あれっ?
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
えぇと……気まずいんですけど。
あんだけ食べる前は騒いでいたのに、一口食べた瞬間からコレ。
姉貴もリリウムさんもガブロさんもマジャリスさんもラベンドラさんもみーんな無言。
あれ? そ、そこまで反応に困る様な味だったか?
ちょ、ちょっと食べてみるか……。
パクッ。
「…………」
あー。――あー、なるほどなぁ。
これ、反応に困ってるわけじゃなくて、絶句かぁ……。
美味過ぎなんだなぁ……。
言葉を発する余裕がないというか、言葉を出すくらいなら味わっておきたいって事か。
にしてもうめぇな。美味いってしか言えないくらい美味い。
「お――驚いたな」
カニクリームパスタを皆が食べて、最初に言葉を発したのはラベンドラさん。
ただ、その言葉は、味の感想というか、味に対しての驚愕というか。
「正直、過去のクリームパスタを想像していたんだが……」
「まるで次元が違いましたわ」
「……ふぅ。これはちょっとこれまでとはレベルが違う」
「何がここまで美味くしたんじゃ?」
皆さんようやく戻ってきましたね。
あれ? 姉貴は?
あー……。まだパスタ見つめながらゆっくり噛み締めてらっしゃる。
そういや姉貴はエビクリームパスタは食べてないんだっけ?
あれ食べてなくて、これ食べたんならそりゃあこの反応にもなるか。
食べてるリリウムさん達があの反応だもん。
「多分、蟹の身の味が物凄くマッチしたんでしょうねぇ……」
なお、作った側も何が作用してここまで美味しいものになったか想像出来ずに曖昧な答えを返すしかない模様。
いや、俺の記憶にここまで美味い食い物無いって。
「作り方は特別なものでも無かったし、再現は出来そうだが……」
「調理士として美味しくなった要因を知りたい、だろう?」
「理屈で分かる事ですの?」
なんて言いながら二口目。
「ふぅ……美味い。……美味いとしか言えん」
「ああ、美味い。美味いんだ……」
「とても……非常に美味しいんです」
「美味すぎる!!」
皆さん見事に語彙消失。
いや、分かる。というか、この美味しさの料理に美味い以外の感想を言うのが野暮って感じ。
本当に美味い物を食べた時、人間って美味い以外の感想が出て来ないんだなぁ……。
「翔……」
「ん?」
姉貴復活!!
あと、久々に名前で呼ばれましたわね。
散々愚弟呼びだったからなー。
「シェフを呼べ!!」
「俺だよ」
「……いくら欲しい?」
「何を言い出すんだあんたは」
はー。なんで呼ばれたか心配して損した。
でもまぁ、金取れる味って認識されたんなら、褒め言葉として受け取っておきますわよ。
「いや、マジで金をとってもおかしくない味だと思うわよ?」
「異世界産のカニが必要なのに金を取るもクソもないだろ」
「それもそっか」
なんて言いながら姉貴も二口目。
いつの間にか正座解除してるし。
ご機嫌に足をパタパタさせてるし。
「この味が向こうでも食えるんじゃろ?」
「再現用の素材は全て揃ってる」
「これ、あいつらにも味わわせてやりたいな」
「Sランクパーティも後ろ盾に出来るなら、心強いですものね」
「既にラベンドラの作る再現料理には篭絡されてそうじゃがの」
あーっと……?
なんか、また色々と考えてません?
この場合は企んでる、か。
まぁ、俺には関係ないか。
「それにしても美味い。クリームソースの濃厚な味はもちろんだが、そこから顔を出す『――』の身のうま味と甘み」
「それらが長く口の中に居続けてくれますの」
「パスタの茹で加減も完璧で、ソースが絡むとパスタの食感も引き立つわい」
「ソースがメインでありながら、パスタの主張も忘れない。それらの調和が、また味を一段引き上げているのだろうな」
三口目にしてようやく食レポらしい食レポが出てきた。
このカニクリームパスタの衝撃は、克服に三口かかるらしい。
受ける、撮っとこ。
「いや、美味しかった! 美味し過ぎた!!」
ここで姉貴が誰よりも先に完食。
くっそ満足そうな顔してますわね。
「これを食べられるとなると、今後も一定量は『――』の身も確保しておきたくなるな」
「身だけあっても他の材料が必要だろう? ワイバーンの手羽元が必須なのを忘れるな」
へ? ワイバーンの手羽元が要るの?
クリームパスタ再現するのに?
「そうじゃったな。一応まだ手羽元のストックはあるじゃろうが……」
「そう気軽に出会える魔物じゃありませんもの……次出会ったら、せん滅しませんと」
ひっ!?
リリウムさんから変な殺気漏れてる!?
「ふぅ。ご馳走様。……誇張抜きに私の記憶の中で一二を争う味だった」
「ラベンドラでそれなら俺たちなら一位の味だな」
「ですわね。また定期的に食べられると嬉しいですわ」
「じゃな。……それならもう次の素材を渡しておくか」
完食し、食器を重ねて持って来てくれながら。
そんな事を言ってくる四人。
「あ、まだカニの身があるんで……」
なんて俺の言葉は、無言で無視。
……まぁ、言われた通り、今後も出すために身を保存しとけって事なんだろうけど……。
「これと、これと、こいつとこいつもじゃな」
どんどんドサドサと、テーブルに積まれるピンクの塊。
……肉っすねぇ。
しかも、皮付き。
――天地明察! 多分鶏肉!!
というか、前回のトリッポイオニクには鳥皮が無かったから、皮が付いてるなら鶏肉歓迎!!
……そこ、前回は鶏肉じゃないとか言わない。
俺はアレを鶏肉と認識してるんだから。
「それじゃあ、明日も頼む」
「よろしくお願いしますわ」
「お前の腕は俺たちが保証する」
「楽しみにしとるぞい」
と、早々に魔法陣の中に消えていく。
あの……クーリングオフとかは……。
「翔ー? 早速塩茹でしよー?」
姉貴はする気はなさそうですね。
ハイハイ、試食すればいいんでしょ。




