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絵を描く黒猫  作者: よろず
おまけ
53/56

8月7日

 絵を描く華の背中見つめながら、オレはスマホで時間を気にしてる。あと一分。ポケットに隠しておいた箱気にして、ソワソワする。

 5、4、3、2、1…


「華。お誕生日、おめでとう。」


 立ち上がって言ったオレの言葉に、華が筆を止めて振り向いた。首を傾げて、ちょっと考えてる。

 そんな華に、オレは持ってた箱からブレスレットを取り出して、華の腕に付けた。クリスマスのネックレスと合わせた、ピンクゴールドのハートのブレスレット。ハートを真ん中に、等間隔で二つのピンクと白の石の花が付いたやつ。


「誕生日プレゼント。華、産まれて来てくれて、ありがとう。オレ、華に会えて、すっげぇ嬉しい。」


 にっこり笑って、華のおでこにキス。

 華はブレスレット見つめてから、嬉しそうに笑ってオレを見た。


「ありがとう。秋に会えて、嬉しい。」

「今日は華の為の日だよ。華が望む事、なんでもしてあげる。」


 ほっぺ両手で包み込んで、おでこぶつけて華の瞳覗き込む。オレの瞳見返して、ちょっと考えてから華がしたお願い、可愛い過ぎた。


「たくさん、キスして、愛してるって言って?」

「わかった。華が望むなら、一晩中でも言うよ。好き。大好き。愛してる。」


 そのままキスして、舌絡めあって、全身キスしようとしたら、止められた。


「お風呂入る。」


 無頓着な癖に、こういう事気にして顔赤らめるの可愛い過ぎ!


「じゃあ一緒に入ろう。」


 華を抱き上げて、風呂場に向かう。その間も、キスたくさんして、愛してるって囁く。


「華のこと愛し過ぎて、どうにかなっちゃいそうなくらい愛してる。」


 一晩中、キスして、愛の言葉囁いて、華が限界で意識無くなるまで、オレはそれを続けた。



 昼頃まで寝て、まだ起き上がれない華には服着せて、そのままベッドで寝かせておく。

 オレはハッピーバースデーの歌歌いながら、ケーキやご馳走作る。華の家にはオーブンレンジが増えた。華パパが買って持って来て、有難く使わせてもらってるんだ。すげぇ便利。この家で作れるもの増えた。


「オレのお姫様、イチゴはいかが?」


 ベッドで横になってる華に、オレは皿に乗せたイチゴと牛乳を運ぶ。

 このイチゴ。華パパに頼んだら探して買って来てくれた。持つべきものは金持ちのパパだなって思った。


「秋、痛い。」


 不満顔の華にキスして、イチゴを口に運ぶ。昨夜はちょっと、愛し過ぎちゃった。華が可愛い過ぎたんだから仕方ない。


「ごめん。愛してるよ、華。」


 イチゴを食べさせる間にも、顔中にキスする。


「秋、食べられない。」

「そう?じゃあこうしたら両方出来るよ。」


 イチゴを咥えて、そのまま華にキスした。舌で潰して、華の口の中送り込んで、飲み込ませる。顎に垂れた汁はオレが舌で拭った。


「普通が良い。」


 華は気に入らなかったみたいだ。残念。


「他にお望みは?」


 イチゴ完食して牛乳飲んでる華に聞いた。華は少し考えて、オレを見つめてからふんわり可愛い花の笑顔。


「秋がいれば、良い。」

「オレは華のものだよ。愛してる。可愛いオレの華。」


 グラスと皿は床に置いて、深いキスをする。そのままベッドに押し倒して、また顔や首や掌にキスしていく。くすぐったいのか、華はくすくす笑ってた。


「秋、秋、秋。」


 掌から腕を上ってキスしてるオレの頭を空いてる手で撫でてる華がオレを呼ぶ。


「何?」


 腕に唇付けたまま見上げたら、華はまたくすくす笑ってる。


「秋。」

「なぁに?」

「秋。愛してる。」

「オレも、愛してる。」


 笑い合って、舌を絡めてキスをした。



 飽きずに長い事、ベッドの上でキスして、愛してるって言い合ってたら、玄関でベルが鳴った。自動ドアスルーで玄関で鳴らすやつは決まってる。

 ベッドの上の華のおでこにキスしてから、オレは玄関に行った。


「なんすか?」


 不機嫌全開で開けたそこには、赤いハートのバルーン持った田所と、母親、華パパまでいた。


「ダメよ秋!こんな大事な日に独り占めなんて!」

「美味しそうな匂いがしますね、私達も色々買って来ました。」

「すまない、秋くん。私も華に、誕生日をちゃんと祝ってやりたくてだな。」


 なるほどそう来たかってオレは溜息吐いた。予想しとくべきだったな。

 まぁ盛大な誕生日。良いんじゃねぇのって思って、オレは三人を招き入れる。


「華ちゃん!ハッピーバースデー!!」

「華さん、お誕生日おめでとうございます。」


 母親は絵の部屋入ってクラッカー鳴らして、田所は赤いハートのバルーンを部屋に放つ。華パパは、少し遠慮がちに中に入った。

 三人共、ベッドの上でびっくり顔で固まってる華を見て、それぞれの反応をする。

 母親は髪の毛やってあげるって言って駆け寄って、田所は鉄人ビームをオレに向けてくる。華パパは、ちょっと気まずそうにおろおろし始めた。

 母親が着替えさせるって言って寝室の戸を閉めたから、オレは逃げるように台所に入る。料理仕上げなくちゃ。


「秋くん。貴方って人は、誕生日に恋人をベッドから出られなくするなんて、もっと自制を覚えなさい。そもそも貴方達はまだ高校生なんですよ?」


 鉄人が追って来て説教が始まった。

 へぇへぇって適当に流してるオレにまた溜息を吐いて、田所は説教諦めたみたいだ。


「そういえば、お父さん、今日百合さんの方は何かするんですか?」


 華の誕生日は、ママの命日だ。

 一応事前に華に確認したら、散骨したからお墓は無いんだって言ってた。だから毎年この日は、一人で空を見てたんだって。


「百合は、いつもここに一緒にいるから、特には何もしないんだ。」


 そう言って華パパが胸元から取り出したのは、銀色の菱形のペンダント。何かわからなくて首を傾げたオレに、田所が教えてくれた。遺骨がそこに入ってるらしい。



 寝室から出て来た華は、Aラインの白いワンピースにオレが見たことないバレッタでハーフアップにしてた。

 ワンピースは華パパから、バレッタは田所からのプレゼントらしい。母親からは、黒猫の新しい財布をもらったって、嬉しそうに見せてくれた。


「華、誕生日おめでとう。パパとママの子に産まれてきてくれて、ありがとう。」


 恥ずかしそうに、でも勇気を出した華パパの言葉で、華が泣いた。

 わんわん泣いてオレに縋り付いて来るから、抱き締めて、たくさんキスして、オレは囁く。


「華、みんな、華を愛してるよ。」


 初めての華の誕生日は、オレの思惑以上に、盛大なものになった。

 これがこれから毎年、続く事になるんだ。

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