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エプロンエルフ()

 ……いやぁ、それにしても。

 似合うなぁ……エプロン。

 鍋を前に真剣な表情でトリニチカシイオニクを揚げてるラベンドラさんには悪いけど、似合い過ぎなんよ。

 ――俺が小学校高学年の頃に学校で選んだ、ドラゴンのイラストがプリントされたエプロン。

 別に他意とかないですよ?

 ただ、油跳ねるな―と思って、万が一にも装備とかを汚しちゃいけないじゃん?

 だから、エプロンを着てもらったんだけどさ。

 まさかここまで似合うとは……。


「カケル、揚げ具合はこれくらいでいいのか?」

「う~ん……あ、はい。それくらいで大丈夫です」


 アレだな。イケメンは何着ても似合うって奴だな。

 にしても、ラベンドラさんも流石料理をしてたって感じで、見極めが上手いな。

 さっきの揚げ具合の確認も、完璧だったし。

 一度は横で俺が揚げてたのを見てたとはいえ、それだけでタイミングとか掴んだんだろうか?

 ちょっと聞いてみるか。


「にしても、タイミング完璧でしたね。俺ので時間でも計ってました?」

「? 時間が経つと揚げている時の音が変わるだろう? その音の変化に意識を向けていただけだ」

「そ、そうなんですね」


 え? 揚げてる時に音とか変わる?

 そりゃ、最初は勢い良くて、時間が経てば落ち着いていくとは思うけど……。

 その変化くらいしか記憶にないぞ……?

 こう、エルフにしか聞こえない周波数でもあるのか? 

 それとも、俺が未熟なだけで、音の変化に気付けていないのか。


「向こうの世界でも揚げ物は何度も作ったが、ようやく感覚を掴んできた実感がある」


 ラベンドラさんはこの通り、練習に余念がないみたいだしなぁ……。

 練習よね? ……いや違うな。単純に食いたいだけだなこの人。


「トンカツはもうカケルの作ってくれたものと遜色ありませんわよ?」

「ソースの再現だけが悔やまれるな。いや、間違いなく90点くらいの出来なんだが……」

「チキンカツの練習も兼ねて作っていると、昨日のバーガーに今日のコレじゃからな。またしばらくは揚げ物が続きそうじゃわい」


 こんなこと言ってるけど、声が全然嫌がってないんだよな。

 まぁ、揚げ物は全部美味しいからね。しょうがないね。


「肉厚で噛み応えのあるものばかり作ってきたが、今日のように薄いタイプのも今後増やすとしよう」


 とか言いながらニヤリと笑ってましたわ。

 あー……しまったな。

 頭にバンダナ巻かせたかったわ。これは完全な俺の趣味だけど。


「そろそろ出来る。おかわりがいるやつは各自皿を持ってこい」


 という言葉に、当然三人はダッシュで並び。

 まるで、プレゼントを貰おうとワクワクしながら目を輝かせている子供のような表情で。

 ラベンドラさんから揚げたトリニチカシイオニクを受け取り、俺からソースとタルタルをかけてもらい。

 嬉々として席に戻っていく。


「で? どうじゃった? 料理の心地は?」


 ラベンドラさん本人も、自分用のお代わりを皿に乗せて席に戻ると、ガブロさんからの質問。

 心地も何も、変わらないでしょ。

 やることが変化してるわけでもないんだから。


「かなり快適だった。火加減を自分で調節する必要がなく、常にある程度で一定。強くも弱くも自在で、あれがあれば助かる冒険者や飲食店は多いにいるだろう」

「たかが火加減ですわよ?」

「その火加減の為に私がセルフバーニングをして料理をしていたのを忘れたか? 安定した火力を安定して供給する、それがいかに料理において重要な事か……」


 ……多分、コンロの事を言ってるんだよね?

 まぁ、確かに? うちはガスコンロだけど、コンロがない人からしたら便利だよなぁ。

 ていうか、今サラッと出てきたけど、セルフバーニングいず何?

 まさかストレートに自分が燃える魔法な訳ないよね?


「作るとしたらどんな機構になると思う?」

「まず魔力石が大小さまざまに多数いる。それに魔力を逃がさず、かつ熱を伝える素材も……」

「んなもん、アダマンやらミスラル系統になるぞ?」

「値が張り過ぎますし、そもそもそれらの加工を行える工房も存在するか分かりませんわよ?」


 話がおっきくなってきたなぁ……。

 信じられるか? これ、ガスコンロの話をしてるんだぜ?


「出来たとして、まずは王に献上だろう。その後、貴族。我らの手に入るようになるのはどれほど先か……」


 行き過ぎた科学は魔法と区別がつかない、なんて言葉があるけど、どうやら異世界ではガスコンロすらオーバーテクノロジーみたいです。

 IHのコンロとか見せたらどんな反応するだろうね。


「せめて火力の調整がもう少し楽になればな……」

「強くは簡単に出来ますわよ? 弱くするのが難しいだけで」

「弱い状態を維持するのが難しい、だな。弱くするだけならそれこそ水でもかけてやればいい」

「それだとすぐに火が消えるんだ! だいたい、料理中に水をかけるやつがあるか!」


 あー……お茶がうめぇ。


「ふー、うまかったわい。しかし、こんな美味い揚げ物があるなら、ビールを飲みたくなるのぅ」


 エルフ達が言い合ってるのを余所に、ガブロさんがご馳走様。

 ついでにビールをねだられたが、無い袖は振れぬ。

 というか、あなたはこの間日本酒持って帰ったでしょうが。


「買ってないですねぇ」

「むぅ……」


 拗ねてもダメ。

 というか、拗ねるドワーフとか誰得だよ。


「ふぅ。満足した」

「大変美味しゅうございました」

「カケル、私たちの持ち帰り分も私が作ろう。同じようにやればいいのか?」

「あ、そうです。じゃあお願いしちゃっても?」

「任せておけ」


 というわけで持ち帰り分もラベンドラさんが作ることに。

 と言っても持ち帰り用は油淋鶏バーガーなわけで。

 米からバンズに変わっただけで、料理自体は変わらない。

 さっき揚げるのは上手に出来てたし、まぁ任せても大丈夫でしょ。

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― 新着の感想 ―
[一言] スチーム調理とか見せてやるしか 魔法で再現できそうだし
[一言] 海○雄山の天ぷら職人試験に合格出来るなw
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