せめて口直しを……
「というわけでゴー君、コンフィを作ったりできる?」
「ンゴンゴ」
異世界組が紫の魔法陣に消えるのを見送り、早速オリーブオイルと異世界ナマズを持って庭へ。
そして、コンフィの作り方をゴー君に説明して、作れるか尋ねてみると、任せなさい、との返事。
頼りになるねぇ。
やっぱ頼るならどか弁よりゴー君よ。
――いや、適材適所だな。
会社への料理の持ち込みは流石にどか弁には勝てん。
ゴー君を会社に連れて行くわけにもいかないし。
…………。
「書類のコピーとか出来る?」
「ンゴ?」
何でもない。
忘れていいよ。
でも、オフィスにこうやって喋って意思疎通出来てコピー機の代わりプラス色んな事が出来るゴー君が居たら、色々と楽しくなりそうなのになぁ……。
――食事が土ってのがネックだな。
オフィスが大変なことになっちゃう。
「よし、これで明日の一品は決まりだな」
一人暮らしならね、ここにサラダでも添えればご機嫌な夕食になるんだけども。
折角異世界組来るし、もう少し料理を作りましょうって事で。
何にしようかなぁ。
……あ、そうだ神様。
(なんじゃ?)
姉貴が注文してた例のワインが俺の手元に届くのはいつ頃?
(何故わしに聞く?)
ワイン関連なら全能かなーと思って。
(流石に完成済みで発送されとるワインにまでわしの力は及ばんぞ? 明日には届くようじゃな)
及んどるがな。
明日か。
じゃあワインに合う料理を第一に考えてメニューを組み立てるか。
コンフィと……スープはマイコニド――キノコのポタージュでいいとして。
トマト……う~む……。
無水ハヤシでも作って、異世界ナマズカツにかけるか。
そうすればワインにも合うだろうし。
コンフィとカツとでメインが二皿になっちゃうけど、あの人たちならむしろ歓迎するだろうし。
よし、メニューも決まったし寝よう。
これで明日起きて忘れてたら面白いよね。
――笑えんけど。
*
「なんか違うんだよな」
「分かる。だが、その何かが分からない」
「滑らかではありますし、溶け感もかなり近い所に来ていますのにね」
異世界に戻った『夢幻泡影』は、宣言通り、すぐ溶けるキスのチョコレートを再現するべく研究中。
とはいえ、チョコに入れる生クリームの量を調節したりすればすぐに辿り着くだろうと考えていたラベンドラだったが、現代チョコレートはそこまで甘くない。
いや、味についてはもちろん甘いのだが……。
「粉砕する回数を増やし、よく漉して生クリームの比率を高める。これで済むと思っていたのだが……」
「粉砕が少ない方が香りが立ちますのね。再現したチョコレートの方は香りが弱いですわ」
「そうなんだよな」
完全再現までは、簡単ではなかったようで。
「どうでもいいが、そろそろチョコ以外を作らんか? わし、腹減ったんじゃが」
「チョコならあるぞ?」
「チョコ以外と言ったじゃろ」
度重なる試食に、いの一番に降参したガブロは。
匂いを嗅ぐのも嫌だと三人から距離を取り、一人、警戒しながらジャーキーを噛んでいたりする。
「そう言えばじゃが」
「どうした?」
「前にカケルが様々なチョコを渡してきた時があったじゃろう?」
「ん? ……確かにあったが……」
「その時、わしには酒が使われたチョコが渡されたんじゃが、あのチョコもかなり滑らかだった記憶があるぞい」
「……つまりは?」
「今苦心している再現チョコ、酒類を混ぜたら何かしら変化があるとかは考えられんのか?」
そんなガブロは知っている。
ラベンドラが研究モードになったら、他の誰でもない、ラベンドラ自身が納得するまで突き詰めるという事を。
だからこそ、ガブロは提案した。
自分が食べるための、酒入りのチョコを。
もちろん、それで研究が少しでも進めば儲けもの。
研究に進歩が無くとも、自分が食べられそうなチョコが作られるなら……。
空腹を紛らわせられるものが作られるなら。
そんな思いで口にしたその提案は、
「面白い」
ラベンドラの一言で即採用。
ワインを始め、醸造ギルドで作られた様々な醸造酒をそのままチョコレートに混ぜ、あるいはアルコールを飛ばしてから混ぜあわせ。
「ん? ……確かに酒が混ざった方が伸びが良くなるな」
「ほぅ?」
異世界産のチョコレートは、どうやら酒類と相性がいいらしく。
特に、現代で言う所の『ジン』に当たる酒と混ぜると、チョコレートに滑らかさと伸びが追加され。
そこに生クリームを混ぜ、冷やし固めると……。
「む、かなり近い」
「香りも、チョコレートのものと酒のものとで二層の香りが引き立ちますわね」
「酒の方の香りが柑橘系由来だからだろう。かなり相性がいい」
「アルコールを飛ばした方はダメじゃな。逆にボソボソとした口当たりになっとる」
「ワインの方も美味しいは美味しいんですけれどね」
「これらは別々で食べた方が美味いな」
「ガブロに助けられたな。感謝する」
意外な事に、ガブロの提案がクリティカルを出したらしく。
求められていた滑らかさと香り、口どけに加え、『ジン』の香りも特徴としてプラス。
アルコールを飛ばしていない都合上、それなりにアルコール分が入ったチョコにはなったものの、概ね再現出来たと言える。
「研究を終えたんなら飯を頼むぞい」
「任せろ! すぐにこのチョコを量産してやろう」
「……違う、そうじゃないわい」
なお、ガブロの口にチョコレート以外が入ったのは、この日の晩御飯――つまり、翔の所で食事をする時であったことを、あらかじめ記しておこうと思う。




