課題
「……相変わらず、お前らが持って来るもんは美味ェな……」
リリウム達から油淋鶏バーガーを受け取り、かぶりついたオズワルドは、ため息をつきながらそう呟く。
そんなオズワルドの周りで、リリウム達も同じく油淋鶏バーガーを食べながら無言で頷いていたりするのだが。
「それで? あなたから私たちを呼び出すのは珍しいと思うんですけど?」
「何か動きでもあったのか?」
ちなみに今回、いつものようにリリウム達が持ち帰った料理をオズワルドに渡すために声を掛けたのではなく。
ダンジョンから戻ってきたという報告を受けたオズワルドが四人を呼び出し、こうしてご相伴に預かっている次第。
その呼び出した真意を尋ねたのだが……。
「まぁ……その……」
歯切れの悪いオズワルドに、何かを察したガブロがため息。
「はぁ。大体察しはついちょる。わしらの『OP』枠に関する話じゃろ?」
「それでこの態度という事は……」
「無理だったのだな……」
そのガブロの言葉から連鎖的に察したようで、他の三人も肩を落とす。
――が、
「いや、『OP』は外れることが決定したんだ」
そうではないとオズワルド。
どころか、当初の四人の目的だった『OP』枠からの脱却も叶う事を告げると……。
「? いい事ではありませんの?」
「そんな落胆する事じゃあないだろう?」
「そうじゃそうじゃ。これでわしらも一層美味い物を持って来られるようになるぞい?」
「何か……事情があるのか?」
四者四様に、オズワルドへと疑問を投げかけ。
再度ため息をついたオズワルドは、意を決して四人へ通告。
「王直々に『OP』枠からの脱却と、それに伴う冒険者ランクの昇格式を開催するとのお達しだ。……分かっているとは思うが、この昇格式ではお前らが昇格する冒険者ランクに見合うようなものを献上する必要がある」
その内容は、オズワルドが頭を悩ませるにはまだ遠く、この後に続く情報に四人は意識を集中。
「さらに、『ヴァルキリー』の強い推薦でお前らはBランクに色々すっ飛ばして大幅昇格」
これか、と、オズワルドが頭を悩ませる内容を把握した四人は。
「最後に、王はお前たちに――食い物の献上品をお望みだ! 以上! ごっそさん!!」
最後に特大な爆弾を押し付けられてしまい。
オズワルドは、伝えることは伝えたと、油淋鶏バーガーを平らげて席を立ち。
「この間のカレーみたいなものをまた所望されているぞ~」
と、もはや明白な王のリクエストを告げて冒険者ギルドへ。
残された四人は、しばらく互いに顔を見合わせているしかなかった。
*
「へー! じゃあやっと最初の要望が叶ったって感じですか」
仕事を終え、買い物を済ませ。
四人の登場を待ち、調理開始。
本日はそこそこの広さのキッチンにラベンドラさんと並んで調理中でござい。
一人より二人の方が効率よく料理出来るからね。
「叶うには叶ったが、その前にな……」
「王への献上という、厄介な問題が現れおったわ」
「? またカレーを献上すればいいのでは?」
「いや、ダメだ。それでは前回から進歩が無いと判断されかねない。カレーのように新しく、インパクトがあり、かつ誰も食べたことのないような料理を提供しなければならない」
「何か良い案などございませんか?」
う~む……。
まさか王様の胃袋をカレーが掴んでしまっていたとは。
まぁ、日本のカレーは美味いからなぁ……。
にしてもカレーと同じくらいインパクトのある料理か……。
何かあるかな?
「このタレと一緒に焼くだけでいいのか?」
「そうです。あ、最初はタレを入れずに皮目をパリッとするまで焼きます」
ちなみに今は照り焼きチキンを調理中。
もちろんタレは市販の鶏肉に絡めて焼くだけのやつを使用。
仕事の後はとことんまで楽したいの。
「今まで俺が作った料理じゃダメですよね?」
「どれもこれも間違いなく美味いが……」
「献上するほどのモノかと言われると……」
「見た目のインパクトが欲しい。カレーで匂いに対するアプローチを行ったから、今度は視覚から攻めてみたい」
なるほど……? 見た目のインパクトがある料理か……。
「使う食材は決まってるんですか?」
「まだだな。一応、手持ちにそこそこの魔物の素材はあるが、足りなければ急ぎ足でダンジョンに潜ることになる」
「味だけの勝負ならカニクリームパスタでも出しときゃ楽なんじゃがのう」
「インパクトがあるかと言われると……ですものね」
皮目が焼けたら裏返し、タレをかけてじっくりと。
それにしても照り焼き、日本人が思ってる以上に海外に認知されてるよね。
寿司、ラーメン、天ぷら、カレー。この後位に照り焼きって位置してるんじゃない?
で、日本人を悩ませる問題が、照り焼きが食べられるお店がほとんどないって事。
というか、照り焼きが有名な店ってマジで聞いたことない。
で、悩んだ挙句、照り焼きを食べたがる外国人を連れていくのは某ハンバーガーチェーン店というね。
だって俺らの一番馴染みがある照り焼きは、てりやきバーガーなんだもん。
そう考えると照り焼きって家庭の味なんだなぁと。
「ちなみに、今のところ使う予定の素材って?」
で、調理しながら気が緩んでたんだろうね。
普通の俺ならこんな事口走らない。
「おお、これじゃわい」
ドンッッ!! と、某海賊漫画もびっくりな効果音で現れたのは……豚肉?
縦、成人男性。
横、成人男性。
高さ、成人男性の頭。
くらいの塊肉が登場。
豚か? ……何なら、マグロの大トロみたいな見た目にも見えるぞ?
「オーク族の最上位種の肉だ。しっとりとした肉質でうま味は極上。脂はあっさりしていて、かつコクがある。今のところ手に入る肉では最高ランクだろう」
オーク……かぁ。
豚肉……と思いたくないけど、豚肉なんだろうなぁ。
出来ればこの素材を使ってインパクトのある料理……ねぇ。
「カケル、焼けたぞ」
「あ、はい。じゃあご飯盛るんで、切ってからそこに並べましょう」
とりあえずはご飯出来たし、腹ごしらえにしよう。
空腹で考えてもいいアイデアは出ない。
本日は、トリの照り焼き丼なり。




