいで全身に火傷を負ってしまい、痛みから膝をついてしまう。

 だが、この魔法はそれで終わりではなかった。僕が地面に膝をついた次の瞬間、


 ゴォォォォ!!


 炎の衝撃波を越える超高温の炎に包まれた。しかし、その炎は1秒もしない内に消えてしまった。


 「がっ…」


 タイミング悪く息を吸い込んでいた最中だった為に、僕は今の炎の熱で喉や肺まで焼けてしまった。

 このままではヤバいので、再生スキルを発動させ、回復に努める。

 回復に努めている間、さきほどの魔法の威力を確認する為に周囲を見渡す。


 「ばは…。マ゛ジがよ゛」


 焼けた喉から乾いた笑いしかでない。なぜなら、火球があった位置から半径約500mが焼け野原になっていたから。もちろん、範囲内にいた魔物で生き残りはいない。火に強い耐性を持つはずのケルベロスですら消し炭になっている。


 「みんなは周囲への対応をお願い。私はこのバカと話しているから」


 周囲の惨状? に恐れおののいていると、魔法を放った本人たちが僕の側にやってきていた。

 その中の1人は、は他のメンバーに指示を出し、メンバーたちはそれに従い行動へ移る。

 そして、僕はこの場に残った彼女に声をかける。本来なら、ここには来れないはずのリンへと。


 「…リン。流石に死ぬかと思ったんだけど?」


 「1人で何もかも出来ると思い上がっているバカは、一度死んだ方がいいわ」


 返ってきた言葉と声、そして僕を見る視線は彼女と初めて出会った時以上に冷たいものだった。それに表情も無表情でマジ恐いッス…。


 「うっ。そ、それよりも、何でここに来れたの? 命令を使ったから、安全を確保するまでは、あそこを離れられないはずじゃ?」


 リンの言葉から、この話題を続けるのはヤバいと感じ、話題を変える。


 「…援軍が来たのよ」


 「援軍?」


 「フリーシアとフローラよ。彼女たちの他にもSランクとAランクの冒険者、合わせて50名がね」


 フリーシアさんにフローラさんだって!? フリーシアさんは、近々この島に調査に来るって言ってたからまだ分かるけど、フローラさんまで来るなんて…。あっ! もしかして、フリーシアさんが待っていた人物って、フローラさんの事だったのかな?


 「そのおかげで、彼女たちにあの場を任せ、私たちは『転移陣を破壊して獣人と船乗りたちの安全を確保する』と言う、名目の元、アンタを殴りに来たのよ。ちなみに、フェルたちは、向こうに残って、警護をしているわ」


 しまった! 話が戻ってしまった! それにしても、あの命令にそんな抜け道が在ったとは…。


 「そ、そうなんだ。それじゃあ、ここはリンたちに任せていいかな? 僕は1人で転移陣の破壊に行くかr」


 ブチッ!


 ん? 今なにかが切れたよう…な?


 ここで会話を続けていると、リンに殴られそうなので、逃げの一手に出ようとしたところで、不意に変な音が聞こえたような気がした。


 「…ノゾム。あんたってヤツは」


 ゾクッ


 リンの地獄の底から響くような声に悪寒が走る。そっと彼女の顔を見ると、かなりおかんむりな様子で(なお、かなりオブラートに包んで表現しています)でこちらを睨んでいた。


 「あ、あの…。リンさん?」


 「この期に及んでも、まだ1人でどうにか出来ると思っているの?」


 「え? いや、あn」


 ドゴン!


 リンの質問に答えようとしたら、彼女に全力で殴られ、地面にめり込む。


 「私たちは! ノゾムの何なの! こんな状況でも頼ってくれないの!! 私たちはノゾムが思っているほど、弱くはないわよ!! それとも! 私たちの事を仲間だと思ってもないの?」


 「………」


 僕は、必死に訴えるリンの剣幕に押され、何も言えず、視線を逸らしてしまう。


 「アンタって、いっつもそう! 自分の思っている事、何も話してくれない!」


 リンの言葉に何も言えずにいる僕に、リンはさらに言葉を重ねる。


 「それは違」


 「そう言う事は、ちゃんと私の目を見て言って!!」


 とっさの反論も途中で遮られる。そして、彼女の目を見て言葉を失う。

 リンは泣いていたのだ。


 …僕は何をしているんだ? 守ろうとした人を泣かしてまで何をしたかったんだ? そこまでしてでも守りたかったものとは? 


 リンの涙を目のして、僕は自分が何をしたかったのか分からなくなった。ただ1つ分かるのは、今のこの(リンに泣きつかれてる)状況は、僕が見たかったものではないと言う事。それほどまでに、リンの涙は強力だった。


 「…リン」


 「…あによぉ」


 自分が泣いている事に気が付いたリンは目をグシグシと擦りながら返事をする。


 「僕は、どうしたらよかったのか? 何が正解だったのかな?」


 「………」


 僕の言葉に何も言わずに耳を傾ける。なので、僕は独白を続ける。


 「僕はみんなを危険な目に遭わせたくなかったんだ。だから、僕がみんなの楯になればいいと思ったんだ。僕が一番強いからね」


 「バカね。私たちはそんな事、望んでないわよ。私たちはノゾムにおんぶにだっこのお荷物じゃないわ。自分の身は自分で守れるぐらいの力を付けているわよ」


 「けど…」


 「疑うなら、ノゾムのスキルで視ればいいじゃない? アンタ、私たちのステータスを再開してから一度も確認してないでしょ?」


 「うっ」


 リンの言葉を信じなかった僕の反論を、最後まで言わせる事なかった。そして、リンの言葉に言葉を詰まらせる。


 確かにリンたちのステータスを再会してから確認した事なかった僕は、言われるままに彼女たちのステータスを視てみる。


 【名 前】 リンスレット

 【年 齢】 18歳

 【種 族】 ヴァンパイア

 【職 業】 魔術師

 【レベル】 137

 【H P】 1329074/1329074

 【M P】 7876298/8376298

 【筋 力】 730822

 【防御力】 438070

 【素早さ】 643293

 【命 中】 594302

 【賢 さ】 803244

 【 運 】 31


 【スキル】

 棒術LV6 体術LV5 豪腕LV2 火魔法LV8 水魔法LV8 風魔法LV8 土魔法LV7 光魔法LV2 闇魔法LV10 雷魔法LV1 氷魔法LV2 回復魔法LV1 無魔法LV9 魔力察知LV5 並列思考LV7 詠唱破棄 魔力操作 合成魔法 偽装 


