いざ、さらば
最終回です。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@」
「え? ――うわっ!?」
突如として誰かが背後で声を発し、その直後に襲ってくる謎の衝撃。
コタツに入って、そこでパソコン作業していた俺は、パソコンに倒れ込み。
「だ、誰!?」
慌てて振り向くと、そこには。
「あ……」
あまりにも懐かしい面子の姿が。
ただ、エルフの三人が何かを話し合ってるようで……。
「これで大丈夫か?」
「まさか翻訳魔法も切れているだなんて」
あ、翻訳魔法を再接続してたのか。
てことは、さっきの謎の言語は異世界語だったわけだ。
――それにしても、
「久しぶりですね」
「うむ。結構時間が掛かってしまった」
「翔はだいぶ老けたな」
「そういう皆さんはそこまで見た目変わって無いですね」
ほとんど外見に変化がないのを見るに、やっぱりエルフって長寿なんだなぁ、と。
ガブロさんだけ唯一しわが増えて髭も白くなってるけど。
「まぁ、エルフだからな」
なんてマジャリスさんが言った時。
くぅ~、と誰かのお腹が鳴った。
「腹が……減ったわい」
やっぱりあんたかガブロさん。
「カップ麺でいいならありますよ」
「む、いいな」
「初めてカケルから振舞って貰ったのもカップ麺でしたわよね」
「バターとマヨネーズ、ミルクなんかを入れたりしてな」
「懐かしいのぅ……」
本当にね。
*
「で、聞かせて貰えます?」
「うむ、今までの事だな」
ケトルでお湯を沸かし、カップ麺にお湯を注ぎ。
待ってる間に、聞きたいことが山ほどある。
さしあたって、とりあえず何があったのかを聞くとしよう。
「あの日、我々の世界に戻ったのだが」
「バハムートが活性化し始めてな」
バハムート、バハムート……。
ドラゴンじゃなくて、確かクジラで……。
琵琶湖サイズのやつだったか。
「活性化?」
「何を思ったか地上へ出て来ようと浮上を初めてな」
「スタンピード、という結論に至り、そこからは浮上を止めるための応戦と近隣の避難。浮上は避けられないとして、地上で戦うことになって……」
「ついこの間、ようやくの決着がついた」
「へ? 来られなくなった日からこの間までの間ずっと戦っていたんですか?」
「ほぼ、じゃな。時折無力化して暴れなくなったことはあるが、本体を沈めたのは本当についこの間じゃ」
「エルフ感覚で言うこの間ってわけじゃないんですね……」
俺が定年退職するほどに時間経ってるんだぞ? 異世界組が来なくなってから。
どれだけの期間戦い続けてたんだよ……。
「なんと言うか、よく無事でしたね……」
「無論犠牲はあったが」
「私たちはなんとかって感じでしたわね」
犠牲は出たのか。
まぁ、琵琶湖サイズのクジラとか、それ自体が災害レベルではあるだろうし……。
どうせ異世界産だから、魔法とかも使ってくるんだろうし……。
マジでよく無事だったな、この人ら。
「あれ? そう言えば『無頼』さん達は? ――まさか、犠牲って」
「あの二人は今は事後処理中じゃ」
「今後似たような事が起きないとも限らない。これまでのように別れた国ではなく、連合国として同じ脅威に立ち向かっていこうと言う話になってな」
「そもそも、あの二人も、最初こそ渋っていたものの、少し経てばこの場所の事など考える暇もなかっただろう」
それもそうか。
というか、こう言うとアレだけど、あの二人は死ななさそうだよな。
「二人ともバハムートと交戦中に成人しましたし、ここに居た頃よりも責任感が宿っていますわよ?」
「へー……は?」
へ? 待って? あの二人未成年だったの?
ここに来ていた時?
「人間感覚じゃと青年くらいではないか? 獣人族も種族によって寿命がまちまちじゃからな」
「子供っぽい所があるなぁと思っていたら、ガチ子供だったんですか……」
今から小説のネタに……無理か。
登場させてかなりの時間経ってるもんな……。
「ちなみにカケル」
「はい」
「バハムートを討伐出来たのは、お前の功績によるところが非常に大きい」
「……はい?」
あれ? またなんか俺、やっちゃいました?
