本当の狙い?
気付いたら100話超えていたんですね…
つい、4日ほど前に気が付きました…
そして、戦闘開始までいけませんでした…
「そもそも、俺たち獣人は帝国に行くようラスト様に言われている。が、その前にこの島に来る冒険者の相手を任されていたんだ」
衝撃の事実を長の口から語られていくのを、僕は黙って聞くしかなかった。
「ラスト様の予想では、それなりの実力を持った冒険者が来るとの事だ。、その冒険者を帝国兵と俺たち獣人とでこちら側に引き込む作戦を与えられたのだ」
長の話を聞く限り、最初から僕たちを捕らえる為に帝国に襲われていると言っていたようだ。だけど、そうなると疑問が残る。
「ちょっと待って! あんたたちは、その帝国兵を殺してたじゃないか?」
そう、獣人は僕たちと一緒になって帝国兵を皆殺しにしている。普通、身を寄せるように言われている国の人間を殺すか?
「? 敵を殺すのは当たり前だろ?」
何だ? 長から帝国兵と同じ違和感を感じたんだけど? もしかして、長も…と言うより、獣人全てが帝国兵たちと同じ状態なのか?
「ノゾム様、捕縛終わり、ました」
長考しそうになっていた僕の意識は、セシリアの出現により、現実へと戻ってきた。
「…ありがとう。みんなの所に戻りたいんだけど、そうもいかなくなったから、みんなをここに呼んできてほしいんだけど、いいかな?」
「はい! 少、しの間、お待ち下…さい」
言い終わるやいなや、セシリアはリンたちの所へと走って行ってしまった。
僕は、みんながここに来るまでの間に、意識の残っている長を始めとした数人の獣人の意識を刈り取り、動けないように縛っておく。
ほどなくしてセシリアがリンたちを連れて戻ってきた。
「ノゾムが呼んでるって、セシリアが言ってたけど、どうしたの?」
「それなんだけど、ちょっと面倒な事になってきたんだよ」
みんなが僕のそばに集まったので、集落での出来事を伝える。
「私たちは嵌められたの?」
僕の話を聞き終えたリンの第一声がこれ。
「嵌められたのは確かだと思う。ただ、僕たちと言うよりは、冒険者を嵌める理由が分からないんだよね?」
「それなら、帝国兵が獣人の集落を襲った理由と、獣人たちが帝国兵を殺した理由もじゃない?」
サキが腑に落ちない点を挙げてくれた。
確かにそれも分からないんだよなぁ…。
「望君。一度、今回の流れを最初から整理してみない?」
うんうんと唸っていた僕たちにアイラさんが一つの提案をする。
「最初からって言うと、この島に着いた辺りですか?」
「いいえ、もっと前よ。多分、今回の件の始まりは、私たちがワイバーンの群を目撃した所からよ」
「アイラ様、あの時なのですか?」
ルージュが戻り過ぎじゃないかと暗に言っている。
「そもそも何故、操られていりれはずのワイバーンの群が、あれだけ自由都市に近い場所を通過したのかが問題なのよ」
「そうか! 魔物を操れているなら、もっと人目に付かないルートでここを目指せたはずだ。それをしないで、あえてあの場所を通ったって事は、最初から冒険者を引っ張り出すのが目的だったのか!」
アイラさんの指摘で、ワイバーンの件から仕組まれていた事に気が付く。
「そして島に来てみたら、帝国兵が獣人狩りをしているとの情報が入る。これもタイミングが良すぎじゃないかし?」
「最初から仕組まれていたと思うと、確かにそうね」
アイラさんの次なる疑問にサキが相づちをする。
僕たちは、事前に魔族が今回の件に関わっているのを知っていたから、この時点で帝国と魔族が繋がっていると推測した。しかし獣人の件のせいで、今となってはそれすらも僕らを嵌める為の情報だったんだと認識する。
「次は帝国の襲撃ですね。これは、獣人が帝国と敵対していると見せかける為のもで間違いないですよね?」
ルージュが少しだけ自信なさげに言葉を口にする。間違えではないと思うので、特に肯定も否定もしないまま、ルージュの言葉を引き継ぐ形で僕は言葉を発する。
「そして、帝国の襲撃から間を置かずに、魔物を使った物量作戦にて、島の生き残りを片付ける…か」
「主様、こうしてみて思ったのだけど、魔族の目的ってなんなのかしら?」
「…へ?」
イリスさんの言葉に一瞬理解が追い付かず、間抜けな返事をしてしまった。
「だってそうでしょ? 獣人を襲うって言っていた割には、その獣人を帝国に付くように言ってる。かと思えば、獣人は帝国兵を殺す。なんだか、魔族の思惑がどこにあるのか分からなくなってきているのよね」
………言われてみれば、その通りだ。最初は獣人の殲滅だと思っていたけど、すでに帝国に行くよう言っている時点で、それは嘘だと言う事になる。魔族はいったい何がしたいんだ? いや、それ以前に何故この島に冒険者を招き入れた?