 【固有スキル】

 ヴァンパイア


 【ユニークスキル】

  魔眼


 【所有者】

 ノゾム・サエ


 【名 前】 サキ

 【年 齢】 16

 【種 族】 魔族

 【職 業】 剣士

 【レベル】 124

 【H P】 221213/221213

 【M P】 546329/546329

 【筋 力】 58934

 【防御力】 8324

 【素早さ】 64094

 【命 中】 54392

 【賢 さ】 50428

 【 運 】 25


 【スキル】

 剣術LV8 居合いLV7 縮地LV8 見切りLV7 体術LV8 火魔法LV5 風魔法LV3 雷魔法LV3 無魔法LV4 魔法剣LV7 直感LV5 気配察知LV5 並列思考LV5 魔力転換LV3 心眼 魔力操作 錬金術 


 【所有者】

 ノゾム・サエキ


 【名 前】 セシリア

 【年 齢】 17歳

 【種 族】 狐人

 【職 業】 術師

 【レベル】 110

 【H P】 24374/24374

 【M P】 45903/53903

 【筋 力】 25783

 【防御力】 27538

 【素早さ】 40439

 【命 中】 26329

 【賢 さ】 25943

 【 運 】 30


 【スキル】

 短刀術LV4 双短剣術LV7 投擲術LV6 火魔法LV5 土魔法LV3 無魔法LV6 気配察知LV7 魔力察知LV6 気配遮断LV8 空歩LV5 罠感知LV8 罠解除LV7 地図作成 夜目


 【固有スキル】

 九尾解放 妖術


 【所有者】

 ノゾム・サエキ


 【名 前】 イリス

 【年 齢】 520歳

 【種 族】 堕天使

 【職 業】 魔術師

 【レベル】 97

 【H P】 13729/13729

 【M P】 30323/49843

 【筋 力】 10473

 【防御力】 12940

 【素早さ】 20483

 【命 中】 19583

 【賢 さ】 38540

 【 運 】 47


 【スキル】

  鞭術LV4 体術LV2 火魔法LV9 土魔法LV6 闇魔法LV5 光魔法LV6 回復魔法LV8 無魔法LV4 消費MP半減 効果範囲増大LV5 限界突破LV6 並列思考LV2 詠唱短縮


 【ユニークスキル】

 反転


 【所有者】

 ノゾム・サエキ



 【名 前】 アイラ

 【年 齢】 ?歳

 【種 族】 ヒト族(元神)

 【職 業】 

 【レベル】 50

 【H P】 6049/6049

 【M P】 7583498/7583498

 【筋 力】 3902

 【防御力】 3492

 【素早さ】 3857

 【命 中】 4309

 【賢 さ】 7384

 【 運 】 60


 【スキル】

 体術LV3 火魔法LV5 水魔法LV6 風魔法LV4 土魔法LV4 雷魔法LV2 氷魔法LV2 光魔法LV5 闇魔法LV2 回復魔法LV4 無魔法LV5 魔力転換LV6 並列思考LV6 魔力感知LV4 回避LV2 魔力操作 MP消費半減 MP回復速度up 詠唱破棄 偽装 看破 隠蔽 合成魔法


 【固有スキル】

 魔力の支配者(マジック・ルーラー)



 【名 前】 ルージュ・イーベル

 【年 齢】 14歳

 【種 族】 ヒト

 【職 業】 召喚士

 【レベル】 30

 【H P】 1348/1348

 【M P】 43503/43903

 【筋 力】 2093

 【防御力】 1593

 【素早さ】 3291

 【命 中】 1209

 【賢 さ】 4309

 【 運 】 48


 【スキル】

 剣術LV2 棒術LV2 大鎌術LV5 短剣術LV2 体術LV3 水魔法LV1 光魔法LV1 闇魔法LV3 召喚術LV5 回避LV5 直感LV2 気配察知LV2 先読みLV3 並列思考LV3


 【固有スキル】

 異世界召喚(残0)


 所有者

 ノゾム・サエキ


 契約

 ホール(スライム)

 フェリエル(ウルフ)

 ヴェーラー(ドラゴンパピー)

 ソリューツ・バティン(悪魔)




 は、はは。マジか。リン、サキ、セシリアはSSランクの冒険者レベルじゃないか。イリスさんもそれに近い。アイラさんとルージュもかなり強くなっている。

 彼女たちを守る? 彼女たちはこれだけ強くなっているのに? 僕はどれだけ傲慢だったんだろう?


 「どう? 私たちはノゾムにとってお荷物だった?」


 リンの言葉に僕は素直に謝るしかなかった。



ありがとうございます。

なお、次回で説明しますが、煉獄の瞬焔(インフェルノ・ノヴァ)はイリスさんの魔法です。

あと、ノゾム君を巻き込んで魔法を撃ったのも、OSIOKI的なモノです。それだけ、彼女たちはお怒りだったと思ってください。

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