邪悪な計画
白菜をざく切りにし、マイコニド各種を食べやすい大きさにカット。
そしたら、トマト鍋のスープを作っていきましょうかね。
「トマトから作るのは初めてだけども」
普段はトマト鍋の素だったり、トマト缶を使って鍋にしてるからさ。
異世界産とは言え、トマトから鍋のスープに出来るかはちょっぴり不安。
でもまぁ、やることはそんなに難しくないでしょ、多分。
「とりあえずお湯を沸かして皮を剝いて……」
細長い形のいわゆる海外トマトに似た形状。
皮の厚さがどれくらいか分からないけど、スープには入ってない方がいいでしょって事で。
おたまにトマトマンドラゴラを乗せてサッとくぐらせ、ヘタを取って皮を剥いて……。
鍋の底に、これでもかと敷き詰めていく。
鍋の底がぎっしり埋まったらコンロを着火。
コンソメ、和風だし、ほんの少しの砂糖を入れてトマトマンドラゴラから水分が出てくるのを待ちつつコトコト。
「……この間に野菜とか切ればよかった……」
結構時間が余っちゃうな。
勿体ない。
でまぁ、じっくり時間をかけて水分が出てきたらトマトマンドラゴラを潰し、かき混ぜつつ味見。
――う~む……。
もっとコンソメ入れて、水だな。
トマトジュースっぽさがある。
鍋のスープではないね。
という事で何度か味見をしつつ味を調え、何とか鍋のスープとしては使える程度に。
一から作るって大変だね。
後は野菜とか肉とか、異世界産ナマズから出た出汁で美味しくなってくれることを祈ろう。
「と言っても塩漬けにした異世界ナマズは時間跳躍して貰わなくちゃなんだけどね」
で、それが美味しく無かった時用に、ちゃんとベーコンも買って来てありますよっと。
薄い奴じゃなく、ブロックのやつね。
これが一番美味しいんだから。
「とろけるチーズもちゃんと買って来たし、買い忘れは無いはず」
ちなみに今日はご飯ではなくパンで食べようと思ってる。
なんでか知らないけど、スーパーの売り場にバゲットが滅茶苦茶置いてあったんだよね。
あれかな? ボージョレが解禁されたからかな?
それに合わせるために~って置かれてる可能性?
「バター、ガーリックバターと買って来てるし、こっちでも満足出来るでしょ」
異世界組がけちをつけてくるとすればワインが無い、とかかな。
最近飲み過ぎだからね。今日は無い、で済ます。
(ふむ……)
もちろん神様の分もありませんよ?
ボージョレが姉貴から送られてくるまで我慢ですからね。
(うむ)
……随分と聞き分けがいいな? 熱でもある?
神様が体調不良とかになったらどこに連れて行けばいいんだろう?
小児科?
(バカにしとらんか?)
滅相もない。
至って真面目ですよ、俺は。
(真面目な方がダメじゃと思うんじゃが)
気のせい気のせい。
なんて、神様と漫才をしていたら異世界組が登場。
……うん? なんかボトル持ってません?
「カケル! 聞いてくれ!!」
「どうしました?」
「今日だけはワインの持ち込みを許可すると神様から神託があった」
「……なるほど」
だから聞き分けが良かったわけね。
こっちの世界のワインが飲めないなら自分の世界のワインを持ち込めばいい、と。
じゃあ、これまでもそうすれば良かったじゃないですか。
(いや、違うんじゃよ。たまたまこやつらの手に入れたワインが今日の料理に合いそうだったもので……)
神様が言い訳しない。
……ちなみになんですけど、
(なんじゃ?)
もしかしてですけど、異世界組が持ってるワインって……バハムートの血入りだったりします?
(そうじゃぞ。それでないとこの世界のワインに太刀打ち出来んからの)
……バハムートの血って、俺の体内に入れても大丈夫なやつです?
(…………)
沈黙やめてね?
怖いからね、否定か肯定かしてね?
(よもつへぐいって知っとるか?)
じゃあ駄目じゃねーか。
んでも待って? あれって、黄泉の国で調理されたものを食べたから、黄泉の国から出られないって話だったよね?
それに当てはめるなら、バハムートの血入りワインを飲んだら異世界から出られないって事になるはずだけど……。
俺は元々その場所に居ないな? つまりどうなるんだってばよ……。
(異世界に来たら二度と戻れんくなるかのぅ)
あ、じゃあ大丈夫じゃん。
異世界に行く予定無いし。
良かった良かった。
(この家の座標を一瞬だけ異世界に転移させて……そうすれば……ブツブツ)
とんでもない計画やめてね。
家だけそのままに俺だけ姿が消えるじゃん。
やめようよ、そういうの。良くないよ。
何より会社に迷惑がかかるし、行方不明からの土地とか家とかの権利関係が大変なことになるから。
(……もう少し自分の身を案じるべきでは?)
いやいや、消えた俺より残された物を心配するでしょ。
というかゴー君のお世話は誰がするのさ。
許しませんよ! ゴー君が飢えるような事があったら!!
(……お主、だいぶ特殊じゃよな)
まぁ、うん。自覚はある。
ちなみに、異世界に行った自分の身を案じないのか? という話ですけど、
(うむ)
『夢幻泡影』なり、『無頼』アメノサ組なりが速攻で保護するでしょ、多分。
だから心配いらないかなって。
(……いやまぁ、そうなんじゃろうけれども……)
「カケル、今日の料理はトマト鍋でいいのか?」
「あ、はい。材料は切ってあるので、後は煮込むだけですね」
神様と話してたらラベンドラさんが調理を始めちゃったよ。
それじゃあ、開始開始~!