根本的な疑問に思い悩んでいたのに、何故か唐突に帝国兵との会話が頭を過った。
——王国との戦争に備えての捨て駒だ。向こうはエルフを引っ張り出してくるだろうから、こっちは獣人で対応するらしい。
……そうか!
「分かった! 魔族の狙いが!」
「っ! ちょっとノゾム! いきなり大声を出さないでよ!」
僕の隣にいたリンから文句が飛んできたけど、それどころじゃない僕は、そのままみんなに自分の辿り着いた答えを伝える。
「それよりも、魔族が何を企んでいるかだよ! 魔族は戦争の起きやすい環境を作ってるんだよ」
「ノゾム君、もっと詳しくお願い」
結論だけを伝えても理解できなかったらしくサキは説明を求めてきた。周囲を見渡すと、みんな僕の言葉にピンとこなかったらしく、首を傾げている状態だ。
「そもそも、魔族がこの島を襲うメリットが無い。じゃあ、何故襲うのか。そこにいる者たちを襲う事にメリットが生まれるからだ」
「それって獣人の事じゃないわよね? 最初に襲う意味が無いって言ってるし」
「アイラさんの言う通り、獣人じゃない。魔族の狙いは僕たちだ。と言っても、正確には僕たちじゃなく僕たちが所属している団体が標的なんだよ」
「冒険者…がですか?」
「そう、冒険者なんだ。理由は、最初にも言った通り、戦争を起こしやすくする為」
「何で冒険者を襲う事が、戦争に繋がるのよ?」
リンが冒険者への襲撃と戦争が『=』で繋がらないようで僕に質問してくる。
「もちろん、そこら辺の普通の冒険者を襲っても、戦争にはないらいよ? だけど、その冒険者がSランク、またはSSランクだったら?」
『…………』
僕の質問に誰も答えられない。
「SSランクは世界でも僕を含め6人しかいない。今回の件で、1人または2人始末できれば? そして、自由都市は冒険者が治める場所だ」
「まさか!? 魔族の狙いが冒険者と言うのは、自由都市の戦力を削る為ですか!? それは、王国と帝国への抑止力がなくなるって事です! つまり、いつ戦争が起きてもおかしくなくなります!」
僕が幾つかキーワードを口にすると、ルージュが僕の辿り着いた答えと同じ答えに辿り着く。さすが、元王族。
「あくまでも予想の範囲だけどね。けど、大きく外れてはいないと思うんだよね。残る疑問は、帝国兵と獣人の殺し合いだけど、これは王国との兵力差を無くす為の切り捨てだったのかもしれない」
その為に暗示? 催眠? 洗脳? を双方に施したんだろう。精神支配? 系のスキル持ちが相手にいると見ないと、こちらの仲間を奪われる事になる。魔物を操るスキルを持つ敵も控えているのに、ここにきて厄介な相手が増えるとか、勘弁してもらいたいんですが…。
ありがとうございます。
次回こそは戦闘開始! …のはず?(予防線)