「そもそもバハムートを討伐出来た最大の要因は、多数のリボーンフィンチによるバハムートの血液の吸いつくしだ」
「ああ、口にした時にドン引かれたやつ……」
「私たちが提案した時も同じような反応だったのですけれど、それが一番効果があるだろうと実行することになりましたの」
「リボーンフィンチが血を吸いつくすまで、バハムートの侵攻を食い止める。それが我々が行っていた事だ」
「防衛に徹するというのは、守りながら攻めるよりもずっと楽だったな」
「まぁ、そうでしょうけど……」
何か一つに専念できるなら負担はずっと減るって言うし。
ただ、相手が琵琶湖クジラだとなぁ。
適当な拠点だと、プチっと潰されちゃうだろうし……。
「当然負傷兵などは出てくるが、ここでもカケルが大活躍だった」
「俺何もしていませんけど?」
「知育ポーションがかなり役に立ってな。材料さえあれば誰でも調合出来るというのが、どんな末端でもポーションが行き渡り、犠牲者は劇的に減っていたぞ?」
「それは俺の功績じゃないような……」
知育菓子を作った日本の企業と、それを再現したラベンドラさん達。
あと、異世界に知育ポーションを広めた人たちの功績でしょうに。
「後は食事だな」
「食事?」
「あらゆる食材のあらゆる調理法をレシピとして貰っていたからな。バハムートと共に地上に出てきた魔物の全てが食材になった」
「あー……兵糧の面で苦労しなかったって事ですね。……それは皆さんの功績では?」
主にラベンドラさんの。
あるいは、そう言うレシピを開発した現代の先駆者たちの。
「それだけじゃ無いぞい。防衛中のストレス軽減のための嗜好品。まぁ、酒やコーヒー、甘味などじゃが、それらが発展していたところも非常に大きい」
「人数がいても士気が上がらなければ烏合の衆ですもの。士気を維持できたのは間違いなく嗜好品のおかげですわ」
「そう言った嗜好品だけじゃなく、食事が美味かったのも士気が下がらなかった要素だがな」
ウンウンと頷く四人。
どうしよう、何一つ俺の手柄じゃない。
「あ、そう言えばなんですけど」
「なんだ?」
「皆さんが来られなかっただけなら、ゴー君とかマンドラゴラ君とかが消えちゃった理由にはならないと思うんですけど……」
「それはだな、そもそもこの場所と我々の世界との繋がりが断たれたのだろう」
「繋がりが……断たれた?」
「そもそもの話、どうもバハムートが僅かに動いた結果、次元間に歪みが出来ていたらしくな」
「そこにたまたま魔力的な働きが起きて、この場所に繋がる魔法陣になっていたっぽいんですわよね」
「で、バハムートが活性化した事で、その歪みが元に戻り」
「繋がりが断たれたというわけじゃな」
あー……何となく分からんでもない、か。
結局、四人がここに来られたのはバグ的な要素で、そのバグがバハムートが活性化した事でなくなっちゃった、と。
バグが勝手に直りました、はシステム的には恐ろし過ぎる事なんだけど、異世界側の出来事だしなぁ。
「……じゃあ、四人がここに来られたのも?」
「神に大量のワインを供え、少しだけ次元間を緩くしてもらう事で何とか、な」
「その際に、この世界のワインを大量に持ち帰れと言われましたけどね」
「変わって無いですねぇ、神様」
「ちなみにカケル?」
「はい?」
「三分……経っとらんか?」
「あ。た、食べましょう食べましょう」
ついつい話を聞き込んで時間が経つのを忘れちゃってたや。
やっべ、麺が伸びてスープがほとんど無くなってら。
「……新しいの、作りましょうか」
「いや、いい。久しぶりのこちらの世界の食事なのだ」
「ありがたく頂きますわ」
「お代わりとして新しい奴は作って貰うがの」
「うむ」
……まぁ、本人たちがいいって言うならいいか。
しかし……またこの人達が来ることになるとは。
さてさて、明日から久しぶりに本腰入れた料理でも作るとしましょうかしら。
最後までお読みくださりありがとうございました!!
正直な話、300話くらいで終わるつもりだったんですよ……。
なんか倍以上の話数になってますけど。
ちなみに完結理由ですが、シンプルにネタ切れです。
食材も、スイーツも、料理も。
全部自分の持ってる引き出し使い切ったと思っているのでやり切った感があります。
まだまだ読みたかった! と、皆さまがもし思ってくださるのなら、大変ありがたい事なのですが作者の限界です()
(それを踏まえるとクッキングダディってマジのバケモノ)
コミカライズ版はありがたいことにまだまだ続きますので、ぜひそちらの方を……。
エルフ飯シリーズは晩外編もございますが、こちらも完結予定はまだありません。
とはいえネタが切れたらあっさり完結すると思うので、いつまで続くかは明言出来ませんが……。
という事で、次回作はまだ決まっていませんけど、書くならまた似たような話を書いてそうではありますね。
手を変え品を変え、ですけど。
もしよろしければ新作を書き始めたらそちらも読んで頂けると舞い踊って喜びます。
それでは、またどこかで読んでいただけることを願って。
今までのご愛読、本当にありがとうございました!!




